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ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 廃線の無人駅

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水森は部活に向かったのだろうか。

だとしたら終わるまで待ったほうがいいのか?

でも何て声を掛けたらいい?

俺は体育館に向かいながらもグルグルと思考を巡らせる。

いきなり話しかけたとして、水森は心を開いて話してくれるだろうか?

なかなか込み入った話だからな。

俺は外からそっと体育館の中を覗き込んだ。

大勢の大人たちが何かを運び込んだりしている。

生徒は居らず、部活をやっている様子もなかった。

え?部活ってやってないのか?

グラウンドでは陸上部や野球部が普通に活動していたが─────

ちょうど目の前をパイプ椅子を抱えた小泉が通りかかる。

「え?センセェ、体育館で何してんの?」

俺が声を掛けると小泉は険しい表情をした。

「お前な……HRサボってどこに行ってたんだ?」

まあまあ、と俺が誤魔化すと小泉はパイプ椅子を壁に立て掛けた。

「朝のHRでも連絡があったろう?今日はPTA総会があるからその準備で一部の部活は休みだ」

なるほど、今日は体育館が使えないってワケか。

「じゃあ女子バスケ部も休みってコトだな?」

ああ、と小泉は小さく頷き足早に体育館の奥に向かって行った。

そうか、だからグラウンド使用の他の部活は平常運転だったのか。

じゃあ水森はもう帰ってる?

俺も帰った方がいいだろうか。

小泉も忙しそうだし、今は話せそうになかった。

下駄箱に向かい、水森の棚を確認する。

靴は無く、上履きだけが置かれている。

やっぱりもう帰ってるよな─────

水森の自宅に向かうか?

でもコイツの家どこだったけ?大体の方角はわかるんだけど─────

俺は暫く考える。

今から追いかけたら水森に追いつかないか?

俺は急いで靴を履き、校門の方へ向かった。

暫く周囲を見渡しながら歩く。

水森らしき人物は見当たらない。

俺はウロウロと通学路を徘徊した。

近くの公園内も覗いて見る。

しかし、水森の姿はどこにも無かった。

もう家に着いた?

それとも寄り道してる?

でも、以前に3年とトラブルがあったって言ってたよな?

まさか呼び出されたりシメられたりなんてしてねぇよな……?

俺は途端に不安になった。

水森はどこに居る?

うちの学校の生徒の寄り道スポットの定番、本屋とコンビニにも居なかった。

だとしたら。

もう俺には水森の居そうな場所の心当たりは無かった。

まあ、明日にでも改めて聞くことにするか?

今すぐ水森を捕まえなきゃいけねぇって訳でもねぇからな。

あちこち歩き回って若干疲れた俺は少し休憩する事にした。

学校から少し離れた場所にある廃駅。

20年くらい前に廃線になった後、放置されている場所だった。

ここって何気に穴場なんだよな。

ヤニ休憩っていうかさ、煙草吸ってもバレねぇんだよ。

公園とかじゃ人目に着くからな。

この駅には電車はおろか、誰ももう来ねぇんだ。

誰もいない、打ち捨てられた駅。

ホームにある、ペンキの禿げたベンチに腰を下ろしポケットから煙草の箱を取り出した時だった。

不意に風が吹いた。

何気なく向かいのホームに視線を移す。

見覚えのある、セーラー服のシルエット。






そこに立って居たのは水森唯だった。
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