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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 流れる血と時間
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「おい!夢野!?」
しっかりしろ!!と叫びながら俺は夢野の身体を揺さぶった。
浴室の床に流れていく血が混ざった水。
……手首を切ったのか?
どうして?
いや、そんな事はどうでもいい。
俺は急いで夢野の身体を抱き抱えた。
バスタブに浸かっていたのでずぶ濡れではあるが、それもどうでもいい。
俺は夢野の左手首を確認した。
パックリとした傷が見える。
こんな痛々しいものは初めて見る。
俺は一旦、脱衣所の床に夢野を横たわらせて戸棚を漁った。
幸いにもバスタオルとスポーツタオルのストックがすぐに見つかったので急いで夢野の身体に掛ける。
手首の傷の具合は詳しくは判らないし、どうしたらいいかも分からない。
とりあえずスポーツタオル何枚かでグルグルと巻き、キツく縛った。
服を着たままずぶ濡れになっている夢野の身体をバスタオル何枚かで巻き、そのまま両手で抱え上げる。
「おい夢野!しっかりしろよ!?」
混乱しながらも俺は夢野に向かって呼びかけた。
どうしたらいいか分からない。
どうしよう、もしもこのまま間に合わなかったら。
俺の必死さが伝わったのだろうか。
夢野はうっすらと目を開けた。
俺はこの瞬間、人生で一番ホッとしたのかもしれない。
夢野が生きてる。
それだけでもう十分だった。
助かりさえしたら後のことはもうどうでもいいんだ。
生きてさえいたら後はどうにでもなる。
そうだろ?
「おい!?大丈夫か!?」
俺の呼びかけに対し、夢野は力なく頷いた。
なんとか意識はあるようだ。
救急車を呼ぶか?
けど、このエリアじゃ最速でも15分以上は掛かるんじゃねぇか?
もしかしたら20分、いやもっとかもしれねぇ。
それまでの間、応急処置が必要になってくるだろう。
とにかく、服も濡れてるしどこかで着替えさせて横にさせないとマズい気がした。
お前の部屋って何処だよ!?と言う俺の呼びかけに対し、夢野は掠れた声で小さく答えた。
「……つきあたりの……そこ」
俺は夢野を抱えて廊下に出た。
『KURUMI』という木製のプレートが掛かったドアが目に入る。
ここなのか?
夢野を抱えた俺はドアを開け、雪崩れ込むようにその部屋に入った。
ベッドが視界に飛び込む。
ここに横にさせた方がいい?
それとも濡れてるからやめた方がいい?
俺は夢野を床に下ろし、さっきの脱衣所からバスタオルをあるだけ掴んで持って来た。
ベッドにバスタオルを敷き詰め、その上に夢野を寝かせた。
身体が冷えるから服は脱がせた方がいいんだろうけど─────
けど、今の俺にはここまでが限界だった。
救急車を呼んだ方がいいのか─────?
夢野の傷が深いのか浅いのか、俺には判断がつかない。
一度縛った箇所をもう一度開いて見るつもりにもなれなかった。
俺はスマホをポケットから取り出し、通話画面を開いた。
「夢野、しっかりしろよ!?今、救急車を呼ぶから─────」
いい、と小さく掠れた声の返事が聞こえた。
は?
いいって?要らないって事なのか?
俺は一旦、スマホを下ろした。
どういう事だ?
手当ては要らない?
そんな筈ねぇだろ、あんなに大出血だったのに!?
そもそも夢野は何で急にこんな事を─────?
一緒にクリームパイを焼くんじゃなかったのか?
どうして?
俺は視線を夢野から逸らした。
部屋の中央には小ぶりなローテーブルが置かれている。
その瞬間、俺はローテーブルの上にあったモノの存在に気が付いた。
無造作にテーブルに置かれた、いくつものピンク色の棒状のもの─────
プラスチック製のピンクの棒の中心部には全て、2本の赤い線がクッキリと浮かび上がっていた。
コレって……
ドラマとかネットとかでは見たことあるけど、実物は初めてだった。
妊娠検査薬。
その瞬間、俺は全てを理解した。
しっかりしろ!!と叫びながら俺は夢野の身体を揺さぶった。
浴室の床に流れていく血が混ざった水。
……手首を切ったのか?
どうして?
いや、そんな事はどうでもいい。
俺は急いで夢野の身体を抱き抱えた。
バスタブに浸かっていたのでずぶ濡れではあるが、それもどうでもいい。
俺は夢野の左手首を確認した。
パックリとした傷が見える。
こんな痛々しいものは初めて見る。
俺は一旦、脱衣所の床に夢野を横たわらせて戸棚を漁った。
幸いにもバスタオルとスポーツタオルのストックがすぐに見つかったので急いで夢野の身体に掛ける。
手首の傷の具合は詳しくは判らないし、どうしたらいいかも分からない。
とりあえずスポーツタオル何枚かでグルグルと巻き、キツく縛った。
服を着たままずぶ濡れになっている夢野の身体をバスタオル何枚かで巻き、そのまま両手で抱え上げる。
「おい夢野!しっかりしろよ!?」
混乱しながらも俺は夢野に向かって呼びかけた。
どうしたらいいか分からない。
どうしよう、もしもこのまま間に合わなかったら。
俺の必死さが伝わったのだろうか。
夢野はうっすらと目を開けた。
俺はこの瞬間、人生で一番ホッとしたのかもしれない。
夢野が生きてる。
それだけでもう十分だった。
助かりさえしたら後のことはもうどうでもいいんだ。
生きてさえいたら後はどうにでもなる。
そうだろ?
「おい!?大丈夫か!?」
俺の呼びかけに対し、夢野は力なく頷いた。
なんとか意識はあるようだ。
救急車を呼ぶか?
けど、このエリアじゃ最速でも15分以上は掛かるんじゃねぇか?
もしかしたら20分、いやもっとかもしれねぇ。
それまでの間、応急処置が必要になってくるだろう。
とにかく、服も濡れてるしどこかで着替えさせて横にさせないとマズい気がした。
お前の部屋って何処だよ!?と言う俺の呼びかけに対し、夢野は掠れた声で小さく答えた。
「……つきあたりの……そこ」
俺は夢野を抱えて廊下に出た。
『KURUMI』という木製のプレートが掛かったドアが目に入る。
ここなのか?
夢野を抱えた俺はドアを開け、雪崩れ込むようにその部屋に入った。
ベッドが視界に飛び込む。
ここに横にさせた方がいい?
それとも濡れてるからやめた方がいい?
俺は夢野を床に下ろし、さっきの脱衣所からバスタオルをあるだけ掴んで持って来た。
ベッドにバスタオルを敷き詰め、その上に夢野を寝かせた。
身体が冷えるから服は脱がせた方がいいんだろうけど─────
けど、今の俺にはここまでが限界だった。
救急車を呼んだ方がいいのか─────?
夢野の傷が深いのか浅いのか、俺には判断がつかない。
一度縛った箇所をもう一度開いて見るつもりにもなれなかった。
俺はスマホをポケットから取り出し、通話画面を開いた。
「夢野、しっかりしろよ!?今、救急車を呼ぶから─────」
いい、と小さく掠れた声の返事が聞こえた。
は?
いいって?要らないって事なのか?
俺は一旦、スマホを下ろした。
どういう事だ?
手当ては要らない?
そんな筈ねぇだろ、あんなに大出血だったのに!?
そもそも夢野は何で急にこんな事を─────?
一緒にクリームパイを焼くんじゃなかったのか?
どうして?
俺は視線を夢野から逸らした。
部屋の中央には小ぶりなローテーブルが置かれている。
その瞬間、俺はローテーブルの上にあったモノの存在に気が付いた。
無造作にテーブルに置かれた、いくつものピンク色の棒状のもの─────
プラスチック製のピンクの棒の中心部には全て、2本の赤い線がクッキリと浮かび上がっていた。
コレって……
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その瞬間、俺は全てを理解した。
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