[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

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ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 男女合同の体育授業

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そのセリフは前にも誰かから聞いた気がした。

誰だったろう?

ていうか、どういう意味だ?

なんでこのタイミングでそんな事を?

上野は何か知ってて俺に黙ってる?

戸惑う俺をよそに、上野はいつも通りの能天気な調子で笑みを浮かべた。

「ま、頑張ってよ佐藤っち」

上野は俺の肩をポンと叩き、クルリと背中を向けた。

「なんかあったら遠慮なく言いなよ」

上野はヒラヒラと手を振りながら廊下をスタスタと歩いて行く。

俺は上野にどう返事すべきか分からず、ただ黙っていた。

窓の外に見える景色はどんよりとした灰色の空だった。

ポツリポツリと雨粒が落ちて来るのが見えた。

雨か。

面倒臭いな。

次の授業体育じゃん。

じゃ、体育館でやるんだろうな。

俺はぼんやりとしながらも教室に向かった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



着替えを済ませて体育館に向かう。

女子側・男子側の体育教師は共に出張とやらで不在だった。

体育館の中央はネットで仕切られ男子はマット運動の自主練、女子はミニバスケのゲームをする事になっていた。

女子側の方には小泉が立っているのが見えた。

一応、監督や見張りというポジションだろう。

伸膝前転を順番に練習していくというメニューだったが、なんとなく面倒になった俺は壁際に座ってぼんやりとしていた。

男子側は自主練なのをいい事に、適当にマットの上をゴロゴロと転がって遊んでいる。

ネットで区切られた向こう側、女子の方のエリアの方が活気付いているように思えた。

「パスパス!」

「そっち!ちゃんとマークして!」

女子たちの賑やかな声が響く。

シューズが床に擦れる“キュッキュッ”という音が体育館にこだまする。

どうやら水森と上野は同じチームのようだった。

コートの中を駆け回る水森はまるで別人のように機敏な動きだ。

そういや、バスケ部だって言ってたっけ。

背も高いし、バスケ向きなんだな。

教室ではいつも無口で物静かな印象の水森が驚くほど素早い動きを見せている。

女子側のオーディエンスも盛り上がっているようだ。

口々にそれぞれのチームを応援している。

「パス行ったよ!」

敵チームの女子がチェストパスを回す。

「あらよっと!」

威勢のいい掛け声と共に、上野がパスカットを成功させた。

なんだよ“あらよっと”って。オッサンかよ。

「ヘイ!水森っち!」

意外な事に、上野が水森にパスを回した。

え?

上野が水森にパス?

この二人の関係性は読めない。

だが。

水森は頷く仕草を見せるとそのパスを難なく受ける。

それはまるで長年戦場を生き延びてきた歴戦の戦士達のような息のあったコンビネーションにも思えた。

そして水森はそのままの位置で構える仕草を見せ、一瞬戸惑ったようにピタリとその動きを止めた。

そこから打つのか?

俺、バスケのルールはうろ覚えだからよく知らねぇんだが─────

それはゴールからわりと離れた場所に思えた。

シュート練習ってさ、ゴールの真下の方の位置から打つじゃん?なんか線とか引いてあってさ。その辺りからさ。

躊躇する素振りを見せる水森に対し、上野が大きな声を上げた。

「水森っち!外れてもいいから行っちゃいなよ!」

上野はブンブンとオーバーに手を振っている。

水森はコクンと頷く素振りを見せ、それから─────







そのバスケットボールは鮮やかな弧を描き、ゴールに吸い込まれていった。


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