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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 ダルシムとブランカ
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「……あたし、いつもこうなんだ」
夢野は俯く。
「いつもって?」
俺は慎重に聞き返す。
「同調圧力って言うのかな……そういうの苦手で。クラスや学年の女子と馴染めなくてさ……」
こんな風にいつも悪く思われちゃうの、どうしてなのかな、と夢野は小さな声で呟いた。
確かに。
夢野が水森以外の誰かと仲良く喋ってたりするのを見かけた事がない。
夢野の私服が少し可愛らしいだけでこんな仕打ちを受けるものなのか?
女子のカーストや人間関係って一体何なんだよ?
あたし、上野さんに本当に何もしてないの、と夢野はため息をつく。
なんで何も悪い事をしていない夢野や水森がこんな嫌がらせを受けてるんだ?
予鈴のチャイムが鳴り、俺は弁当箱を片付けると急いでその場を後にした。
上野綾。
まずはこの女とキッチリ話を付けなきゃなんねぇ。
とっ捕まえて俺が落とし前付けてやる。
俺が足早に教室に戻ろうとしていた時だった。
不意に廊下で騒ぐクラスの男子数人の声が耳に飛び込んできた。
「それでよー。生意気なんだよな、ダルシムの癖にwww」
あーわかる、なんか見ててムカつくよなw ダルシムの癖に成績微妙にいいしw と相槌を打っているのはウチのクラスのキョロ充男子だった。
ダルシム。
言わずと知れた格ゲー、ストⅡのキャラではあるが。
インド代表で手足が伸びるヨガの僧侶っていう設定なんだよな。
俺はその言葉の使い方のニュアンスに違和感を覚えた。
「あんなキモいのが居るとか女子ガチャハズレじゃね?俺らのクラスさぁwww」
「えーwダルシムとかまだマシじゃね?少なくともスタイルは普通だしwww」
「ウチのクラスなんかブランカだしwwwめっちゃキモwww」
1組の男子が奇妙なゴリラのような歩き方をし、ウチのクラスの男子も手を叩いてゲラゲラ笑っていた。
「ウケるwwwブランカまじ激似www」
背中を丸めた自信の無さそうな歩き方。
ウチのクラスの“ダルシム”そして“ブランカ”
このワードとキョロ充男子たちの仕草、ニュアンスから俺は悟ってしまった。
ウチのクラスの水森唯と1組の佐々木七海。
二人はどうやら『ダルシムとブランカ』という不名誉なこと極まりないあだ名を付けられてしまっていると言う事が解ってしまった。
それが誰を指しているのか理解できてしまった自分自身にすら怒りが湧く。
極端に痩せている背の高い水森唯。
以前は活発だったのに、すっかり人が変わったようにボサボサの髪と丸めた背中で縮こまっている佐々木七海。
思春期の女子に付けられたあだ名としては残酷過ぎるモノである事は俺には痛いくらい理解できた。
前にも言ったと思うけど俺、2D格ゲーめっちゃやり込んでんだよな。
どっちかっつーとSNK派なんだが。
これは水森と佐々木、そして全ての格ゲープレイヤーに対する冒涜じゃねぇのか?
二人の女子に対する侮辱であると同時に、格ゲーをプレイする者の品位を落としかねない発言だ。
だって普通のプレイヤーは女子に向かってこんな失礼な物言いなんか絶対にしない。そうだろ?
つまり、女子二人と俺が侮辱されたも同然なんだ。
考えるより先に身体が動いちまうんだな、俺。
気がつくと俺はキョロ充男子の襟首を掴んで睨み付けていた。
「なあ、お前らも格ゲー好きなん?俺もハナシに混ぜてくんね?」
キョロ充男子達は固まったように動かない。
「さっき歩き方の実演してたよなあ?俺のも見てくれよ?」
「……は?佐藤、急になんでキレてんの?」
ウチのクラスのキョロ充男子が上擦った声を上げる。コイツ誰だっけ?名前忘れたわ。
「俺もさあ、たまに練習してんだよ?タイガーアッパーカット」
ちょっと一回試したいんだけどなあ?と言いながら1組の男子の方を見たら向こうは目を逸らしてんのな。ヘタレかよ。
「で、さあ、ウチの学校のどこにダルシムとブランカがいんの?教えてよ」
なあ?ともう一度キョロ充男子に念押ししながら質問する。
「………は、マジで意味わからんし?イキナリさあ、頭おかしいんかよ佐藤?」
キョロ充男子はなおもしらばっくれている。
俺だってクラスの奴とトラブルとか起こしたくねぇんだ。後々厄介だからな。
小泉にもまた小言を言われるだろうしな。
けど、どうしてもさっきの発言だけは聞き流す事は出来ねぇ。そうだろ?
夢野は俯く。
「いつもって?」
俺は慎重に聞き返す。
「同調圧力って言うのかな……そういうの苦手で。クラスや学年の女子と馴染めなくてさ……」
こんな風にいつも悪く思われちゃうの、どうしてなのかな、と夢野は小さな声で呟いた。
確かに。
夢野が水森以外の誰かと仲良く喋ってたりするのを見かけた事がない。
夢野の私服が少し可愛らしいだけでこんな仕打ちを受けるものなのか?
女子のカーストや人間関係って一体何なんだよ?
あたし、上野さんに本当に何もしてないの、と夢野はため息をつく。
なんで何も悪い事をしていない夢野や水森がこんな嫌がらせを受けてるんだ?
予鈴のチャイムが鳴り、俺は弁当箱を片付けると急いでその場を後にした。
上野綾。
まずはこの女とキッチリ話を付けなきゃなんねぇ。
とっ捕まえて俺が落とし前付けてやる。
俺が足早に教室に戻ろうとしていた時だった。
不意に廊下で騒ぐクラスの男子数人の声が耳に飛び込んできた。
「それでよー。生意気なんだよな、ダルシムの癖にwww」
あーわかる、なんか見ててムカつくよなw ダルシムの癖に成績微妙にいいしw と相槌を打っているのはウチのクラスのキョロ充男子だった。
ダルシム。
言わずと知れた格ゲー、ストⅡのキャラではあるが。
インド代表で手足が伸びるヨガの僧侶っていう設定なんだよな。
俺はその言葉の使い方のニュアンスに違和感を覚えた。
「あんなキモいのが居るとか女子ガチャハズレじゃね?俺らのクラスさぁwww」
「えーwダルシムとかまだマシじゃね?少なくともスタイルは普通だしwww」
「ウチのクラスなんかブランカだしwwwめっちゃキモwww」
1組の男子が奇妙なゴリラのような歩き方をし、ウチのクラスの男子も手を叩いてゲラゲラ笑っていた。
「ウケるwwwブランカまじ激似www」
背中を丸めた自信の無さそうな歩き方。
ウチのクラスの“ダルシム”そして“ブランカ”
このワードとキョロ充男子たちの仕草、ニュアンスから俺は悟ってしまった。
ウチのクラスの水森唯と1組の佐々木七海。
二人はどうやら『ダルシムとブランカ』という不名誉なこと極まりないあだ名を付けられてしまっていると言う事が解ってしまった。
それが誰を指しているのか理解できてしまった自分自身にすら怒りが湧く。
極端に痩せている背の高い水森唯。
以前は活発だったのに、すっかり人が変わったようにボサボサの髪と丸めた背中で縮こまっている佐々木七海。
思春期の女子に付けられたあだ名としては残酷過ぎるモノである事は俺には痛いくらい理解できた。
前にも言ったと思うけど俺、2D格ゲーめっちゃやり込んでんだよな。
どっちかっつーとSNK派なんだが。
これは水森と佐々木、そして全ての格ゲープレイヤーに対する冒涜じゃねぇのか?
二人の女子に対する侮辱であると同時に、格ゲーをプレイする者の品位を落としかねない発言だ。
だって普通のプレイヤーは女子に向かってこんな失礼な物言いなんか絶対にしない。そうだろ?
つまり、女子二人と俺が侮辱されたも同然なんだ。
考えるより先に身体が動いちまうんだな、俺。
気がつくと俺はキョロ充男子の襟首を掴んで睨み付けていた。
「なあ、お前らも格ゲー好きなん?俺もハナシに混ぜてくんね?」
キョロ充男子達は固まったように動かない。
「さっき歩き方の実演してたよなあ?俺のも見てくれよ?」
「……は?佐藤、急になんでキレてんの?」
ウチのクラスのキョロ充男子が上擦った声を上げる。コイツ誰だっけ?名前忘れたわ。
「俺もさあ、たまに練習してんだよ?タイガーアッパーカット」
ちょっと一回試したいんだけどなあ?と言いながら1組の男子の方を見たら向こうは目を逸らしてんのな。ヘタレかよ。
「で、さあ、ウチの学校のどこにダルシムとブランカがいんの?教えてよ」
なあ?ともう一度キョロ充男子に念押ししながら質問する。
「………は、マジで意味わからんし?イキナリさあ、頭おかしいんかよ佐藤?」
キョロ充男子はなおもしらばっくれている。
俺だってクラスの奴とトラブルとか起こしたくねぇんだ。後々厄介だからな。
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