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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 落ちてきた少女と受け止める少女
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市民病院は車で20分程度の場所にあった。
小泉と俺は車を降り、病院のロビーに向かった。
車の中で2本目のレッドブルを飲み切った小泉は少しコンディションを持ち直していた。
「あれ?」
ロビーのソファに座っていたのは同じクラスの水森 唯だった。
クラスの女子の中では背は高い方で、俺と同じくらいはあるように思う。
痩せていてストローのようなシルエットのイメージだった。
ショートカットで黒縁の眼鏡を掛けているためか、地味で大人しく目立たない印象の女子だった。
確か、夢野くるみと仲良かったよな。
「おい水森!」
俺が声を掛けると水森はビクッとしたような様子でこちらを見た。
「…あ」
俺の後ろの小泉の姿を見た水森は少しホッとしたような表情を浮かべた。
「水森、夢野の状態はどうなってる?」
小泉が水森に訊ねた。
俺たちは今ここに着いたばかりで状況を何一つ把握していなかった。
水森がここに居るということは何か知ってるんだろう。
水森は静かに首を振った。
「面会は出来てません」
多分、無理だと思います、と水森は俯きながら小さく呟いた。
「私も詳しい話は何も聞いてないんだ。何があったか教えてくれないか?」
小泉もどうしたら良いか分からず混乱しているようだった。
わかりません、と水森はまた小さく答えた。
「くぅちゃんの弟さんに話を聞いただけで、あたしも何がなんだかわからないんです」
「弟?夢野のご家族は既に到着してるのか?」
病室はどこかわかるか?と訊く小泉に水森は放心したように答えた。
「ご家族以外は面会謝絶だそうです。今夜が峠か、或いは……」
もう持たないかもしれないって、と水森は震えながら小さく言った。
「そんな馬鹿な!」
小泉はが小さく叫ぶ。
俺も信じられなかった。
夢野は今日の授業も普通に受けてた筈だ。
それが、どうして?
俺も意味が判らず混乱した。
五時限目も普通に授業受けてたじゃねぇか。ついさっきだぞ?
あり得るか?
いや、済まなかった、と小泉は小さく水森に詫び、部屋番号を尋ねた。
「403号室です。弟さんとお母さんが居ると思います」
水森はそれだけ答えると立ち上がり、小泉に会釈をするとそのまま病院を後にしてしまった。
え?
もう帰るのか?
まあ、面会出来ないのなら仕方がないのかもしれないが……
「行くぞ、佐藤」
小泉に促されて俺たちは階段に向かった。
ここの病院は“お見舞いの方はエレベーターではなく階段をご利用ください”ってスタンスなんだよな。
4階まで登るのまあまあダルいよな。
少し振り返り、遠目でうっすらと水森を見送った俺はなんとなく違和感のようなものを覚えた。
どうしてだかはわからない。
でも、俺のその勘は当たってたんだよな。その時はわかんなかったけどさ。
小泉と俺は車を降り、病院のロビーに向かった。
車の中で2本目のレッドブルを飲み切った小泉は少しコンディションを持ち直していた。
「あれ?」
ロビーのソファに座っていたのは同じクラスの水森 唯だった。
クラスの女子の中では背は高い方で、俺と同じくらいはあるように思う。
痩せていてストローのようなシルエットのイメージだった。
ショートカットで黒縁の眼鏡を掛けているためか、地味で大人しく目立たない印象の女子だった。
確か、夢野くるみと仲良かったよな。
「おい水森!」
俺が声を掛けると水森はビクッとしたような様子でこちらを見た。
「…あ」
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「水森、夢野の状態はどうなってる?」
小泉が水森に訊ねた。
俺たちは今ここに着いたばかりで状況を何一つ把握していなかった。
水森がここに居るということは何か知ってるんだろう。
水森は静かに首を振った。
「面会は出来てません」
多分、無理だと思います、と水森は俯きながら小さく呟いた。
「私も詳しい話は何も聞いてないんだ。何があったか教えてくれないか?」
小泉もどうしたら良いか分からず混乱しているようだった。
わかりません、と水森はまた小さく答えた。
「くぅちゃんの弟さんに話を聞いただけで、あたしも何がなんだかわからないんです」
「弟?夢野のご家族は既に到着してるのか?」
病室はどこかわかるか?と訊く小泉に水森は放心したように答えた。
「ご家族以外は面会謝絶だそうです。今夜が峠か、或いは……」
もう持たないかもしれないって、と水森は震えながら小さく言った。
「そんな馬鹿な!」
小泉はが小さく叫ぶ。
俺も信じられなかった。
夢野は今日の授業も普通に受けてた筈だ。
それが、どうして?
俺も意味が判らず混乱した。
五時限目も普通に授業受けてたじゃねぇか。ついさっきだぞ?
あり得るか?
いや、済まなかった、と小泉は小さく水森に詫び、部屋番号を尋ねた。
「403号室です。弟さんとお母さんが居ると思います」
水森はそれだけ答えると立ち上がり、小泉に会釈をするとそのまま病院を後にしてしまった。
え?
もう帰るのか?
まあ、面会出来ないのなら仕方がないのかもしれないが……
「行くぞ、佐藤」
小泉に促されて俺たちは階段に向かった。
ここの病院は“お見舞いの方はエレベーターではなく階段をご利用ください”ってスタンスなんだよな。
4階まで登るのまあまあダルいよな。
少し振り返り、遠目でうっすらと水森を見送った俺はなんとなく違和感のようなものを覚えた。
どうしてだかはわからない。
でも、俺のその勘は当たってたんだよな。その時はわかんなかったけどさ。
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