318 / 1,060
ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 完璧な密室
しおりを挟む
どういう事だ?
え?
すぐには飲み込めず俺は混乱する。
「え?それってつまり……」
わざとってことか、と俺は訊ねた。
「ま、わかりやすく言えばそういう事になるわね」
佐々木は小さく頷いた。
コイツはわざと……つまり、演技をしているって事か?
「学校教育法 第六十九条 中等教育学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない」
つまり、中学校って場所には保健の先生を置かなきゃいけないって規則があるにはあるんだけど、と佐々木は抑揚なくスラスラと言ってのける。
おいおいおい、相変わらずなんだなコイツは。
以前と変わってねぇどころかレベルアップしてるじゃねぇかよ。
俺は黙って佐々木の話を聞くことにした。
俺が口を挟む余地は余り無さそうだ。
「ただ、学校保健安全法 第7条においては『原則設置』とされているの。それはつまり─────」
『置かなければならない』が『当面の間、置かない事ができる』という事でもあるの、と佐々木は呟いた。
????
難しくてよくわかんねぇんだが。
俺の頭のレベルくらいよく知ってるだろうが。
もうちょっとわかりやすく噛み砕いて言ってほしいもんだ。
「それってつまり、産休で休んでる先生の代わりが見つかんなくてもしょうがねぇってことか?」
そう、と佐々木はコクンと頷く。
「で?それとその鍵とどう関係があるんだ?」
佐々木は意味ありげな表情を浮かべた。
「知ってる?保健室登校ってね。出席扱いになるの」
この学校の校長って特に世間体を気にするタイプなの。不登校になられたら困るんでしょうね。『我が校では不登校の生徒は一人もいません』『誰もが通える配慮ある学校作りをモットーに』なんて学校だよりや学校のHPに掲げちゃうくらいだから。だから、保健室登校を希望するわたしを認めるしかなかったのよね、と佐々木は窓の外に視線を向ける。
雨は止んで雲の切れ間からは陽の光が差し込んでいた。
「通常、保健室登校の場合は養護教諭が付きっきりでサポートってイメージだけど今は不在でしょう?わたしが登校したり下校したりする毎に鍵を開けたり閉めたりを担任が行うっていうのがタイムスケジュール的に厳しいらしくて」
なるほどな。
保健室登校って出席扱いになるのか。知らなかった。
「“他の生徒には内緒で“っていう特例でね、保健室の鍵のスペアを持つ事が許可されたの」
マスターキーみたいなのは別個で管理されているみたいなんだけどね、と言いながら佐々木はその鍵を俺に見せてきた。
確かに。
1組である佐々木の担任の岩本先生は男子野球部の顧問でもあるんだ。
ウチの中学ってさ、田舎の学校なのに男子野球部と女子バスケ部がなかなか強いんだよ。
朝練に放課後の部活、それに加えて土日も練習試合やってりゃ時間なんてねぇよな。
担任が佐々木一人の為に鍵を開けたり閉めたりっていうのは難しいことのように思えた。
「救急箱は保健室の前に設置されてるでしょ?養護教諭が不在っていう現状、よっぽどの事がない限りは保健室にはわたし以外の人間は立ち入らないし立ち入れないの」
つまり、佐々木は校内に完璧な鍵付きの私室を手に入れてるって事なのか。
おいおいおい。こんな事ってあっていいのか?
ま、小泉も美術準備室を私物化して自由に使ってるから似たようなモンかもしれねぇが……
佐々木は用意周到に計画してこの鍵を手に入れたっていうのか?
それとも─────
真意の程はわからないが、コイツが何やらとんでもねぇヤベェ奴になっちまってるって事だけは理解できた。
え?
すぐには飲み込めず俺は混乱する。
「え?それってつまり……」
わざとってことか、と俺は訊ねた。
「ま、わかりやすく言えばそういう事になるわね」
佐々木は小さく頷いた。
コイツはわざと……つまり、演技をしているって事か?
「学校教育法 第六十九条 中等教育学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない」
つまり、中学校って場所には保健の先生を置かなきゃいけないって規則があるにはあるんだけど、と佐々木は抑揚なくスラスラと言ってのける。
おいおいおい、相変わらずなんだなコイツは。
以前と変わってねぇどころかレベルアップしてるじゃねぇかよ。
俺は黙って佐々木の話を聞くことにした。
俺が口を挟む余地は余り無さそうだ。
「ただ、学校保健安全法 第7条においては『原則設置』とされているの。それはつまり─────」
『置かなければならない』が『当面の間、置かない事ができる』という事でもあるの、と佐々木は呟いた。
????
難しくてよくわかんねぇんだが。
俺の頭のレベルくらいよく知ってるだろうが。
もうちょっとわかりやすく噛み砕いて言ってほしいもんだ。
「それってつまり、産休で休んでる先生の代わりが見つかんなくてもしょうがねぇってことか?」
そう、と佐々木はコクンと頷く。
「で?それとその鍵とどう関係があるんだ?」
佐々木は意味ありげな表情を浮かべた。
「知ってる?保健室登校ってね。出席扱いになるの」
この学校の校長って特に世間体を気にするタイプなの。不登校になられたら困るんでしょうね。『我が校では不登校の生徒は一人もいません』『誰もが通える配慮ある学校作りをモットーに』なんて学校だよりや学校のHPに掲げちゃうくらいだから。だから、保健室登校を希望するわたしを認めるしかなかったのよね、と佐々木は窓の外に視線を向ける。
雨は止んで雲の切れ間からは陽の光が差し込んでいた。
「通常、保健室登校の場合は養護教諭が付きっきりでサポートってイメージだけど今は不在でしょう?わたしが登校したり下校したりする毎に鍵を開けたり閉めたりを担任が行うっていうのがタイムスケジュール的に厳しいらしくて」
なるほどな。
保健室登校って出席扱いになるのか。知らなかった。
「“他の生徒には内緒で“っていう特例でね、保健室の鍵のスペアを持つ事が許可されたの」
マスターキーみたいなのは別個で管理されているみたいなんだけどね、と言いながら佐々木はその鍵を俺に見せてきた。
確かに。
1組である佐々木の担任の岩本先生は男子野球部の顧問でもあるんだ。
ウチの中学ってさ、田舎の学校なのに男子野球部と女子バスケ部がなかなか強いんだよ。
朝練に放課後の部活、それに加えて土日も練習試合やってりゃ時間なんてねぇよな。
担任が佐々木一人の為に鍵を開けたり閉めたりっていうのは難しいことのように思えた。
「救急箱は保健室の前に設置されてるでしょ?養護教諭が不在っていう現状、よっぽどの事がない限りは保健室にはわたし以外の人間は立ち入らないし立ち入れないの」
つまり、佐々木は校内に完璧な鍵付きの私室を手に入れてるって事なのか。
おいおいおい。こんな事ってあっていいのか?
ま、小泉も美術準備室を私物化して自由に使ってるから似たようなモンかもしれねぇが……
佐々木は用意周到に計画してこの鍵を手に入れたっていうのか?
それとも─────
真意の程はわからないが、コイツが何やらとんでもねぇヤベェ奴になっちまってるって事だけは理解できた。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる