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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 大草原の不可解な家
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俺は一瞬言葉を詰まらせた。
一呼吸置き、部屋の周囲に視線を移す。
待て待て待て、落ち着け。
これは慎重に訊かなきゃいけない案件じゃないのか?
俺は自分の意識を周囲に追いやり、静かに言葉を探す作業に入る。
夢野の部屋。
さっき転がり込んだ時には無我夢中だったので気付かなかったが─────
まるで雑誌の1ページのような……モデルハウスのような……オシャレ過ぎるインテリアに囲まれた部屋だった。
世間のいろんな事に疎い俺だからこの部屋のテイストを何て表現するのかは判らない。
カントリー調とでも言うのだろうか?全て外国風の家具や調度品で統一されている。
アンティーク調のコートハンガーには例のブランドと思われるワンピースやブラウスが何点か掛かっている。
蓋付きのデスク─────これはなんて言う名前だろう?ライティングデスク?って言うのか?知らんけど。
デスクの蓋は開いた状態になっており、中にはガラスの小瓶が綺麗に並べられていた。
水森からのプレゼントだろうか?
夢野のこの部屋にキラキラしたガラスの小瓶はよく似合っているようにも思えた。
プラスチックの棒状の物が無造作に置かれたローテーブルにはスケッチブックと分厚い封筒、クマのぬいぐるみと裁縫箱が置かれている。
テーブルの下には雑誌やカタログが何冊か積まれていた。
床に置かれたバスケットの中には毛糸の玉と編み棒、編み途中と思われる何かが入れられているのが目に入る。
さっきは何気なく通り過ぎたが─────
アイランドキッチンの向かいに位置するリビング─────
そこには暖炉とロッキングチェアがあるのがチラリと見えた。
暖炉のある家。
まるでこの家の全てが外国の映画に出てきそうな雰囲気だった。
オシャレ過ぎる。
こんなクソ田舎にあるのが信じられないような風景。
一体どういう一家なんだ?
夢野も、夢野の家も、何もかもが俺には事情が判らない。
少しの沈黙の後、心を落ち着かせた俺は思い切って夢野に訊ねる。
「─────パパって?」
俺の思惑や心情とは関係なく、夢野は普通に返事を返してくる。
「うちの親ね、離婚したんだ。あたしが小学生の時に─────」
で、都会に住んでるパパがあたしとレンに、定期的に色々送ってくれるんだ、と夢野は少し明るいトーンで答えた。
「へぇ、優しい父ちゃんなんだなあ」
予想していた方の『パパ』では無かったことに俺は心底安堵した。
いや、でもおかしくないか?
贈り物にしては高額すぎる。
それに。
そんなに裕福な家庭なら手持ちの金だっていくらでもあるだろう。
どうして水森に金を返してやらないんだ?
しかも、こんなに高額な服があるなら─────
フリマアプリやリサイクルショップで売却して、手元に現金を作るって選択肢もあるだろう。
もっとも、父親からの贈り物を金に変えるってのは褒められた行為じゃないが─────
次に夢野の口から出た言葉は、意外な事実だった。
「あたしのパパね、このブランドの創立者なの」
だから試作品とか、あたしのために作ってくれた一点物とかをいつも送ってくれるんだ、と夢野は視線をローテーブルの下に移した。
無造作にいくつか置かれた雑誌とカタログ。
は?
どういうこと?
俺は反射的にそれを手に取り、パラパラとめくった。
新しいカタログから少し古いカタログまでいろいろとある。
その中の古ぼけた一冊─────
4歳くらいだろうか?
小さな女の子がレースとフリルがたくさん付いたワンピースを着て、花畑の中で佇んでいる写真が目に留まった。
麦わら帽子を被り、テディベアを抱えた女の子。
そこで微笑んでいたのは、幼い頃の夢野くるみ本人だった。
一呼吸置き、部屋の周囲に視線を移す。
待て待て待て、落ち着け。
これは慎重に訊かなきゃいけない案件じゃないのか?
俺は自分の意識を周囲に追いやり、静かに言葉を探す作業に入る。
夢野の部屋。
さっき転がり込んだ時には無我夢中だったので気付かなかったが─────
まるで雑誌の1ページのような……モデルハウスのような……オシャレ過ぎるインテリアに囲まれた部屋だった。
世間のいろんな事に疎い俺だからこの部屋のテイストを何て表現するのかは判らない。
カントリー調とでも言うのだろうか?全て外国風の家具や調度品で統一されている。
アンティーク調のコートハンガーには例のブランドと思われるワンピースやブラウスが何点か掛かっている。
蓋付きのデスク─────これはなんて言う名前だろう?ライティングデスク?って言うのか?知らんけど。
デスクの蓋は開いた状態になっており、中にはガラスの小瓶が綺麗に並べられていた。
水森からのプレゼントだろうか?
夢野のこの部屋にキラキラしたガラスの小瓶はよく似合っているようにも思えた。
プラスチックの棒状の物が無造作に置かれたローテーブルにはスケッチブックと分厚い封筒、クマのぬいぐるみと裁縫箱が置かれている。
テーブルの下には雑誌やカタログが何冊か積まれていた。
床に置かれたバスケットの中には毛糸の玉と編み棒、編み途中と思われる何かが入れられているのが目に入る。
さっきは何気なく通り過ぎたが─────
アイランドキッチンの向かいに位置するリビング─────
そこには暖炉とロッキングチェアがあるのがチラリと見えた。
暖炉のある家。
まるでこの家の全てが外国の映画に出てきそうな雰囲気だった。
オシャレ過ぎる。
こんなクソ田舎にあるのが信じられないような風景。
一体どういう一家なんだ?
夢野も、夢野の家も、何もかもが俺には事情が判らない。
少しの沈黙の後、心を落ち着かせた俺は思い切って夢野に訊ねる。
「─────パパって?」
俺の思惑や心情とは関係なく、夢野は普通に返事を返してくる。
「うちの親ね、離婚したんだ。あたしが小学生の時に─────」
で、都会に住んでるパパがあたしとレンに、定期的に色々送ってくれるんだ、と夢野は少し明るいトーンで答えた。
「へぇ、優しい父ちゃんなんだなあ」
予想していた方の『パパ』では無かったことに俺は心底安堵した。
いや、でもおかしくないか?
贈り物にしては高額すぎる。
それに。
そんなに裕福な家庭なら手持ちの金だっていくらでもあるだろう。
どうして水森に金を返してやらないんだ?
しかも、こんなに高額な服があるなら─────
フリマアプリやリサイクルショップで売却して、手元に現金を作るって選択肢もあるだろう。
もっとも、父親からの贈り物を金に変えるってのは褒められた行為じゃないが─────
次に夢野の口から出た言葉は、意外な事実だった。
「あたしのパパね、このブランドの創立者なの」
だから試作品とか、あたしのために作ってくれた一点物とかをいつも送ってくれるんだ、と夢野は視線をローテーブルの下に移した。
無造作にいくつか置かれた雑誌とカタログ。
は?
どういうこと?
俺は反射的にそれを手に取り、パラパラとめくった。
新しいカタログから少し古いカタログまでいろいろとある。
その中の古ぼけた一冊─────
4歳くらいだろうか?
小さな女の子がレースとフリルがたくさん付いたワンピースを着て、花畑の中で佇んでいる写真が目に留まった。
麦わら帽子を被り、テディベアを抱えた女の子。
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