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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 接触と手応え、大出血
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別れ際、「俺も夢野と話せてすごく楽しかったしさ、また色々教えてくれよ」なんてちょっとオーバーな台詞を吐いたりして我ながら恥ずかしかったんだが。
でもそうも言ってられないよな。
夢野が俺に気を許してくれてるって証拠じゃ無いのか?
俺みたいな“いかにも女児アニメに興味も関心もなさそうなヤツ”にプリアリの話題を振ってくるって事は、だ。
夢野は話し相手が欲しいんじゃ無いのか?
あるいは。
俺に何かを聞いて欲しがっている?
そんな気もしたんだな。
俺は小泉に詳細な報告をしないまま、単身での調査という名の接触に必死になっていた。
いい線まで来た気もするしな。
俺はなんとなくだが手応えを感じていた
次の日の昼休憩。
給食休止二日目である。
こうして夢野と一緒に過ごせるのならもうずっと給食なんざストップしてても構わないんじゃ無いだろうか─────
そんな事を考えながら席を立つ。
夢野は一足先に教室を出ていたようだった。
一人でぼんやりと考え込んでいるような水森唯の姿が視界に入る。
弁当は食べないのか?
ダイエット?
いや。
水森唯はクラスの女子の中でも一番くらいの細さなんだ。
痩せていて、それで背も高いんだ。
これ以上痩せたら倒れそうじゃねぇか。
ダイエットじゃ無いとしたら、なんで何かを食べる素振りを見せないんだ?
水森はハッとしたように顔を上げると急いで立ち上がり、教室を後にする。
購買に行くんだろうか?
夢野の話に何か引っかかる物を感じていた俺は、思い切って水森に話し掛けてみた。
「なあ、水森?」
俺が声をかけるとビクッとしたように水森は振り返った。
「………何?」
警戒心マックスの表情で水森が俺を見る。
「いや、これから昼飯食うんだろ?」
良かったら一緒に食わね?と俺は平静を装って誘ってみる。
平静を装ってはいるんだが。
向こうからしたら怪しさ1000%って感じだろうな。
学年でも悪目立ちしてるヤンキーの俺と、クラスのカースト最下位の水森。
接点なんかゼロだし、なんなら話したのも今日が初めてなんだ。
「………え?」
水森は詐欺師か何かを見るような目つきで俺を見る。
そうだよな。
多分、俺が水森を揶揄ったり笑い者にするつもりで声を掛けたと思われてるんだろう。
でも仕方ない。
水森のこのクラスでの立ち位置を考えると、過剰なまでに警戒するのも当たり前のように思えた。
あの、違うんだ、と俺は慌てて首を振った。
「水森もプリアリ好きだって聞いたから、それで……!」
“プリアリ”というヤンキーの俺の口から飛び出すはずのない単語。
水森は俺が彼女を笑い者にするつもりで声を掛けた訳では無いようだと感じてくれたんだろうか。
水森の硬い表情が一瞬だけ和らいだような気がした。
「……どうして」
そんな事知ってるの、と水森は小さく呟く。
「夢野に聞いたんだ。だからさ、よかったら一緒に弁当食おうぜ?」
夢野がなんか寂しそうだったし、と俺はごく自然な振る舞いを心がけた。
「………そういう事」
水森は首を振った。
「佐藤君、夢野さんに頼まれたの?」
じゃあ折角だけど辞退する、と水森はクルリと背中を向けた。
「”じゃあ“って何だよ?なんでそうなる?」
俺の問いかけに水森は振り向かず答えた。
「私が居たらお邪魔でしょう。彼女が話をしたいのは貴方のようだし」
教室を出た水森は購買部の位置とは逆方向に向かって歩いて行った。
しまった、焦り過ぎたか。
早急に進めようとしすぎてしくじったか?
水森はなかなか心を開かない、警戒心の強い女子に思える。
もう少し会話やコミュニケーションを重ねてから誘うべきだった。
俺は水森と夢野をくっ付けようとし過ぎて余計なことをしてしまったのかもしれない。
カサブタだってそうじゃねぇか。
早くに剥がし過ぎたら大出血だ。そうだろ?
でもそうも言ってられないよな。
夢野が俺に気を許してくれてるって証拠じゃ無いのか?
俺みたいな“いかにも女児アニメに興味も関心もなさそうなヤツ”にプリアリの話題を振ってくるって事は、だ。
夢野は話し相手が欲しいんじゃ無いのか?
あるいは。
俺に何かを聞いて欲しがっている?
そんな気もしたんだな。
俺は小泉に詳細な報告をしないまま、単身での調査という名の接触に必死になっていた。
いい線まで来た気もするしな。
俺はなんとなくだが手応えを感じていた
次の日の昼休憩。
給食休止二日目である。
こうして夢野と一緒に過ごせるのならもうずっと給食なんざストップしてても構わないんじゃ無いだろうか─────
そんな事を考えながら席を立つ。
夢野は一足先に教室を出ていたようだった。
一人でぼんやりと考え込んでいるような水森唯の姿が視界に入る。
弁当は食べないのか?
ダイエット?
いや。
水森唯はクラスの女子の中でも一番くらいの細さなんだ。
痩せていて、それで背も高いんだ。
これ以上痩せたら倒れそうじゃねぇか。
ダイエットじゃ無いとしたら、なんで何かを食べる素振りを見せないんだ?
水森はハッとしたように顔を上げると急いで立ち上がり、教室を後にする。
購買に行くんだろうか?
夢野の話に何か引っかかる物を感じていた俺は、思い切って水森に話し掛けてみた。
「なあ、水森?」
俺が声をかけるとビクッとしたように水森は振り返った。
「………何?」
警戒心マックスの表情で水森が俺を見る。
「いや、これから昼飯食うんだろ?」
良かったら一緒に食わね?と俺は平静を装って誘ってみる。
平静を装ってはいるんだが。
向こうからしたら怪しさ1000%って感じだろうな。
学年でも悪目立ちしてるヤンキーの俺と、クラスのカースト最下位の水森。
接点なんかゼロだし、なんなら話したのも今日が初めてなんだ。
「………え?」
水森は詐欺師か何かを見るような目つきで俺を見る。
そうだよな。
多分、俺が水森を揶揄ったり笑い者にするつもりで声を掛けたと思われてるんだろう。
でも仕方ない。
水森のこのクラスでの立ち位置を考えると、過剰なまでに警戒するのも当たり前のように思えた。
あの、違うんだ、と俺は慌てて首を振った。
「水森もプリアリ好きだって聞いたから、それで……!」
“プリアリ”というヤンキーの俺の口から飛び出すはずのない単語。
水森は俺が彼女を笑い者にするつもりで声を掛けた訳では無いようだと感じてくれたんだろうか。
水森の硬い表情が一瞬だけ和らいだような気がした。
「……どうして」
そんな事知ってるの、と水森は小さく呟く。
「夢野に聞いたんだ。だからさ、よかったら一緒に弁当食おうぜ?」
夢野がなんか寂しそうだったし、と俺はごく自然な振る舞いを心がけた。
「………そういう事」
水森は首を振った。
「佐藤君、夢野さんに頼まれたの?」
じゃあ折角だけど辞退する、と水森はクルリと背中を向けた。
「”じゃあ“って何だよ?なんでそうなる?」
俺の問いかけに水森は振り向かず答えた。
「私が居たらお邪魔でしょう。彼女が話をしたいのは貴方のようだし」
教室を出た水森は購買部の位置とは逆方向に向かって歩いて行った。
しまった、焦り過ぎたか。
早急に進めようとしすぎてしくじったか?
水森はなかなか心を開かない、警戒心の強い女子に思える。
もう少し会話やコミュニケーションを重ねてから誘うべきだった。
俺は水森と夢野をくっ付けようとし過ぎて余計なことをしてしまったのかもしれない。
カサブタだってそうじゃねぇか。
早くに剥がし過ぎたら大出血だ。そうだろ?
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