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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 新たな事件
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翌日。
朝、ダラダラと登校して来た俺は教室内の空気が何かおかしい事に気付いた。
女子達がヒソヒソと話し、男子達は関わりたくないといった様子で遠巻きに見ているような雰囲気。
何かあったのだろうか。
チャイムが鳴り、担任の加賀と副担任である小泉が教室に入って来る。
朝のHRは通常通り進行し、最後に加賀がこう言った。
「それでは水森さん。解ってはいるとは思うけどこの後、職員室に来るように」
それだけ言うと加賀は足早に教室を出て行く。
俺は教室に残っている小泉の顔を見た。
何か難しそうな顔をしている。
水森はその後、加賀の後を追うように教室を後にした。
水森唯……?
クラスで一番おとなしいと言っても過言ではない水森だが、何かあったんだろうか。
教室を出て行く水森の背中を、上野綾が無言で凝視していた。
一時間目の授業は理科だった。
気が付けばクラスの奴らは全員、理科室へ移動していた。
教室には小泉だけが残っている。
「……なあ、センセェ、水森はどうかしたのか?」
他に誰も居ないのを幸いに、俺はそのまま小泉に質問をぶつけた。
「……ん。詳しくはまだよく分からないんだが」
どうやら3年の女子生徒とトラブルがあったらしい、と小泉は呟いた。
3年女子?
夢野に続いて水森もか?
いや。
俺は首を振った。
黒のリボン付きブランドソックスを履いている夢野と違って、水森は絵に描いたような地味でおとなしい女子だ。
ソックスも地味で真面目な白だし、ワンポイントも何も無い。
それがどうして3年女子に?
「お前、水森の事を何か知ってるのか?」
小泉は怪訝そうな視線を俺に向ける。
そういえば、今までの流れって小泉に報告してなかったよな。
小泉にも知る権利はあるし、何より夢野は受け持ちの生徒だ。
心配していない筈がない。
だって夢野の為に俺に抱かれようとしてたんだぜ?
小泉だってこの件の当事者の一員じゃないか。
俺は今まで知り得た夢野や水森に関する情報と出来事を簡単に説明した。
本来ならこう、個人情報のような事柄をベラベラ喋るのって俺だって好きじゃないんだ。(上野も似たようなこと言ってたけどさ)
だけど、人の命がかかってる以上そうも言ってられねぇだろ?
なるほど、と一通り聞き終わった小泉は頷いた。
「いや、よくぞここまで夢野に寄り添ってやってくれたな。佐藤」
小泉が俺を褒めてる?
いや、どちらかと言うと労ってくれてる感じなんだろうか。
珍しいこともあるものだ。
意味がわからず俺が黙っていると、小泉は小さなため息をついた。
「……夢野くるみ。私の方でも教職員に色々と聞いて回ったんだがな」
小泉は一呼吸置いて続けた。
「中学に進学する時に小学校から[申し送り]というものがあって、通常それを考慮しつつクラス編成を行う訳なんだが────」
小学校時代も少し周囲とトラブルがあったらしくてな、と小泉は言った。
小学校の頃から?
どう言うことだろう。
上野はイジメてはないと言っていたが────
或いは、全く別の人物にイジメられている?
それどころか水森唯もイジメられてるんじゃねぇの?
ますます複雑になって行く状況に、俺の理解は全く追いつかなかった。
朝、ダラダラと登校して来た俺は教室内の空気が何かおかしい事に気付いた。
女子達がヒソヒソと話し、男子達は関わりたくないといった様子で遠巻きに見ているような雰囲気。
何かあったのだろうか。
チャイムが鳴り、担任の加賀と副担任である小泉が教室に入って来る。
朝のHRは通常通り進行し、最後に加賀がこう言った。
「それでは水森さん。解ってはいるとは思うけどこの後、職員室に来るように」
それだけ言うと加賀は足早に教室を出て行く。
俺は教室に残っている小泉の顔を見た。
何か難しそうな顔をしている。
水森はその後、加賀の後を追うように教室を後にした。
水森唯……?
クラスで一番おとなしいと言っても過言ではない水森だが、何かあったんだろうか。
教室を出て行く水森の背中を、上野綾が無言で凝視していた。
一時間目の授業は理科だった。
気が付けばクラスの奴らは全員、理科室へ移動していた。
教室には小泉だけが残っている。
「……なあ、センセェ、水森はどうかしたのか?」
他に誰も居ないのを幸いに、俺はそのまま小泉に質問をぶつけた。
「……ん。詳しくはまだよく分からないんだが」
どうやら3年の女子生徒とトラブルがあったらしい、と小泉は呟いた。
3年女子?
夢野に続いて水森もか?
いや。
俺は首を振った。
黒のリボン付きブランドソックスを履いている夢野と違って、水森は絵に描いたような地味でおとなしい女子だ。
ソックスも地味で真面目な白だし、ワンポイントも何も無い。
それがどうして3年女子に?
「お前、水森の事を何か知ってるのか?」
小泉は怪訝そうな視線を俺に向ける。
そういえば、今までの流れって小泉に報告してなかったよな。
小泉にも知る権利はあるし、何より夢野は受け持ちの生徒だ。
心配していない筈がない。
だって夢野の為に俺に抱かれようとしてたんだぜ?
小泉だってこの件の当事者の一員じゃないか。
俺は今まで知り得た夢野や水森に関する情報と出来事を簡単に説明した。
本来ならこう、個人情報のような事柄をベラベラ喋るのって俺だって好きじゃないんだ。(上野も似たようなこと言ってたけどさ)
だけど、人の命がかかってる以上そうも言ってられねぇだろ?
なるほど、と一通り聞き終わった小泉は頷いた。
「いや、よくぞここまで夢野に寄り添ってやってくれたな。佐藤」
小泉が俺を褒めてる?
いや、どちらかと言うと労ってくれてる感じなんだろうか。
珍しいこともあるものだ。
意味がわからず俺が黙っていると、小泉は小さなため息をついた。
「……夢野くるみ。私の方でも教職員に色々と聞いて回ったんだがな」
小泉は一呼吸置いて続けた。
「中学に進学する時に小学校から[申し送り]というものがあって、通常それを考慮しつつクラス編成を行う訳なんだが────」
小学校時代も少し周囲とトラブルがあったらしくてな、と小泉は言った。
小学校の頃から?
どう言うことだろう。
上野はイジメてはないと言っていたが────
或いは、全く別の人物にイジメられている?
それどころか水森唯もイジメられてるんじゃねぇの?
ますます複雑になって行く状況に、俺の理解は全く追いつかなかった。
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