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ep.4.
ep4. 「暴かれた世界」 咥え煙草と死の予感
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ふむ、と小泉は小さく頷いた。
小泉は地図の印を確認すると「どこからこんな地図を引っ張り出して来たんだろうな?」と首を傾げた。
「どういう事だ?」
この地図に書かれてるのは旧地名だな、と小泉は指で地図を弾く。
「この地域が合併したのが20年くらい前……と言うことはこの地図は少なくとも25~30年くらい前のものじゃないか?」
なるほど、そう来るか。
俺はもう一度地図を確認する。
こう、ゲームやアニメや漫画に出てくる謎めいた地図ってのは何百年前だとかのアンティークな地図だろ?
ああいうのってカッコいいよな。
けど、今回のこの地図は25~30年くらい前っていう中途半端な意味不明さが不気味さに拍車をかけてるよな。
赤鉛筆の下には鳥居のマークがある。
「これって神社だよな?センセェ、何か知ってるか?」
さあな、と小泉は首を振った。
「私が巫女をやってるって言ってもアルバイトだぞ。そこまで本格的に近辺の神社事情に詳しい訳じゃあない」
「じゃ、結局何も分からんてことか?」
母親や呪いの手掛かりになりそうだと少し思ったが空振りだったかもしれない。
まあ、待て、と小泉は含みを持たせたように呟く。
「我々が知らないことは“知ってる人”に聞けばいいだけだ」
チャイムが鳴り、小泉は椅子から立ち上がった。
「ところで佐藤、駄菓子は好きか?」
唐突な小泉の質問に俺はノータイムで即答する。
「駄菓子が嫌いな奴なんか存在しねぇだろ?」
うまい棒のたこ焼き味が大正義だ、と俺が答えると小泉は満足そうに頷いた。
「今から駄菓子屋に行くぞ。ついて来い」
小泉はいつも突拍子もない事を言い出すし実行する。
俺が連れられて到着したのは神社の近くの古びたタバコ屋だった。
「スエカばあちゃーん。ちょっといい?」
小泉は店の奥に居た老人に声を掛ける。
80代くらいだろうか。正確な年齢は掴めない。
「キョウちゃんかぁ。よう来たのうや」
今は学校の先生じゃろ、元気でやりょうるんか?と立ち上がった婆さんは小泉の方に向かって歩いてくる。
「……まあ、大丈夫よ。ばあちゃん」
「はあ、あんたは生徒さんきゃあ?よう来てくれんさったのうや」
スエカばあちゃんと呼ばれた婆さんは俺を見てニコニコと笑う。
ばあちゃん、この子が例の、と小泉は婆さんに耳打ちし婆さんも小さく頷いた。
「佐藤。私はちょっとばあちゃんと話があるから好きな駄菓子を買ってろ。奢りだから好きなだけ選んでいいぞ」
「マジか」
その言葉にテンションが爆上がりした俺は店内にあったカゴを手に取り、手当たり次第に駄菓子を突っ込んでいくことにした。
うまい棒のシュガーラスク味に蒲焼さん太郎、ヨーグルにわなげチョコ、ビッグカツ、チロルチョコのきなこもち味にポテトフライのフライドチキン味。うまい棒のチョコ味におやつカルパス。シャボン玉セットもあったのでカゴに突っ込む。
なんだよ。駄菓子屋って滅茶苦茶楽しいじゃんか。
すっかりテンションがブチ上がった俺は夢中になって駄菓子をカゴにぶん投げていった。
っていうか、全商品カートン買いしてぇ。
俺が駄菓子に夢中になっている間に小泉と婆さんは何やら話し込んでいた。
小一時間ほど経った頃だろうか。
「佐藤、ちょっと来い」
小泉が俺を呼んだ。
食っていいと言われたので会計前にフライングで駄菓子を齧っていた俺はそのまま婆さんと小泉が話し込んでいた住居スペースに上がり込む。
「あんたぁ佐藤くん言うんね?賢そうなええ子じゃねぇ」
婆さんが目を細めて俺を見る。
ココアシガレットを咥えていた俺は思わずむせそうになった。
賢そうとか人生で一度も言われた事のない言葉だった。
「そうでもないよ。ばあちゃん」
小泉が余計な訂正をする。
いやそこは肯定しとけよ。
婆さんは俺の姿を眺めながら予想外の言葉を口にした。
「こぎゃあなまだこまい子が忌み子じゃことに可哀想じゃのう。用が済んだら殺されんといけんのじゃけぇ」
小泉は地図の印を確認すると「どこからこんな地図を引っ張り出して来たんだろうな?」と首を傾げた。
「どういう事だ?」
この地図に書かれてるのは旧地名だな、と小泉は指で地図を弾く。
「この地域が合併したのが20年くらい前……と言うことはこの地図は少なくとも25~30年くらい前のものじゃないか?」
なるほど、そう来るか。
俺はもう一度地図を確認する。
こう、ゲームやアニメや漫画に出てくる謎めいた地図ってのは何百年前だとかのアンティークな地図だろ?
ああいうのってカッコいいよな。
けど、今回のこの地図は25~30年くらい前っていう中途半端な意味不明さが不気味さに拍車をかけてるよな。
赤鉛筆の下には鳥居のマークがある。
「これって神社だよな?センセェ、何か知ってるか?」
さあな、と小泉は首を振った。
「私が巫女をやってるって言ってもアルバイトだぞ。そこまで本格的に近辺の神社事情に詳しい訳じゃあない」
「じゃ、結局何も分からんてことか?」
母親や呪いの手掛かりになりそうだと少し思ったが空振りだったかもしれない。
まあ、待て、と小泉は含みを持たせたように呟く。
「我々が知らないことは“知ってる人”に聞けばいいだけだ」
チャイムが鳴り、小泉は椅子から立ち上がった。
「ところで佐藤、駄菓子は好きか?」
唐突な小泉の質問に俺はノータイムで即答する。
「駄菓子が嫌いな奴なんか存在しねぇだろ?」
うまい棒のたこ焼き味が大正義だ、と俺が答えると小泉は満足そうに頷いた。
「今から駄菓子屋に行くぞ。ついて来い」
小泉はいつも突拍子もない事を言い出すし実行する。
俺が連れられて到着したのは神社の近くの古びたタバコ屋だった。
「スエカばあちゃーん。ちょっといい?」
小泉は店の奥に居た老人に声を掛ける。
80代くらいだろうか。正確な年齢は掴めない。
「キョウちゃんかぁ。よう来たのうや」
今は学校の先生じゃろ、元気でやりょうるんか?と立ち上がった婆さんは小泉の方に向かって歩いてくる。
「……まあ、大丈夫よ。ばあちゃん」
「はあ、あんたは生徒さんきゃあ?よう来てくれんさったのうや」
スエカばあちゃんと呼ばれた婆さんは俺を見てニコニコと笑う。
ばあちゃん、この子が例の、と小泉は婆さんに耳打ちし婆さんも小さく頷いた。
「佐藤。私はちょっとばあちゃんと話があるから好きな駄菓子を買ってろ。奢りだから好きなだけ選んでいいぞ」
「マジか」
その言葉にテンションが爆上がりした俺は店内にあったカゴを手に取り、手当たり次第に駄菓子を突っ込んでいくことにした。
うまい棒のシュガーラスク味に蒲焼さん太郎、ヨーグルにわなげチョコ、ビッグカツ、チロルチョコのきなこもち味にポテトフライのフライドチキン味。うまい棒のチョコ味におやつカルパス。シャボン玉セットもあったのでカゴに突っ込む。
なんだよ。駄菓子屋って滅茶苦茶楽しいじゃんか。
すっかりテンションがブチ上がった俺は夢中になって駄菓子をカゴにぶん投げていった。
っていうか、全商品カートン買いしてぇ。
俺が駄菓子に夢中になっている間に小泉と婆さんは何やら話し込んでいた。
小一時間ほど経った頃だろうか。
「佐藤、ちょっと来い」
小泉が俺を呼んだ。
食っていいと言われたので会計前にフライングで駄菓子を齧っていた俺はそのまま婆さんと小泉が話し込んでいた住居スペースに上がり込む。
「あんたぁ佐藤くん言うんね?賢そうなええ子じゃねぇ」
婆さんが目を細めて俺を見る。
ココアシガレットを咥えていた俺は思わずむせそうになった。
賢そうとか人生で一度も言われた事のない言葉だった。
「そうでもないよ。ばあちゃん」
小泉が余計な訂正をする。
いやそこは肯定しとけよ。
婆さんは俺の姿を眺めながら予想外の言葉を口にした。
「こぎゃあなまだこまい子が忌み子じゃことに可哀想じゃのう。用が済んだら殺されんといけんのじゃけぇ」
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