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ep.3.
ep3 . 『夜間非行』 配られたカードで勝負するしかない
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「見たのか、まあいいや」
少年はやや投げやり気味に呟く。
こんな物どうやって盗ってきたの、と少女は俯きながら尋ねる。
「あ、もしかして見たのこっち?」
少年はトランプのカードを切るように、やや乱雑にポケットから2枚のカードを机の上に投げる。
学生証と免許証。
「コイツらで合ってるか?」
少女は無言でこくんと頷く。
少年はホッと胸を撫で下ろした様子を見せた。
「人違いじゃ無くて良かったぜ。危うくただの強盗になるトコだった」
どっちにしても強盗でしょ、と少女は小さく返事する。
「アンタ、何して来たのよ」
「何も?ちょっとこれだけ貰っただけだし?」
少年は悪びれずに言ってのける。
身分証とか再発行出来るんだしよ、ほぼ実害ねぇだろ?と少年は笑ってみせた。
「だからって……」
「この2枚はお前にやるよ。警察に行くなりネットに晒すなり好きにしていいぜ」
少年は後頭部を掻きながら何事も無かったような態度を貫く。
なんと返事していいか分からないまま少女は少年を見つめた。
「アンタさ、もしかしてアタシの為にこんな……」
少女の言葉を遮るように少年が断言する。
「違ぇし。なんかムカつくからシメただけだし」
俺は俺の為にやった、ただそれだけだっての、と少年は麦茶を流し込みながら答える。
「そんなことよりさ」
本題はこっからだ、と少年は少女の目を見据えた。
「コイツらのやった事は最低最悪だ。それは疑いようの無ぇ事実だ」
だがな、と少年は言葉を続ける。
「それとこれとは話が別だ。お前のやった事だよ」
少年に見つめられた少女は言葉を詰まらせた。
「よくも無関係な俺を巻き込んで利用しようとしてくれたよなぁ?」
お前の元カレに対しても不誠実過ぎるだろうが、と少年は睨みながら断言する。
「お前が男共にされたことは確かに同情もするし気の毒だとは思う」
けどな、だからって俺や元カレに対して好き放題やっていいって事にはなんねぇだろ、と少年は強調する。
「お前の中では心の整理ができてたとしてもよ、理由も言わずに一方的に居なくなるのってやられた方は傷つくんじゃねぇの?」
被害者だからなんでも許されるっていう訳でもねぇだろ、と少年は念押しする様に付け加える。
理由も告げられず一方的に捨てられる。
それは少年自身が母親にされた仕打ちそのものだった。
少年はその事実そのものに大いに傷つき、苦しんできた。
だからこそ少女が相棒に行ったその行為は許し難いものであったのだ。
少女は黙ったままだった。
少年の言う通りかもしれない、と言う事は少女が一番理解していた。
「……わかってる。アタシが悪いってコトは」
少女は泣きそうになりながらテーブルの上の身分証を見つめた。
「なあ、俺ら別れようぜ」
少年が別れを切り出す。
少女は頷く。
けどその前に、と少年は少し小さく呟く。
「落とし前付けろよ、お前」
意外な言葉に少女は困惑する。
「……え?落とし前って……?」
別れる前にやる事って言ったら決まってんだろ、と少年が間髪入れずに言葉を続ける。
「お前さ、一回ヤらせろよ」
少年はやや投げやり気味に呟く。
こんな物どうやって盗ってきたの、と少女は俯きながら尋ねる。
「あ、もしかして見たのこっち?」
少年はトランプのカードを切るように、やや乱雑にポケットから2枚のカードを机の上に投げる。
学生証と免許証。
「コイツらで合ってるか?」
少女は無言でこくんと頷く。
少年はホッと胸を撫で下ろした様子を見せた。
「人違いじゃ無くて良かったぜ。危うくただの強盗になるトコだった」
どっちにしても強盗でしょ、と少女は小さく返事する。
「アンタ、何して来たのよ」
「何も?ちょっとこれだけ貰っただけだし?」
少年は悪びれずに言ってのける。
身分証とか再発行出来るんだしよ、ほぼ実害ねぇだろ?と少年は笑ってみせた。
「だからって……」
「この2枚はお前にやるよ。警察に行くなりネットに晒すなり好きにしていいぜ」
少年は後頭部を掻きながら何事も無かったような態度を貫く。
なんと返事していいか分からないまま少女は少年を見つめた。
「アンタさ、もしかしてアタシの為にこんな……」
少女の言葉を遮るように少年が断言する。
「違ぇし。なんかムカつくからシメただけだし」
俺は俺の為にやった、ただそれだけだっての、と少年は麦茶を流し込みながら答える。
「そんなことよりさ」
本題はこっからだ、と少年は少女の目を見据えた。
「コイツらのやった事は最低最悪だ。それは疑いようの無ぇ事実だ」
だがな、と少年は言葉を続ける。
「それとこれとは話が別だ。お前のやった事だよ」
少年に見つめられた少女は言葉を詰まらせた。
「よくも無関係な俺を巻き込んで利用しようとしてくれたよなぁ?」
お前の元カレに対しても不誠実過ぎるだろうが、と少年は睨みながら断言する。
「お前が男共にされたことは確かに同情もするし気の毒だとは思う」
けどな、だからって俺や元カレに対して好き放題やっていいって事にはなんねぇだろ、と少年は強調する。
「お前の中では心の整理ができてたとしてもよ、理由も言わずに一方的に居なくなるのってやられた方は傷つくんじゃねぇの?」
被害者だからなんでも許されるっていう訳でもねぇだろ、と少年は念押しする様に付け加える。
理由も告げられず一方的に捨てられる。
それは少年自身が母親にされた仕打ちそのものだった。
少年はその事実そのものに大いに傷つき、苦しんできた。
だからこそ少女が相棒に行ったその行為は許し難いものであったのだ。
少女は黙ったままだった。
少年の言う通りかもしれない、と言う事は少女が一番理解していた。
「……わかってる。アタシが悪いってコトは」
少女は泣きそうになりながらテーブルの上の身分証を見つめた。
「なあ、俺ら別れようぜ」
少年が別れを切り出す。
少女は頷く。
けどその前に、と少年は少し小さく呟く。
「落とし前付けろよ、お前」
意外な言葉に少女は困惑する。
「……え?落とし前って……?」
別れる前にやる事って言ったら決まってんだろ、と少年が間髪入れずに言葉を続ける。
「お前さ、一回ヤらせろよ」
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