上 下
264 / 1,060
ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 地下の偶像崇拝

しおりを挟む
俺の問いかけに対し少し迷うような素振りを見せた後、夢野は小さく頷いた。

「まあ、たまにそういう事ってあるよ」

学校でもそんな風に言われてる?

これってdisられてるよな?

じゃあ悪口ってことじゃねぇの?

一瞬脳裏に浮かんだ可能性について、確信が持てないまま疑惑が深まる。

─────これって『イジメ』なのか…?

俺は夢野の顔を見る。

夢野は俺の視線に気付かないまま、河川敷の道をスーパーに向かって歩いていく。

やっぱりイジメなのか?

じゃあ、『誰』が夢野にそんな事を?

踏み込んだ質問をしようと思うがなかなか言葉が出てこない。

嫌な事を言ってくるのってやっぱ女子なのか?

男子って案外、女子の服だのファッションに疎いんじゃなかろうか。

俺自身、そういったジャンルはちっともわからない。

それに。

俺は夢野のフリルの付いた服の胸元を横目でチラリと見た。

こう言ってはなんだが、夢野くるみは2年男子の中でも隠れた人気があった。

一部男子の熱い注目を集めていた事は人間関係に疎い俺ですら知っている。

夢野の胸のボリュームはクラスでは間違いなく一番だった。

学年全体で見ても間違いなくトップ3には入っていた。

明るめの色のふんわりとした長い髪。大きな胸。どことなく天然な独特なオーラ。

夢野くるみは一部の男子の間ではしょっちゅう話題になっているというのもなんとなく解る。

しかし、その中に“夢野くるみを傷つけよう”とする意図やニュアンスは感じられなかった。

直接話しかける訳ではなく、遠巻きにして眺めているといった印象の方が強い気もする。

まあ、隠れた裏の地下アイドル、地下ヒロインと言った感じだろうか。

だとしたら。

やはり女子だろうか?

クラス内の女子の間で、夢野くるみに対するイジメめいた悪意がある?

それともイビリとかハブり?無視とか?

じゃあ誰がそれを?

俺は一人でグルグルと思考を巡らせる。

「ねぇ、佐藤君?」

黙っている俺の顔を夢野が覗き込んだ。

「えっ?なんだ?」

悪ィ、聞いてなかった、と俺は慌てて誤魔化す。

「佐藤君は今晩のメニュー、なんか食べたい物ある?」

なんでもいいぜ、と適当に答える俺に対し夢野は頬をぷうと膨らませてみせる。

「なんでもじゃわかんないよ?」

佐藤君の好きなメニューってなに?と夢野は無邪気に質問してくる。

夢野って天真爛漫な子なんだな、と俺はぼんやりと思った。




だってそうだろ?こんな子が1ヶ月後に身投げするなんて信じられない。何かの間違いじゃねぇの?

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...