152 / 1,060
ep.3.
ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 俺抜きで廻る世界
しおりを挟む
デジタルの表示が目に映る。
乾いた笑いが漏れる。
誰だ?今笑ったのは?
俺だ。
俺は“戻って来た”のだ。
メッセージが一件来ている。
小泉からだった。
『目が覚めたら神社に来い』
ただそれだけの連絡だったが妙に安心する。
俺はゆっくりと起き、制服に着替えると小泉が巫女を務める神社に向かった。
小泉が臨時で間借りしているという境内エリア内にある離れのドアを叩く。
小泉の返事が聞こえる。
いつも夜更かししてゲーム三昧のはずの小泉は既に起きていた。
ご苦労なことだ。
俺は笑いを堪えるのに必死だった。
なぜだか急に全部が馬鹿馬鹿しく思えて来た。
『ちょっと待て』という声と共に巫女の着物姿の小泉が出てきた。
こんな時間に巫女装束でスタンバイか。
毎回巻き込まれてお気の毒にな。
離れから社務所に通された俺はもうどうでも良くなっていた。
もう全部終わった事だ。
何をしてたんだ小泉は?
またいつもの覗きまがいの調査か?
何をどう確認してもらっても構わねぇよ。
小泉に促されるまま俺は座卓の前に座る。
俺の前に正座した小泉は以前に持っていた和綴じの帳面と古びた文庫本を取り出す。
俺は座卓の上に置かれた帳面と今までとは別の文庫本をなんとなく見つめた。
ボロボロになった古びた文庫本の表紙には『夜間非行』というタイトルが付けられている。
誰がやってるのか知らんけど毎回毎回ご丁寧な呪いだな。
意を決したように深呼吸した小泉は真っ直ぐに言い放った。
「佐藤。お前は童貞を捨てて戻ってきたようだな」
ああ、と俺は頷いた。
「自分で決めた事だからな」
「 自分で、か」
小泉は一瞬、複雑そうな表情を浮かべた後に俺に尋ねた。
「……今回は泣いたり取り乱したりしないんだな?」
全てを終えた俺は寧ろこの状況に安堵していた。
「この日に『戻って来れた』っていうこの結果だけで十分だ」
文庫本だ?記録だ?俺は興味ねぇからセンセェだけで勝手に確認でも何でもしてくれよ、と俺は大袈裟に肩をすくめてみせた。
「悪者は俺だけでいい。世界は俺抜きで回ってく。そうだろう?センセェ」
乾いた笑いが漏れる。
誰だ?今笑ったのは?
俺だ。
俺は“戻って来た”のだ。
メッセージが一件来ている。
小泉からだった。
『目が覚めたら神社に来い』
ただそれだけの連絡だったが妙に安心する。
俺はゆっくりと起き、制服に着替えると小泉が巫女を務める神社に向かった。
小泉が臨時で間借りしているという境内エリア内にある離れのドアを叩く。
小泉の返事が聞こえる。
いつも夜更かししてゲーム三昧のはずの小泉は既に起きていた。
ご苦労なことだ。
俺は笑いを堪えるのに必死だった。
なぜだか急に全部が馬鹿馬鹿しく思えて来た。
『ちょっと待て』という声と共に巫女の着物姿の小泉が出てきた。
こんな時間に巫女装束でスタンバイか。
毎回巻き込まれてお気の毒にな。
離れから社務所に通された俺はもうどうでも良くなっていた。
もう全部終わった事だ。
何をしてたんだ小泉は?
またいつもの覗きまがいの調査か?
何をどう確認してもらっても構わねぇよ。
小泉に促されるまま俺は座卓の前に座る。
俺の前に正座した小泉は以前に持っていた和綴じの帳面と古びた文庫本を取り出す。
俺は座卓の上に置かれた帳面と今までとは別の文庫本をなんとなく見つめた。
ボロボロになった古びた文庫本の表紙には『夜間非行』というタイトルが付けられている。
誰がやってるのか知らんけど毎回毎回ご丁寧な呪いだな。
意を決したように深呼吸した小泉は真っ直ぐに言い放った。
「佐藤。お前は童貞を捨てて戻ってきたようだな」
ああ、と俺は頷いた。
「自分で決めた事だからな」
「 自分で、か」
小泉は一瞬、複雑そうな表情を浮かべた後に俺に尋ねた。
「……今回は泣いたり取り乱したりしないんだな?」
全てを終えた俺は寧ろこの状況に安堵していた。
「この日に『戻って来れた』っていうこの結果だけで十分だ」
文庫本だ?記録だ?俺は興味ねぇからセンセェだけで勝手に確認でも何でもしてくれよ、と俺は大袈裟に肩をすくめてみせた。
「悪者は俺だけでいい。世界は俺抜きで回ってく。そうだろう?センセェ」
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる