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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 自白と自殺願望
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俺と佐々木は小一時間、水森と夢野のアカウントの投稿をざっくりと読み漁った。
“プリアリ”で盛り上がっている時期のこと。“王女の証バッグチャーム”のこと。水森の投稿が減っていった時期のこと。
「……なんとなくの流れは見えてきた気がするわ」
佐々木はノートパソコンを一旦閉じ、ため息をついた。
「水森さんは思った以上に辛い立場のようね」
板挟みと言ったところかしら、と佐々木は少し考え込む素振りをみせた。
「ん?板挟み?」
何と何に挟まれてるって言うんだ?
俺もざっくりと見たがそこまでは読み取れなかった。
「ま、いろんな事情があるのよ」
彼女は特にね、と佐々木は強調するかのように付け加えた。
「おいおいおい、さっきから聞いてりゃお前一人が全部解ってる感じじゃねーか」
少しずつ何かが見えて来たとは言え、俺にはまだ分からない事の方が多かった。
俺にもわかるように簡単に教えてくれよ、と俺がボヤくと佐々木は頷いた。
「……ま、そうでしょうね」
あなたは特に必死なんでしょう?と佐々木は何かを見透かすように言ってのける。
「全部話してくれるなら教えてあげてもいいわ」
佐々木のテンションが少し上がっているのが俺にもわかった。
……コイツ、楽しんでやがるな。
佐々木は昔からこうなんだよな。
コイツにかかったら隠し事なんて出来ない。
俺は時間を戻った事や呪いの件を伏せて、自分が知り得た今までの情報と出来事をほぼ全部話した。
話したってより“自白させられた”って言うのがより近いかもしれない。
多分、それ含めて佐々木の術中に陥ってんのかもしれねぇな。
俺の話を聞き終わると佐々木は俺の目をじっと見て言った。
「……で、あなたは夢野さんが死に向かうのを止めたいってワケね」
俺はドキリとした。
確かに夢野との買い物や昼休憩、弁当のことは話した。
だけど夢野が死のうとしていた事は言ってないんだ。
だって時間を戻って来た事を話す訳にはいかねぇだろ?
「─────なんでそれを知ってるんだ?」
俺の問いかけに佐々木は机を指先で叩きながら答える。
「わかるわよ。それくらい」
佐々木は俺の方に改めて向き直ると少し真剣そうな面持ちで口を開いた。
「夢野くるみ……彼女は小学校時代からトラブルが多かったそうだけど─────」
その理由は知ってる?と佐々木は俺の顔を見た。
「いや、そこまでは知らねぇんだ」
俺は首を振った。
確かにそんな事を小泉も言ってたっけ。
トラブル?
どんな内容だって言うんだろう。
「彼女ね、普段は比較的大人しい子なんだけど……感情のコントロールっていうのかしらね、そういうのが不得手で」
突然激昂して相手に強い言葉を使ったり、人間関係の距離感の掴み方が上手く行かなかったりって事が多かったみたいなの、と佐々木は言葉を選びながら俺に説明する。
ん?
「それって……友達が出来なかったってことか?」
俺は夢野の言葉を思い出した。
いつも一人。友達がみんな離れていってしまう。
そんな事を言って泣いてたよな、夢野は。
それを聞いててっきり“クラスメイトに意地悪をされている”“イジメを受けている”みたいなニュアンスだと思っていたが─────
「正確には『せっかく出来た友達が離れていってしまう』っていうのが近いかしらね」
あなたが好きになった女の子の事を悪く言うなんて気が引けるけど、と佐々木は複雑そうな表情を浮かべた。
「もしかしたらそれには理由があって、別の子の話を聞いてみたらまた違った角度から物事が見えて来そうね」
なんだ?
俺が夢野に惚れてる前提で─────
佐々木がオブラートに包んだ言い回しをしているということがなんとなく理解できた。
待ってくれ、佐々木は俺に何を伝えようとしている?
佐々木はどこまでの情報を把握している?
夢野の小学生時代って何があったんだ?
“プリアリ”で盛り上がっている時期のこと。“王女の証バッグチャーム”のこと。水森の投稿が減っていった時期のこと。
「……なんとなくの流れは見えてきた気がするわ」
佐々木はノートパソコンを一旦閉じ、ため息をついた。
「水森さんは思った以上に辛い立場のようね」
板挟みと言ったところかしら、と佐々木は少し考え込む素振りをみせた。
「ん?板挟み?」
何と何に挟まれてるって言うんだ?
俺もざっくりと見たがそこまでは読み取れなかった。
「ま、いろんな事情があるのよ」
彼女は特にね、と佐々木は強調するかのように付け加えた。
「おいおいおい、さっきから聞いてりゃお前一人が全部解ってる感じじゃねーか」
少しずつ何かが見えて来たとは言え、俺にはまだ分からない事の方が多かった。
俺にもわかるように簡単に教えてくれよ、と俺がボヤくと佐々木は頷いた。
「……ま、そうでしょうね」
あなたは特に必死なんでしょう?と佐々木は何かを見透かすように言ってのける。
「全部話してくれるなら教えてあげてもいいわ」
佐々木のテンションが少し上がっているのが俺にもわかった。
……コイツ、楽しんでやがるな。
佐々木は昔からこうなんだよな。
コイツにかかったら隠し事なんて出来ない。
俺は時間を戻った事や呪いの件を伏せて、自分が知り得た今までの情報と出来事をほぼ全部話した。
話したってより“自白させられた”って言うのがより近いかもしれない。
多分、それ含めて佐々木の術中に陥ってんのかもしれねぇな。
俺の話を聞き終わると佐々木は俺の目をじっと見て言った。
「……で、あなたは夢野さんが死に向かうのを止めたいってワケね」
俺はドキリとした。
確かに夢野との買い物や昼休憩、弁当のことは話した。
だけど夢野が死のうとしていた事は言ってないんだ。
だって時間を戻って来た事を話す訳にはいかねぇだろ?
「─────なんでそれを知ってるんだ?」
俺の問いかけに佐々木は机を指先で叩きながら答える。
「わかるわよ。それくらい」
佐々木は俺の方に改めて向き直ると少し真剣そうな面持ちで口を開いた。
「夢野くるみ……彼女は小学校時代からトラブルが多かったそうだけど─────」
その理由は知ってる?と佐々木は俺の顔を見た。
「いや、そこまでは知らねぇんだ」
俺は首を振った。
確かにそんな事を小泉も言ってたっけ。
トラブル?
どんな内容だって言うんだろう。
「彼女ね、普段は比較的大人しい子なんだけど……感情のコントロールっていうのかしらね、そういうのが不得手で」
突然激昂して相手に強い言葉を使ったり、人間関係の距離感の掴み方が上手く行かなかったりって事が多かったみたいなの、と佐々木は言葉を選びながら俺に説明する。
ん?
「それって……友達が出来なかったってことか?」
俺は夢野の言葉を思い出した。
いつも一人。友達がみんな離れていってしまう。
そんな事を言って泣いてたよな、夢野は。
それを聞いててっきり“クラスメイトに意地悪をされている”“イジメを受けている”みたいなニュアンスだと思っていたが─────
「正確には『せっかく出来た友達が離れていってしまう』っていうのが近いかしらね」
あなたが好きになった女の子の事を悪く言うなんて気が引けるけど、と佐々木は複雑そうな表情を浮かべた。
「もしかしたらそれには理由があって、別の子の話を聞いてみたらまた違った角度から物事が見えて来そうね」
なんだ?
俺が夢野に惚れてる前提で─────
佐々木がオブラートに包んだ言い回しをしているということがなんとなく理解できた。
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