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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 体育館裏の攻防
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俺自身、自分が何をやってしまったのかよくわからないでいた。
少し会話したような気がするんだが。
気がついたらそこに居た奴らにヘッドバッドを食らわした挙句に足払いを掛けていたらしい。
2HITコンボじゃねぇか。
プラクティスモードかこれは?
しかもタイガーアッパーカットでもねぇし。
→(or←)+A(orC)って感じのコマンドじゃん。
完全に投げの間合いじゃん。
何やってるんだ俺は。
そんなに入れ込むほど熱心な格ゲーマーだったっけ?俺?
キョロ充達は「意味わからんし」「アイツ、イキナリ来て頭おかしい」とかブツブツ言いながら立ち去っっていった。
やっちまった。
多分、小泉に説教されるな、これ。
まあ毎回の事だし別に対した問題じゃねぇか。
廊下や教室に居た周囲の連中は完全に“急に暴れ始めたヤベー奴”である俺を腫れ物のような視線で見ている。
完全に頭おかしい奴だよな、俺。
気まずいのでとりあえず早急に立ち去ろうとした時だった。
上野綾がこちらを見ているのに気付く。
忘れる所だった。
俺はコイツに用があるんだよ。
「ちょっといいか?」
俺が上野に声を掛けると、意外そうな表情を浮かべた上野は目を大きく見開いて答えた。
「……いいけど?」
俺は上野に目配せをする。ここじゃ話しにくいからな。
思ったよりすんなりと付いてきた上野と俺は黙って歩く。
今日の俺は、自分でもよく分からないがとにかくムシャクシャしていた。
とにかく腹が立ってたんだ。
自分自身の得体の知れない感情に戸惑いながらも俺は上野に対してどう切り出すべきかと思案していた。
イジメがある事を認めないかもしれない。
或いは、しらばっくれて話にならないかもしれない。
だけど。
コイツと俺はハナシを付ける必要があるんだ。
とにかく、口を割らせて吐かせないといけねぇな。
女だからって容赦はしねぇ。
なんなら、多少手荒な手段に出ることもやむを得ないかもしれない。
ピリピリとした緊張感が俺の身体全部を支配しているような気がした。
しかし。
予想外の流れで俺の思考と苛立ちは全て吹き飛ばされる事になる。
体育館の裏に着いた途端、俺より先に口を開いたのは向こうだった。
「……佐藤っち、ありがとね」
へへ、見直したよ、と上野は少しはにかんだ様子で笑顔を見せた。
は?
これからどうシメてやろうか、と思っていた矢先に向こうからの先制攻撃である。
意味がわからない。
何を言ってるんだこの女は?
何に対しての『ありがとう?』なんだ?
少し照れた様子の上野綾に俺は戸惑った。
何でコイツこんな表情してんだ?
今からお前をシメようってんだぜ?
話が見えてこない。
この流れでなんでそうなる?
「は?ありがとうって何がだよ?」
意味わかんねぇ、と俺が吐き捨てるように言うと上野はまた少し笑った。
「そういうトコも含めて、佐藤っちらしいじゃん」
「何がだよ?」
ガチでコイツは何を言っている?
「佐々木っちと水森っちのコト、庇ってくれるなんて優しいじゃん」
めちゃくちゃカッコ良かったし、と上野は俺の背中を叩いた。
は?
なんで俺の方が叩かれてんだよ???
「庇ったっていうか、それは……」
格ゲーマーとして腹が立ったからだけだし。あの二人は関係ねぇよ。庇ってねぇし、と俺は答えたがどこまで伝わっただろうか。
てか、なんか誤解されてね?
そもそも俺、お前をシメに来たつもりなんだけど。
「やっぱ、マジで佐々木っちの言った通りだったんだー!!」
上野は嬉しそうに俺の肩を再びバンバン叩いた。
は?
「佐々木の言った通りって何の事だよ……?」
てかさっきっから何で俺は叩かれてんだよ。何でコイツはこんなに馴れ馴れしいんだ?
上野は満面の笑みを浮かべてこう言い放った。
「佐々木っちがね、『佐藤君は本当はものすごく心の優しい男の子なんだ』ってずっと言ってたのマジ本当じゃん」
少し会話したような気がするんだが。
気がついたらそこに居た奴らにヘッドバッドを食らわした挙句に足払いを掛けていたらしい。
2HITコンボじゃねぇか。
プラクティスモードかこれは?
しかもタイガーアッパーカットでもねぇし。
→(or←)+A(orC)って感じのコマンドじゃん。
完全に投げの間合いじゃん。
何やってるんだ俺は。
そんなに入れ込むほど熱心な格ゲーマーだったっけ?俺?
キョロ充達は「意味わからんし」「アイツ、イキナリ来て頭おかしい」とかブツブツ言いながら立ち去っっていった。
やっちまった。
多分、小泉に説教されるな、これ。
まあ毎回の事だし別に対した問題じゃねぇか。
廊下や教室に居た周囲の連中は完全に“急に暴れ始めたヤベー奴”である俺を腫れ物のような視線で見ている。
完全に頭おかしい奴だよな、俺。
気まずいのでとりあえず早急に立ち去ろうとした時だった。
上野綾がこちらを見ているのに気付く。
忘れる所だった。
俺はコイツに用があるんだよ。
「ちょっといいか?」
俺が上野に声を掛けると、意外そうな表情を浮かべた上野は目を大きく見開いて答えた。
「……いいけど?」
俺は上野に目配せをする。ここじゃ話しにくいからな。
思ったよりすんなりと付いてきた上野と俺は黙って歩く。
今日の俺は、自分でもよく分からないがとにかくムシャクシャしていた。
とにかく腹が立ってたんだ。
自分自身の得体の知れない感情に戸惑いながらも俺は上野に対してどう切り出すべきかと思案していた。
イジメがある事を認めないかもしれない。
或いは、しらばっくれて話にならないかもしれない。
だけど。
コイツと俺はハナシを付ける必要があるんだ。
とにかく、口を割らせて吐かせないといけねぇな。
女だからって容赦はしねぇ。
なんなら、多少手荒な手段に出ることもやむを得ないかもしれない。
ピリピリとした緊張感が俺の身体全部を支配しているような気がした。
しかし。
予想外の流れで俺の思考と苛立ちは全て吹き飛ばされる事になる。
体育館の裏に着いた途端、俺より先に口を開いたのは向こうだった。
「……佐藤っち、ありがとね」
へへ、見直したよ、と上野は少しはにかんだ様子で笑顔を見せた。
は?
これからどうシメてやろうか、と思っていた矢先に向こうからの先制攻撃である。
意味がわからない。
何を言ってるんだこの女は?
何に対しての『ありがとう?』なんだ?
少し照れた様子の上野綾に俺は戸惑った。
何でコイツこんな表情してんだ?
今からお前をシメようってんだぜ?
話が見えてこない。
この流れでなんでそうなる?
「は?ありがとうって何がだよ?」
意味わかんねぇ、と俺が吐き捨てるように言うと上野はまた少し笑った。
「そういうトコも含めて、佐藤っちらしいじゃん」
「何がだよ?」
ガチでコイツは何を言っている?
「佐々木っちと水森っちのコト、庇ってくれるなんて優しいじゃん」
めちゃくちゃカッコ良かったし、と上野は俺の背中を叩いた。
は?
なんで俺の方が叩かれてんだよ???
「庇ったっていうか、それは……」
格ゲーマーとして腹が立ったからだけだし。あの二人は関係ねぇよ。庇ってねぇし、と俺は答えたがどこまで伝わっただろうか。
てか、なんか誤解されてね?
そもそも俺、お前をシメに来たつもりなんだけど。
「やっぱ、マジで佐々木っちの言った通りだったんだー!!」
上野は嬉しそうに俺の肩を再びバンバン叩いた。
は?
「佐々木の言った通りって何の事だよ……?」
てかさっきっから何で俺は叩かれてんだよ。何でコイツはこんなに馴れ馴れしいんだ?
上野は満面の笑みを浮かべてこう言い放った。
「佐々木っちがね、『佐藤君は本当はものすごく心の優しい男の子なんだ』ってずっと言ってたのマジ本当じゃん」
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