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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 お姫様と近衛兵
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それってさ、と俺は佐々木の言葉を遮って言った。
「夢野が不器用過ぎて周囲とうまくコミュニケーションが取れないって事だろ?」
……そうとも言えるわね、と佐々木は難しそうな顔をして頷いた。
「でもどうかしら?本人は不器用なだけのつもりかもしれなくても─────」
周囲はそうは思わないかもね、と佐々木は再びノートパソコンを開いた。
佐々木はさっきのSNSの画面を見ながら指差す。
「夏休み初日、夢野さんは念願のレアなグッズを手に入れたみたいね」
アップされた画像の中には”王女の証バッグチャーム“を手にした夢野が居た。
キラキラしたようなエフェクトや顔にスタンプが有るとはいえ、ネットに顔出しして大丈夫なんだろうか。
「確かに少しは顔を隠してはいるけど……夢野さんの方は自撮りの画像の投稿が多いわね」
その一方で水森のアカウントは自撮りの画像が一枚もなかった。
それは随分と対照的に思えた。
「話が少し逸れてしまったけど……夢野さんは欲しかったグッズを手に入れた後も盛んに投稿している。水森さんはこの頃からパタリと更新が途絶えているわ」
それがどういうことか解る?と佐々木が不意に俺に質問して来た。
「いや、知らんけど忙しいとかじゃねぇの?」
飽きて他のジャンルに行くこともあるだろうし、と俺は答えた。
「そうかしら?」
わたしが思うに、と佐々木は少し苛立ちを見せながら持論を展開した。
「おそらくだけど夢野さんは水森さんに食券分の金額を返していないのではないかしら?その一方でゲット出来たレアグッズをSNSでお披露目している。水森さんは食券を貸した挙句に3年に盗られて、その上弁償もして貰えてないとしたら─────」
「食券を失ったせいで水森は欲しかったグッズを諦めたって事か?」
「わからないけどその可能性もゼロじゃないわよね」
だって水森さんは給食休止期間中は昼食抜きで過ごしているのよ、と佐々木はやや強調して言った。
だとしたら。
弁償してもらえない上にその相手は本来自分が手に出来ていたであろうグッズを自慢している……?
それって滅茶苦茶じゃねぇか。
「不義理っつぅかよ……そんなハズねぇだろ?!」
おかしいだろ、と俺は佐々木に食ってかかる。
いや、佐々木に言ってもしょうがないんだけどさ。
「水森さん、色々と辛くなってSNSから遠のいていったのかもね」
佐々木は視線を床に落とした。
しかも、と佐々木はさらにある可能性まで示唆する。
「ここの夢野さんの投稿……名指しこそしてないにしても意味深よね」
俺は該当すると思われる書き込みを読む。
[友達だと思ってたのに……やっぱりあたしの事どうでも良かったのかな… (υ´•̥ ﻌ •̥`υ)]
[あたしなんてやっぱり要らない存在なんだ…… 。°(´ฅωฅ`)°。]
[もう何もかも嫌になった……消えたい… (´ •̥ ̫ •̥ ` )]
自殺願望とも取れる書き込みの一連に、俺は緊張と動揺が隠せなかった。
夢野の飛び降りって……このSNSが一因でもあるのか?
普段の夢野の姿とも違う、あまりにもストレートな心情の吐露。
俺は言葉を失ってしまう。
なんだよこれ。こんなんどうすりゃいいんだよ。
「夢野さんのこの投稿に対して、フォロワー……と言っていいのかしら?沢山のコメントが書き込まれてるわね」
佐々木は画面をスクロールしていく。
[Rumi姫たん!!そんな事言わないで!!オヂサン悲しい (^_^;)]
[トラブってるの?Rumi姫たんをイジメる悪い奴は誰なの?ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3]
[今度美味しいものご馳走しちゃう!欲しいものも買ってあげる!だから元気出して!!ナンチャッテ! (^_-)-☆]
成人男性からの書き込みだろうか。
なんとなくだが同年代とは違うように思えた。
「ん?Rumi姫って夢野のことか?」
そうみたいね、と佐々木は頷いた。
「“くるみ”から1文字取って“Rumi”なんじゃないかしら?」
なるほどな、と言いつつ俺はなんとも形容し難い居心地の悪さを感じていた。
なんかどうもSNSの雰囲気って俺には合わないみたいだ。
俺は悪酔いしたような得体の知れない不快感を抱えながら画面の文字列を目で追った。
広大なネットの海の上に漂う、棺の中のお姫様。
俺には夢野の姿がそんな風に見えたんだ。
「夢野が不器用過ぎて周囲とうまくコミュニケーションが取れないって事だろ?」
……そうとも言えるわね、と佐々木は難しそうな顔をして頷いた。
「でもどうかしら?本人は不器用なだけのつもりかもしれなくても─────」
周囲はそうは思わないかもね、と佐々木は再びノートパソコンを開いた。
佐々木はさっきのSNSの画面を見ながら指差す。
「夏休み初日、夢野さんは念願のレアなグッズを手に入れたみたいね」
アップされた画像の中には”王女の証バッグチャーム“を手にした夢野が居た。
キラキラしたようなエフェクトや顔にスタンプが有るとはいえ、ネットに顔出しして大丈夫なんだろうか。
「確かに少しは顔を隠してはいるけど……夢野さんの方は自撮りの画像の投稿が多いわね」
その一方で水森のアカウントは自撮りの画像が一枚もなかった。
それは随分と対照的に思えた。
「話が少し逸れてしまったけど……夢野さんは欲しかったグッズを手に入れた後も盛んに投稿している。水森さんはこの頃からパタリと更新が途絶えているわ」
それがどういうことか解る?と佐々木が不意に俺に質問して来た。
「いや、知らんけど忙しいとかじゃねぇの?」
飽きて他のジャンルに行くこともあるだろうし、と俺は答えた。
「そうかしら?」
わたしが思うに、と佐々木は少し苛立ちを見せながら持論を展開した。
「おそらくだけど夢野さんは水森さんに食券分の金額を返していないのではないかしら?その一方でゲット出来たレアグッズをSNSでお披露目している。水森さんは食券を貸した挙句に3年に盗られて、その上弁償もして貰えてないとしたら─────」
「食券を失ったせいで水森は欲しかったグッズを諦めたって事か?」
「わからないけどその可能性もゼロじゃないわよね」
だって水森さんは給食休止期間中は昼食抜きで過ごしているのよ、と佐々木はやや強調して言った。
だとしたら。
弁償してもらえない上にその相手は本来自分が手に出来ていたであろうグッズを自慢している……?
それって滅茶苦茶じゃねぇか。
「不義理っつぅかよ……そんなハズねぇだろ?!」
おかしいだろ、と俺は佐々木に食ってかかる。
いや、佐々木に言ってもしょうがないんだけどさ。
「水森さん、色々と辛くなってSNSから遠のいていったのかもね」
佐々木は視線を床に落とした。
しかも、と佐々木はさらにある可能性まで示唆する。
「ここの夢野さんの投稿……名指しこそしてないにしても意味深よね」
俺は該当すると思われる書き込みを読む。
[友達だと思ってたのに……やっぱりあたしの事どうでも良かったのかな… (υ´•̥ ﻌ •̥`υ)]
[あたしなんてやっぱり要らない存在なんだ…… 。°(´ฅωฅ`)°。]
[もう何もかも嫌になった……消えたい… (´ •̥ ̫ •̥ ` )]
自殺願望とも取れる書き込みの一連に、俺は緊張と動揺が隠せなかった。
夢野の飛び降りって……このSNSが一因でもあるのか?
普段の夢野の姿とも違う、あまりにもストレートな心情の吐露。
俺は言葉を失ってしまう。
なんだよこれ。こんなんどうすりゃいいんだよ。
「夢野さんのこの投稿に対して、フォロワー……と言っていいのかしら?沢山のコメントが書き込まれてるわね」
佐々木は画面をスクロールしていく。
[Rumi姫たん!!そんな事言わないで!!オヂサン悲しい (^_^;)]
[トラブってるの?Rumi姫たんをイジメる悪い奴は誰なの?ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3]
[今度美味しいものご馳走しちゃう!欲しいものも買ってあげる!だから元気出して!!ナンチャッテ! (^_-)-☆]
成人男性からの書き込みだろうか。
なんとなくだが同年代とは違うように思えた。
「ん?Rumi姫って夢野のことか?」
そうみたいね、と佐々木は頷いた。
「“くるみ”から1文字取って“Rumi”なんじゃないかしら?」
なるほどな、と言いつつ俺はなんとも形容し難い居心地の悪さを感じていた。
なんかどうもSNSの雰囲気って俺には合わないみたいだ。
俺は悪酔いしたような得体の知れない不快感を抱えながら画面の文字列を目で追った。
広大なネットの海の上に漂う、棺の中のお姫様。
俺には夢野の姿がそんな風に見えたんだ。
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