[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

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ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 秘密の告白

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「……お母さんに知られたくなかったの」

水森はポツリと呟いた。

「母ちゃんに?」

そうか、その日は三者面談の日だったよな。

じゃあ保護者が学校に来るって事だもんな。

先生に被害を訴えれば必ずその日のうちに保護者の耳に入るだろう。

でもどうしてそうまでして母ちゃんに知られたくなかったんだ?

「メッチャ怖いのか?お前んとこの母ちゃん」

何気なく訊いた俺に対し、水森は小さく首を振る。

「逆。凄く優しくて、人一倍あたしの事を大事にしてくれて……」

だから、お母さんにだけは心配掛けさせたくなかったの、と水森は俯いた。

「そっか」

母親に心配させたくないって気持ちはなんとなく解るぜ。

俺だってそうだ。

心配させたく無いし安心させたいんだ。

「……水森は母ちゃんの事を本当に大切にしてるんだな」

大事にしてやれよ、俺んとこは母ちゃん居ないからさ、と独り言のように呟いた俺に対し、水森はビクンと肩を震わせた。

だけど、と水森は悲しそうに呟いた。

「……結果として一番最悪な形になった気がする。お母さんを裏切って─────」

あたしのせいで、と言い掛けた水森に対し、思わず俺は口を開いた。

「は?何でだよ?お前は悪くねぇだろ?!」

裏切った訳じゃなくね?と俺が言うと、水森は唇をギュッと噛み締めた。

「このお金……この食券は─────お母さんの思い出や人生を切り売りして買ってもらった物だから」

どういうことだ?

切り売り?

人生?

意味がわからずポカンとしている俺を横目に、水森は何かを躊躇しているようにも思えた。

「それって……?」

水森は黙ったまま俺の顔を見た。

「ねぇ、佐藤君は─────」

今からあたしがどんな話をしても信じてくれる?と水森は戸惑いながら俺に訊ねる。

水森は一体何を抱えていて、何を恐れているって言うんだろう、

ああ、と俺は頷いた。

少しホッとしたような表情を浮かべた水森は静かに口を開いた。

「─────信じて貰えない事が多いんだけど」

あたしのお母さん、若い頃はアイドルをやってた時期があるの、と水森は切り出した。

「は!?アイドル!?」

思ってもみなかった話の流れに俺は困惑する。

は!?

この話の流れでどうしてこんなワードが飛び出るんだ!?

「あ、アイドルって言っても……全国デビューしてたとかじゃなくて、いわゆる“ご当地アイドル”ってジャンルなんだけど」

「……なるほどな、ご当地アイドルか」

俺はなんとなくのイメージを思い浮かべた。

「地域活性化の為とかにやってるってアレだろ。へぇ、お前の母ちゃん凄いんだな」

俺がそう言うと水森は驚いたように俺を見た。

「……信じてくれるの?」

「信じるも何も、この状況で水森が嘘とかつく訳なくね?」

逆に俺もビックリしてしまう。

「小学校の時にクラスメイトから『ブスのお前の母ちゃんがアイドルなハズねぇだろ』って嘘付き呼ばわりされてから……誰にもこの話をしなくなってたの」

そう言うと水森はやや自虐的な表情を浮かべた。

「いや、そんなことはねぇだろ。そもそもご当地アイドルってそこらの地元の素人女子高生で作ったグループじゃね?」

素人っぽいのが売りみてぇな部分もあるんだろうし、と俺はなんとなくのイメージで言ってみる。

別に水森の母ちゃんがアイドルだったからって特におかしいとは思わないよな。

「うん。そうなの。お母さんのお父さん……あたしの祖父に当たる人が地元の商工会の中心人物だったらしくて」

地元の為にってことでお母さんに白羽の矢が立って……お母さんも断れなくて結局デビューすることになって、と水森はやや誇らしげに話す。

そっか。なるほどありそうな話だな。

俺は頷いた。

「ファンが撮影したライブ中のお母さんの画像がネットで拡散されて……ご当地アイドルとしては異例の大出世、瞬く間に全国的に知られる存在になったの」

ほうほう。よくあるよな。水森の母ちゃんはバズっちゃったのか。

「有名プロデューサーが手掛ける、国民的アイドルグループの研究生にも内定が決まるっていう異例のシンデレラストーリーを掴んだの。地元じゃもうお祭り騒ぎだったらしいわ」

だけど、と水森は続けた。

約束された輝かしい未来。

水森の母ちゃんはとんでもない経歴の持ち主だったんだな。






「─────あたしのせいで……お母さんはその夢も未来も無くしちゃったの」
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