[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない！〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる！？

ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 知らない概念

俺にはそれが何を意味するのかさっぱり理解できなかった。

夢野くるみ。

彼女には俺の知らない秘密があるのか？

どうしてビルの屋上から身を投げるに至ったんだ？

こんなブランド品、どうやって手に入れた？

そもそもこの地域でこんな服を売ってる店を見たことがねぇ。

イジメを辞めさせるつもりで上野と話を付けに来たハズが、事態は思いもよらない方向に向かっていた。

「ま、ビックリするよね。あーし達の知らない概念って感じだし」

俺が黙ってしまったせいか、上野が微妙にフォローしようとしてくれているのが伝わって来る。

「なんかさ、このブランドの愛好者の平均年齢ってちょっと高めらしくて」

だから中学生でこの服着てる子って相当珍しいみたいよ、と上野はチラチラと俺の方を見ながら言った。

「……そうだよな。こんな値段がするもの、相当な収入でも無いと買えねぇだろうし」

ムカシの時代だと、必死でバイトしてスカート1枚とか買って大切に着てるような高校生・大学生とかも居たらしいんだけど、と上野は頷いた。

「このブランド自体、昔からの愛好家に支えられてるってイメージ？今の中高生はユニクロしまむらGUでほぼ済ませちゃうでしょ」

そうだよな。

俺なんて佑ニーサンからのお下がりしか持ってねぇし。

何万もする服をバイトまでして買ってるなんて中高生、殆ど居ないんじゃないのか？

昔の時代ってのがいつ頃か知らねぇが、今だとスマホ代やソシャゲ課金とかそっちの方面も金がかかるからな。

「なんか、あーし余計な事まで喋っちゃったね」

後悔しているような表情を浮かべる上野に俺は礼を言った。

「いや、助かったぜ。俺の知らない事ばっかだったし」

サンキュな、と俺が呟くと上野は少しはにかむような仕草を見せた。

「佐藤っち、やっぱいいヤツなんだね。あーし、佐藤っちの味方だから」

だから、と上野は言葉を続けた。

「やっぱり佐藤っちは彼女とキチンと向き合って、ちゃんと話をする必要があるんじゃないかな？」

それと、水森っちと佐々木っちともね、と上野は俺のデコを人差し指で軽く押した。

「水森はともかく……なんで佐々木とも？」

いいからいいから、と上野はヒラヒラと手のひらを振る。

「それとさ、なんか困ったコトあったらいつでも言ってよ。あーしが出来るコトなら協力するし」

意外だった。

なんならブチのめす勢いで体育館裏に上野を連れて来たってのに、気付けば何故かお互いの連絡先を交換していた。

「佐藤っちさ、クラスのグループチャットに入ってなかったじゃん？」

ま、気にはなってたんだよね、と上野はスマホをポケットに仕舞いながら俯いた。

「俺の持ってるスマホってプリペイドなんだよ。ウチ、親いないからさ。携帯とか新規契約できなくて」

基本的にはコンビニとかの無料Wi-Fiスポットに行かねぇとネットに繋がんねぇんだ。金がねぇしよ、と俺は改めて説明した。

「だからスマホはあるけどあんま使ってねぇんだ。連絡取るような相手もいねぇしな」

実質、着信専用のスマホ。でも別にそれで不便じゃねぇんだ。

そっか、と一言だけ呟くと上野はこう言って笑った。

「じゃ、用事ある時はあーしにワン切りして？こっちからかけ直すからさ」

あれ？





なんか、もしかして思ったより上野っていいヤツなのか？