[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない！〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる！？

ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 “王女の証”②

「じゃあ、念願叶ってやっとそこで買えたって訳なのか」

俺はなるほどと頷いた。

ところがそうは上手くいかないのよね、と夢野はオーバーに肩をすくめる。

「『ファンからご要望の高かった王女の証が遂に大人向けアクセサリーとして登場です！』ってね、すごくキラッキラの可愛い指輪の画像がSNSに流れてきてね。プリアリ界隈はもう騒然となったの。もうみんな興奮状態でね。あたしもそうだったな」

大喜びで受注販売のページを見るまではね、と夢野は意味ありげに呟いてみせた。

なんだ？話の流れから言うと買えたんじゃないのか？現物はここにあるもんな？

「え？何かあったのか？」

夢野は首を振った。

「それがね、到底買うことが出来ない仕様だったんだよね」

あの時の落胆ったら……と夢野は険しい表情を浮かべた。

「買うことが出来なかった？」

確か受注販売っつったよな？じゃあ売り切れとかなさそうなもんだけど？と俺は夢野に訊いた。

「そう、受注販売だから売り切れって事は無かったらしいんだけどね」

夢野は指に絡めたチェーンをくるくると回し、弄り始めた。

「[激選された高クオリティな石と素材をふんだんに使用した大人向けの本格派ジュエリーです！]って銘打っててね……」

シルバー素材の物でも\81,482 (税込)、プラチナ素材の最高ランクの物だと\285,186 (税込)だったんだよね、と夢野はため息をついた。

「は！？」

アニメに出てくるグッズが28万！？？？女児向けアニメだろ！？

俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

いやいやいや………

買えんだろこんなの……

あまりの金額に俺はついマジになってしまった。

「無理だろそんな金額！？」

でしょ、と夢野は俺に同意するように頷いた。

「作中でアリアが持ってた、あの憧れの“王女の証”が遂に手に入るんだって思ってウキウキしてたのに蓋を開けたらこんな価格帯でさ………」

いやいやいや、こんなんアニメのグッズの値段じゃねぇだろ！？

高くてもせいぜい一万前後かと思っていた俺は意味が分からなすぎて話が飲み込めなかった。

「そんな高ぇモン、誰も買えねぇだろ？」

受注とはいえ、公式側も見誤ったんじゃねぇの？と俺は一人呟いた。

「それがね、そうでもなかったらしいのよね」

更に夢野の解説に拍車が掛かる。

「プリアリってね、ファーストシリーズはあたしが幼稚園に入るずっと前から始まっててね。女児向けコンテンツの中では結構長寿シリーズの部類に入るんだけど」

夢野は水筒からカップにお茶を注ぎ、ゆっくりと飲み干した。

「だから、初期のシリーズを小学生くらいに観てたファンはそろそろ結婚適齢期らしくてさ。そういうファン向けにブライダル的な需要が結構あったらしくてね。知らなかったんだけど。今回、生産を手掛けたメーカーってのがブライダルジュエリー関連の会社らしくて。第一回目の受注生産が予定数に達したとかで早々に終了しちゃってさ。SNSで買えた人が上げてる写真がすっごく羨ましかった」

大人はいいよね。ローンも組めるしクレカも使える。でも、あたし達中学生はそんな金額、到底手が届かないし、と夢野はやや悔しそうに呟いた。

俺も大きく頷いた。

金が無くて苦労してる気持ちとかは充分によく理解出来る。

大人のような自由が無くて悔しい思いも痛いほどよく解るんだ。

だけど。

じゃあ、目の前の夢野が首にぶら下げてる指輪はどうやって手に入れたんだ？



予想していた流れと全く違った方向に進んでいく話に俺は訳がわからなくなっていた。