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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 迷いの森の少女
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その日の昼食は味がしなかった。
いつもと変わり映えしない俺のローコスト自炊弁当だが─────
いよいよ食材のストックも調理する気力も無くなって来たのでヤケクソで生うどんをニ玉、卵と一緒にお好みソースで炒めて上に刻んだパセリをトッピングし……家にあった惣菜の空容器にぶっ込んで輪ゴムで止めた状態でレジ袋に詰めて持参していた。(流石に米も欲しいので、塩むすびをラップに包んだ物を追加した)
うどんは一玉が19円(税抜き)なのでボリュームの割にはコスパは良いのだが─────
いろんなことが頭をグルグルと廻り、とても飯を食うどころではなかった。
「わぁ!今日の佐藤君のお弁当、縁日で売ってるヤツみたいですごくいいね!」
夢野はいつものようにはしゃいでみせる。
だが。
どこかそれは空元気のように思えた。
一昨日の出来事がまるで無かったかのように、俺と夢野は振る舞っていた。
そうするしか無かったんだよな。多分お互いにさ。
「2パックあるんだ。よかったら一個やるよ」
食欲が無かった俺は、レジ袋からパックを取り出し夢野に渡した。
「え!?いいの?うれしー!」
じゃああたしからもこれ、と言いながら夢野がラップに包まれた物を俺によこしてくる。
焼き色の付いた三角形のもの。
それはホットサンドという物らしかった。
「ハムとチーズの味と、ハムエッグの味と二種類あるんだ」
それは見るからにオシャレそうな上に美味そうな食べ物に思えた。人気のカフェとかにありそうな感じだ。
「へぇ、凝ってるんだなあ」
俺はそう絞り出すのが精一杯だった。
普通の状態の時に食えば絶対に美味いんだろうな、と思いながら俺はそれを眺めた。
「それがね、すっごく簡単に出来ちゃう上にコスパもいいんだよ」
スーパーの特売の食パン(一斤65円税抜き)で作ってるからね、と夢野はいつものように解説する。
「やっぱり流石だな、夢野は」
上の空だった俺は適当に相槌を打った。
どうしよう。
もう俺はどう夢野に接したらいいか判らなくなっていた。
佐々木から聞いたこと─────
これにはなんの物的証拠も無い。
夢野がやったという確証なんて何処にもないからな。
だけど。
俺はあの時どうしてだか─────咄嗟に否定出来なかったんだ。
理由はわからない。
だけど。
結局のところ、この一連の出来事は夢野と岬京矢、この二人だけで起こしたものであって─────
俺はただの部外者、傍観者に過ぎないんだ。
当事者じゃない。
俺に何かをどうこうする権利も無ければ─────義務もないんだ。
夢野は俺の作った焼うどんを食べている。
うん、美味しいよ!と笑顔を見せる夢野の姿はどこかぎこちなく感じた。
俺の前じゃ無理して愛想笑いなんてする必要ねぇんだ。
コイツはいつもこうやって生きてきたんだろうな。
都会とこっちを行き来して、キッズモデルの仕事もしていたという夢野。
沢山の大人や、離れてしまった父親の間で生きてきて葛藤も軋轢もあったんだろう。
大切な友達に避けられて─────でも、自分ではどうしようもなくて。
本人なりに必死で“空気を読んで”笑顔を振りまいて、相手を不快にさせないように気を遣って来たんだろうな。
俺の心臓はキュッと痛んだ。
その結果が─────最悪の結末だったじゃねぇか。
夢野は夢野なりに必死でやってる。
ただそれが全部空回りだっただけだ。
いつもと変わり映えしない俺のローコスト自炊弁当だが─────
いよいよ食材のストックも調理する気力も無くなって来たのでヤケクソで生うどんをニ玉、卵と一緒にお好みソースで炒めて上に刻んだパセリをトッピングし……家にあった惣菜の空容器にぶっ込んで輪ゴムで止めた状態でレジ袋に詰めて持参していた。(流石に米も欲しいので、塩むすびをラップに包んだ物を追加した)
うどんは一玉が19円(税抜き)なのでボリュームの割にはコスパは良いのだが─────
いろんなことが頭をグルグルと廻り、とても飯を食うどころではなかった。
「わぁ!今日の佐藤君のお弁当、縁日で売ってるヤツみたいですごくいいね!」
夢野はいつものようにはしゃいでみせる。
だが。
どこかそれは空元気のように思えた。
一昨日の出来事がまるで無かったかのように、俺と夢野は振る舞っていた。
そうするしか無かったんだよな。多分お互いにさ。
「2パックあるんだ。よかったら一個やるよ」
食欲が無かった俺は、レジ袋からパックを取り出し夢野に渡した。
「え!?いいの?うれしー!」
じゃああたしからもこれ、と言いながら夢野がラップに包まれた物を俺によこしてくる。
焼き色の付いた三角形のもの。
それはホットサンドという物らしかった。
「ハムとチーズの味と、ハムエッグの味と二種類あるんだ」
それは見るからにオシャレそうな上に美味そうな食べ物に思えた。人気のカフェとかにありそうな感じだ。
「へぇ、凝ってるんだなあ」
俺はそう絞り出すのが精一杯だった。
普通の状態の時に食えば絶対に美味いんだろうな、と思いながら俺はそれを眺めた。
「それがね、すっごく簡単に出来ちゃう上にコスパもいいんだよ」
スーパーの特売の食パン(一斤65円税抜き)で作ってるからね、と夢野はいつものように解説する。
「やっぱり流石だな、夢野は」
上の空だった俺は適当に相槌を打った。
どうしよう。
もう俺はどう夢野に接したらいいか判らなくなっていた。
佐々木から聞いたこと─────
これにはなんの物的証拠も無い。
夢野がやったという確証なんて何処にもないからな。
だけど。
俺はあの時どうしてだか─────咄嗟に否定出来なかったんだ。
理由はわからない。
だけど。
結局のところ、この一連の出来事は夢野と岬京矢、この二人だけで起こしたものであって─────
俺はただの部外者、傍観者に過ぎないんだ。
当事者じゃない。
俺に何かをどうこうする権利も無ければ─────義務もないんだ。
夢野は俺の作った焼うどんを食べている。
うん、美味しいよ!と笑顔を見せる夢野の姿はどこかぎこちなく感じた。
俺の前じゃ無理して愛想笑いなんてする必要ねぇんだ。
コイツはいつもこうやって生きてきたんだろうな。
都会とこっちを行き来して、キッズモデルの仕事もしていたという夢野。
沢山の大人や、離れてしまった父親の間で生きてきて葛藤も軋轢もあったんだろう。
大切な友達に避けられて─────でも、自分ではどうしようもなくて。
本人なりに必死で“空気を読んで”笑顔を振りまいて、相手を不快にさせないように気を遣って来たんだろうな。
俺の心臓はキュッと痛んだ。
その結果が─────最悪の結末だったじゃねぇか。
夢野は夢野なりに必死でやってる。
ただそれが全部空回りだっただけだ。
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