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ep5. 『死と処女(おとめ)』 保健室でのハッキング

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確かに、5000円カツアゲの件は少し引っかかってはいたんだ。

だけど判らない事が多すぎて後回しになっていた感も否めない。

一連の高額なブランド品の数々を見てしまったせいで5000円のインパクトが薄れてしまったのもあるかも知れない。

「……それと、水森さんがお昼の時間に教室に居ないの知ってた?」

俺は頷いた。確かに今日も居なかった……と言うか、ここに居たんじゃね?

ここまで聞いて俺はふと気付いた。

「水森、今日の昼休憩にここに居たよな?」

ん?

あれ?

どう言う事だ?

「─────知ってると思うけど、食券の10枚・20枚綴り券の購入者は運動部の生徒が多いの。土日や長期休み期間も部活があったりするしね」

確かに。

「夢野さんと水森さんの所属する部活は把握してる?」

ここまで言われてやっと話が見えて来た。

ヒントをここまで出されてわかんねぇって奴はいねぇよ。そうだろ?

ああ、と俺は頷いた。

「夢野は家庭科部、水森は女子バスケ部だろ?」

それってつまり……

察しがついたみたいね、と佐々木は続けた。

「ああ、ここまで言われてわかんねぇ馬鹿は居ないだろ?」

それで、と俺は佐々木に向き直る。

「なんらかの事情で水森に食券を借りた夢野が3年にカツアゲにされた─────」

そういうことだろ?と俺は佐々木に確認する。

確証は無いけどね、と佐々木は頷いた。

「水森さん、わたしにも何も言わないのよ。遠慮してるのかしら?」

それとも、と佐々木は含みを持たせるように呟いた。

「この後に及んでまだ庇ってるのかしらね。彼女のこと」

なんだ?

散らばっていた違和感が点と点で繋がったような気がしていたが、まだ何かあるのか?

「庇うって?」

俺の問いかけを遮るように佐々木は俺を制止する。

「待って。順番に確認していきましょう」

佐々木はおもむろにノートパソコンを取り出した。

「は!?こんなモンまで持ち込んでんのか!?」

おまけにポケットWi-Fiまで持ってるじゃねぇか。

戸惑う俺を尻目に、佐々木はカタカタとキーボードを叩く。

「わたしも気にはなっていたんだけど─────」

深入りするのは避けてたの。だけど、と佐々木は高速でタイピングしながら呟く。

ターンという音が静かな保健室に響く。

エンターキーを押したのか?

「……入れたわ。すぐ見つかった。ちょっとこれ見て」

佐々木が見せて来たのはエクセルの画面だった。

「なんだこれ?」

水森や夢野の件とこのエクセルの表と何の関係があるんだ?

「これ、この学校の教職員専用のデータと資料一覧にあったんだけど」

「は!?」

思わず俺は叫ぶ。

「意味わかんねぇよ!?何でこんなデータ持ってるんだよ!?」

ま、そこはいいから、と佐々木は指である箇所を指し示す。

「これ、購買部に提出された『20枚綴り食券』の購入者一覧なんだけど」

俺は佐々木の指先を見た。

そこには水森唯の名前があった。

「夢野さんの名前は見当たらないわね。20枚綴り券は今年度から導入されたものだし、昨年度に購入している線は無いわ」

おいおいおいおい。

ビンゴじゃねぇか?




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