[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

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ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 証言

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いつもの場所に到着すると、ニコニコとした夢野が俺を待っていた。

「佐藤君、どうしたの?」

ちょっと遅かったね、と言う夢野に対し俺はなんとも言えず歯切れの悪い返事をする。

「まあ、その……」

さっきのフラグ選択失敗のエピソードは夢野に言うべきじゃ無いだろう。

夢野に無断で水森を誘った挙句に失敗してるんだ。

さっきの出来事を知れば怒るかもしれない。

良くない流れだよな。

「いいから早くお弁当食べようよ」

あたし、もうお腹空いちゃってさ、と夢野はランチトートバッグを開ける。

「お、おう」

俺も平静を装いつつ椅子に座る。

「夢野、ハラ減ってるのか?」

弁当の包みを開けながら俺はなんとなく質問する。

「えー!?当たり前だよ!4時間目終わった後だよ?」

そんなのペッコペコに決まってるじゃない!と夢野はやや頬を膨らませながら答える。

「そうだよな……いや、女子ってなんかちっこいサラダとかをさ、ちびちびフォークでつつきながら食ってるイメージだったからよ」

腹は減ってないけどとりあえず時間が来たから食べてるだけなのかと思ってた、と俺は言った。

ふふ、と夢野はおかしそうに笑った。

「何言ってるの?女子とか関係なくお腹は減るでしょ?みんな同じなんだから」

そうなんだろうけどさ。

確かに、同じ人間なんだから“男子だからこう、女子だからこう”みたいな事って無いんだろうけど。

なんか、つい“女子”って俺とは別の生き物みたいな気がしてたんだよな。

お腹なんか減らないし─────ちっちゃくて可愛い弁当やカラフルなお菓子とかを少し食べて生きてるような気がしてたんだ。

「あたしなんか特に燃費悪くって……ちゃんと朝ご飯食べても3時間目にはもうお腹ペコペコだよ~」

そう言いつつ夢野は弁当のおにぎりを頬張った。

俺はふと、さっきの水森の様子を思い出す。

じゃあ、昼飯を食べる素振りを見せない水森はどうなんだ…?

腹は減らないのか?

それとも便所飯でもやってる?

いや。

俺は首を振った。

もし便所飯にしても弁当箱か何かを持っていくはずだろ?

手ぶらってことはないんじゃないのか?

だとしたら。

いつも痩せている水森だが、一学期に比べて若干ではあるが更に痩せている気もしたんだ。

拒食症とかってんじゃないよな……?

じゃあ、どうしてなんだろう?

俺は一人でグルグルと考えを巡らせる。

「佐藤君の今日のお弁当、すっごくかわいい~!」

俺の弁当を見た夢野がはしゃぎ気味でリアクションする。

と言っても、昨日と全く同じ原材料ではあるんだが。

少し形を変えただけの弁当なんだよな。

これまた台所で使われずに未開封のまま埃を被っていた粗品か景品のキッチンツール。

『シリコンアイストレー』なるものを見つけたんだが、コレが思ったより良かった。

[球状の氷を作れます]っていう代物なんだが、要は半球状のシリコントレーなんだよ。

コレに昨日と同じお好み焼きのタネを流し込んでレンジで火が通るまで加熱する。

幾つか量産してひっくり返して弁当箱に詰め、お好みソースとマヨネーズを掛けて仕上げに刻みパセリをトッピングし、爪楊枝を刺す。

たこ焼き風弁当の完成だ。

オマケにレンジで加熱するだけだから手間もそう掛からない。時短だ、時短。

「いいなあ、味見させてもらっていい?」

そう来ると思ってたぜ。

あらかじめ爪楊枝は多めに刺しておいたので、そのまま2~3個を夢野の弁当箱に移してやる。

「タコが無いからニセモンなんだけどな」

「え?タコが無くても十分美味しいよ!!」

お祭りみたいでいいね、と夢野はオーバーにはしゃいでいる。

「じゃあ、今度はあたしのも食べてみて!」

夢野は俺の弁当箱に小さなおにぎりとミニハンバーグを入れてくれた。

こうして弁当の中身を交換するのもお互い慣れてきた気がする。

誰かと弁当を食うのってこんなに楽しいもんなんだな、と俺はしみじみと実感した。

しかし。

だからこそ余計に水森と夢野の間の不穏な雰囲気が気になる。

ここで聞かないといつ聞くって言うんだ?

俺は思い切って口を開いた。

「なあ、俺、夢野と一緒に弁当食うのがこんなに楽しいなんて思わなかったんだ」

え、と夢野は一瞬箸を止めた。

「最初は偶然だったけど……買い物に付き合って貰ったり、こうして弁当の中身も交換してみたりさ……」

今までこういうことなかったからさ、なんか新鮮で楽しくて、と俺は慎重に話す。

「でも、だからこそ……」

俺のせいで水森が夢野と一緒に昼休憩を過ごせないっていうんだったらなんか悪いんじゃないかって、と俺は神妙な面持ちで言った。

夢野は少し黙った後、小さな声で呟いた。

「ううん……」

もうだいぶ前からなの。唯ちゃんがこうなっちゃったの、と夢野は首を振った。

「唯ちゃん、あたしの事を無視したりはしないの。話しかけたら返事はしてくれるの」

でも、と夢野は続けた。

「前みたいには話してくれなくなっちゃったの……」

夢野の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

あたしね、この前見ちゃったの。授業中に……と夢野は俯きがちに呟いた。

「授業中にね、手紙が回ってきて……その手紙を読んだ唯ちゃんが声を押し殺して泣いてるの……」

「は!?」

授業中に手紙!?

それを見て泣いたって事は……




それってやっぱりイジメがこのクラスにあるって事じゃないのか?!
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