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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 冷たい視線
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お姉ちゃんばっかりズルいよ!!と騒ぐ弟を宥める夢野を横目に、俺は何も出来ずに立ち尽くしていた。
「コレはお姉ちゃんのお小遣いで買うのよ。食費とは別よ」
レン、あなたのお小遣いはもう使っちゃったでしょう、と夢野は静かに弟に言い聞かせている。
「これ、発売したばっかりのやつだよ!一個くらいいいでしょ?食費から出してもバレないよ!」
尚も弟は食い下がる。
歳の離れた兄弟ってのも大変なんだな。
俺はこの光景の中に新鮮な発見を感じていた。
概史のトコみたいに兄と弟なら多少ブン殴ったりとかもアリなんだろうが(事実、概史は度々兄にゲンコツを喰らっているようだ)姉と弟じゃそうもいかないんだろう。
「食材はある程度必要な分だけをまとめ買いしてるのよ。余分なお金は残ってないの」
夢野は首を振った。
「ぼく、今日は一人で算数ドリルをやり終わったんだよ?偉いでしょ?!」
だから買ってよ!一個だけ!と弟は尚も諦めない。
夢野は困ったような顔をしている。
今日は多めに持ち金を持って来たが、思いがけず安く食材を調達出来たので手持ちは少し余裕があった。
わざわざ買い物に付き合って貰ったんだ。
カードの一つくらい俺が買ってやってもいいか。
「なあ夢野。弟もこう言ってるんだし、今日は俺が買ってやるよ…」
俺が弟に声を掛けようとすると言葉を遮り、夢野が口を開いた。
「ううん、ありがとう、佐藤君」
でも、と夢野は言葉を続けた。
佐藤君はバイトしてギリギリで暮らしてるんだからそんなのダメだよ、と夢野は首を振った。
夢野はしゃがみ込み、弟の目線に合わせてから言い含めるように言葉を発した。
「いつもは算数ドリル、言われるまでやらないもんね。偉いよ」
夢野は弟の頭に手を置き、ポンポンと撫でた。
「じゃあ今日は特別。お母さんには内緒ね。お姉ちゃんのお小遣いから出してあげる」
夢野はそう言うとトレカを1パックカゴに入れた。
やったー!とはしゃぐ弟を眺めながら、夢野は微笑んだ。
なんて出来た子なんだろう。
俺は素直に感心していた。
俺と同い年なのに料理も買い物も完璧で、弟に対してもキチンと接している。
甘やかしすぎず、厳しすぎず。
俺と目が合うと夢野は少しはにかんだ。
「……変なとこ見せちゃったね」
いや全然、と俺は首を振った。
夢野ってスゲぇな、と言いかけたその瞬間、背後にゾクリとした視線を感じた。
お菓子売り場から離れたレーン。
通路の向こう側に立っていたのは、同じクラスの水森唯だった。
俺たちに向けられた冷ややかな視線。
「え……?」
俺は思わず狼狽した。
「コレはお姉ちゃんのお小遣いで買うのよ。食費とは別よ」
レン、あなたのお小遣いはもう使っちゃったでしょう、と夢野は静かに弟に言い聞かせている。
「これ、発売したばっかりのやつだよ!一個くらいいいでしょ?食費から出してもバレないよ!」
尚も弟は食い下がる。
歳の離れた兄弟ってのも大変なんだな。
俺はこの光景の中に新鮮な発見を感じていた。
概史のトコみたいに兄と弟なら多少ブン殴ったりとかもアリなんだろうが(事実、概史は度々兄にゲンコツを喰らっているようだ)姉と弟じゃそうもいかないんだろう。
「食材はある程度必要な分だけをまとめ買いしてるのよ。余分なお金は残ってないの」
夢野は首を振った。
「ぼく、今日は一人で算数ドリルをやり終わったんだよ?偉いでしょ?!」
だから買ってよ!一個だけ!と弟は尚も諦めない。
夢野は困ったような顔をしている。
今日は多めに持ち金を持って来たが、思いがけず安く食材を調達出来たので手持ちは少し余裕があった。
わざわざ買い物に付き合って貰ったんだ。
カードの一つくらい俺が買ってやってもいいか。
「なあ夢野。弟もこう言ってるんだし、今日は俺が買ってやるよ…」
俺が弟に声を掛けようとすると言葉を遮り、夢野が口を開いた。
「ううん、ありがとう、佐藤君」
でも、と夢野は言葉を続けた。
佐藤君はバイトしてギリギリで暮らしてるんだからそんなのダメだよ、と夢野は首を振った。
夢野はしゃがみ込み、弟の目線に合わせてから言い含めるように言葉を発した。
「いつもは算数ドリル、言われるまでやらないもんね。偉いよ」
夢野は弟の頭に手を置き、ポンポンと撫でた。
「じゃあ今日は特別。お母さんには内緒ね。お姉ちゃんのお小遣いから出してあげる」
夢野はそう言うとトレカを1パックカゴに入れた。
やったー!とはしゃぐ弟を眺めながら、夢野は微笑んだ。
なんて出来た子なんだろう。
俺は素直に感心していた。
俺と同い年なのに料理も買い物も完璧で、弟に対してもキチンと接している。
甘やかしすぎず、厳しすぎず。
俺と目が合うと夢野は少しはにかんだ。
「……変なとこ見せちゃったね」
いや全然、と俺は首を振った。
夢野ってスゲぇな、と言いかけたその瞬間、背後にゾクリとした視線を感じた。
お菓子売り場から離れたレーン。
通路の向こう側に立っていたのは、同じクラスの水森唯だった。
俺たちに向けられた冷ややかな視線。
「え……?」
俺は思わず狼狽した。
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