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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 3分間ハッキング
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「おいおいおいおい、ちょっと待ってくれ頼むから」
思わず俺は首を振った。
「水森が食券を買ってたっつうのも、夢野が買ってねぇってのもわかった」
だけど、と俺はなるべく冷静に言ったつもりだった。
「何でお前がこんなデータ持ってんだよ!?しかもなんだよこの持ち込み機器の多さは!?」
スマホどころじゃねぇ。モバイルバッテリーはもちろん、充電器やハンディ扇風機まで完備されている。
ノートパソコンにWi-Fiのみならず、その他の物もアレコレ持ち込みすぎだろう。
「こんなめんどくさい演技までして手に入れた個室よ?これくらい当然でしょう?」
佐々木はさも当然のように言ってのける。
「いや、それにしたって教職員専用のデータって……」
佐々木はなおもキーボードを叩きながら俺に問いかけた。
「ねぇ、1年の時に居た地理の高崎先生のこと覚えてる?」
俺は頷いた。
「ああ、ヨボヨボのお爺ちゃん先生だろ?」
確か持病のリウマチが悪化して退職したんだっけ、と俺は記憶の糸を辿る。
「高崎先生ね、パスワードが覚えられなくて職員室の私用パソコンの前に付箋で書いたのを貼ってたのよね」
そこでチラッと見たのを覚えてたんだけど……使ってみたらまだ生きてたって訳、と佐々木は悪びれる様子もなく呟いた。
「は!?それってハッキングとか不正アクセスって奴じゃねーの!?」
呆れる俺を構う様子もなく佐々木は何か考え込む素振りを見せた。
「ド田舎の学校の教職員のセキリュティ意識なんてこんな物でしょ。ま、それはともかく─────」
定期的にパスワード変更とかしない学校側も悪いんだろうが、なんなんだよコイツは。
「水森さんに借りた満額の食券を3年生に盗られたとして、どうしてそれを教師や親に言わないのかしら?」
おそらく何か理由があると考えるのが妥当のようね、と佐々木は再びキーボードを叩いた。
確かにそうだ。
「貸し借りは禁止されているとはいえ、高額な金券を盗んだ方が圧倒的に悪いわけだし……」
二人とも教師や親に怒られる事を恐れて相談できなかった?
「でもそれだと水森一人が損してねぇか?メシも食ってねぇんだろ?」
どんな事情があるのかは知らねぇが、夢野は弁当を食べ、水森は昼メシ抜きで過ごしている?
そういうことにならねぇか?
「いいところに気づいたわね」
佐々木は少し意地悪い笑みを浮かべる。
まだ何か知ってんのか?コイツは?
しかし何か糸口が見えて来た気がする。
「夢野さんが彼女に口止めを頼んでいる─────という線は考えられないかしら?」
「口止め?なんの為に?」
俺は聞き返す。
そうね、例えば、と佐々木は続けた。
「『代金分のお金は必ず弁償するから』みたいな約束があったとすれば?」
なるほど。
双方、何か親や教師に言えない理由があったとしたら。
なんとなくだが、それなら今回のこの不自然な出来事の説明はつくのか?
だけど、と佐々木はそれを否定するかのように言葉を続ける。
「親や教師に言えないのはともかく、あなたにまで黙っているのは不自然だわね」
そうでしょう?と佐々木は俺の顔を見た。
そういやそうだよな。そこだよ。忘れてた。
何でそんな大事な事を黙ってる?
俺に言ってくれりゃ3年女子のトコに乗り込んで取り返して来てやるのに。
「多分そこが最大のカギになるわね」
佐々木は意味深に頷いた。
おいおいおいおい。やっぱお前全部知ってんだろ。小出しにせずに一気に教えてくれよ頼むから。
思わず俺は首を振った。
「水森が食券を買ってたっつうのも、夢野が買ってねぇってのもわかった」
だけど、と俺はなるべく冷静に言ったつもりだった。
「何でお前がこんなデータ持ってんだよ!?しかもなんだよこの持ち込み機器の多さは!?」
スマホどころじゃねぇ。モバイルバッテリーはもちろん、充電器やハンディ扇風機まで完備されている。
ノートパソコンにWi-Fiのみならず、その他の物もアレコレ持ち込みすぎだろう。
「こんなめんどくさい演技までして手に入れた個室よ?これくらい当然でしょう?」
佐々木はさも当然のように言ってのける。
「いや、それにしたって教職員専用のデータって……」
佐々木はなおもキーボードを叩きながら俺に問いかけた。
「ねぇ、1年の時に居た地理の高崎先生のこと覚えてる?」
俺は頷いた。
「ああ、ヨボヨボのお爺ちゃん先生だろ?」
確か持病のリウマチが悪化して退職したんだっけ、と俺は記憶の糸を辿る。
「高崎先生ね、パスワードが覚えられなくて職員室の私用パソコンの前に付箋で書いたのを貼ってたのよね」
そこでチラッと見たのを覚えてたんだけど……使ってみたらまだ生きてたって訳、と佐々木は悪びれる様子もなく呟いた。
「は!?それってハッキングとか不正アクセスって奴じゃねーの!?」
呆れる俺を構う様子もなく佐々木は何か考え込む素振りを見せた。
「ド田舎の学校の教職員のセキリュティ意識なんてこんな物でしょ。ま、それはともかく─────」
定期的にパスワード変更とかしない学校側も悪いんだろうが、なんなんだよコイツは。
「水森さんに借りた満額の食券を3年生に盗られたとして、どうしてそれを教師や親に言わないのかしら?」
おそらく何か理由があると考えるのが妥当のようね、と佐々木は再びキーボードを叩いた。
確かにそうだ。
「貸し借りは禁止されているとはいえ、高額な金券を盗んだ方が圧倒的に悪いわけだし……」
二人とも教師や親に怒られる事を恐れて相談できなかった?
「でもそれだと水森一人が損してねぇか?メシも食ってねぇんだろ?」
どんな事情があるのかは知らねぇが、夢野は弁当を食べ、水森は昼メシ抜きで過ごしている?
そういうことにならねぇか?
「いいところに気づいたわね」
佐々木は少し意地悪い笑みを浮かべる。
まだ何か知ってんのか?コイツは?
しかし何か糸口が見えて来た気がする。
「夢野さんが彼女に口止めを頼んでいる─────という線は考えられないかしら?」
「口止め?なんの為に?」
俺は聞き返す。
そうね、例えば、と佐々木は続けた。
「『代金分のお金は必ず弁償するから』みたいな約束があったとすれば?」
なるほど。
双方、何か親や教師に言えない理由があったとしたら。
なんとなくだが、それなら今回のこの不自然な出来事の説明はつくのか?
だけど、と佐々木はそれを否定するかのように言葉を続ける。
「親や教師に言えないのはともかく、あなたにまで黙っているのは不自然だわね」
そうでしょう?と佐々木は俺の顔を見た。
そういやそうだよな。そこだよ。忘れてた。
何でそんな大事な事を黙ってる?
俺に言ってくれりゃ3年女子のトコに乗り込んで取り返して来てやるのに。
「多分そこが最大のカギになるわね」
佐々木は意味深に頷いた。
おいおいおいおい。やっぱお前全部知ってんだろ。小出しにせずに一気に教えてくれよ頼むから。
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