[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない！〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる！？

ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 恥辱の代償

俺は教室のドアを開けた。

いつもと変わらない様子の朝の教室。

夢野くるみは自分の席で水森と談笑していた。

俺はホッとした。

こんだけしんどい思いしたんだ。

でも、それが報われた気がして心底安堵した。

生きてるだけでいい。

生きてさえいればどうとでもやり直せるじゃねぇか。

「佐藤っちさー。なにガン見してんの？」

喋っている夢野と水森をさりげなく見ていたつもりだったのに、めざとく誰かに気付かれてしまう。

俺は声の主の方向を振り返る。

クラス内カースト上位女子、上野綾うえのあやだった。

面倒くさいヤツに見つかったものだ。

ふぅーん？ああいうのが好みなんだ、と上野は嫌な笑い方と共に俺を見る。

「やっぱ胸が大きい子ってそれだけでオトコが寄って来るんだねぇー？」

確かに夢野は胸が大きい方だが、何か棘のある言い方じゃね？

俺はこの上野綾が苦手だった。

カースト上位女子・クラス内で目立つ存在ってだけでもなんか避けたい存在なんだが、それ以上になんか合わねぇんだよな。イロイロとさ。

黒ギャルの諸星キクコも苦手だったんだが、それ以上になんかこの上野は厄介な存在なんだ。

そういう言い方ってさ、俺に対しても夢野に対しても不躾じゃねぇか。

「そんなんじゃねぇよ」

俺は上野をかわし、自分の席に着く。

水森がチラリと俺の方を一瞬見た気がした。

しかしだ。

無事にに時間が戻ったとは言え、こっからが本番じゃねぇか？

このクラス内でイジメがある？

夢野が自殺を図った原因を取り除かないと、何度でも夢野は死に向かってしまう。

俺は教室後方の自分の席から教室内をグルリと見回した。

このクラスには俺の知らない何かがある？

それを見つけてどうにかしねぇとな。

クラス内カースト。

冷静に考えれば、はみ出し者っぽい俺はカーストの蚊帳の外だったからな。

このクラスの序列とか、ぼんやりとしかわかんねぇんだよな。

女子となれば尚更だ。

体育とか女子は別だし、そもそも俺は女子自体と絡みが全くないからな。

情報収集も兼ねて、アレコレ接触する必要ってあるみたいだな。

俺は教室前方、廊下側の席の夢野くるみをぼんやりと眺めた。

夢野が生きてる。

それだけで俺はなんだか満ち足りた気持ちになっていた。

夢野が死なずに生きてくれてる。






それだけでもう、俺が恥辱に塗れたあの一連の行為を完遂した価値があるってもんだ。