[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

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ep2 .

ep2 . 「訳有り令嬢と秘密の花園」 震える青い果実

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だが。

いつもなら配り歩く梨ではあるが、今回は事情が違った。

毎日遊びに行くたびに手土産としてその日の手作り菓子を持たせてくれ(ご丁寧に綺麗にラッピングまでしてある)、猫どころか俺ごと面倒を見てくれている花園リセに自分が差し出せる物といったらこれしかなかった。

“田舎の親戚が送ってきたんだけど、もしよかったら……”

彼女に渡すにもなんら不自然は無いように思えた。

花園邸に着いた俺はいつものように正門前のインターホンを押し、ゲートを開錠してもらう。

いつものように東屋では花園リセがマサムネを抱き、俺の姿を確認すると優雅に微笑む。

学校おつかれさま、と彼女は鈴のような声で俺を出迎えてくれた。

俺は茶色い紙袋を彼女の前に差し出した。

田舎の親戚が送って来たんだけどもしよかったら、と予め予行演習していた通りのセリフを言う。

一瞬、花園リセの動きが止まった。

しまった、と俺は思った。

こんな大きなお屋敷の御令嬢、貴婦人だぞ?

よく考えなくても田舎の形の悪い農産物なんか口にするはず無ぇし、梨っつってもラフランスとかもっと高級なの千疋屋とか高級店で買うよな。

田舎感覚で爺さん婆さん相手にお裾分けのノリとか超ダセェじゃん。

俺は何も考えず馬鹿みたいに梨を貴婦人に差し出した己を呪った。

けど仕方ない、俺が持ってるアイテムなんてこれくらいしかなかったんだ。

俺は急に恥ずかしくなって紙袋を引っ込めようとした。

あの、と花園リセが呟く。

彼女のその華奢な手が紙袋の端をぎゅっと握りしめていた。

俺は紙袋から手を離す。

嬉しいですわ、と花園リセははにかんだように微笑んだ。

「佐藤さんから贈り物を頂けるなんて思ってもみませんでしたから」

ふふ、と小さく笑った彼女の横顔は実年齢より少し幼く見えた。

そうだよな、貴婦人も梨ぐらい食うよな。

なんにせよ良かった、と俺は胸を撫で下ろした。



数日後に俺がその青い果実よりも……もっと大変なものを口にする事になるなんてその時は思ってもみなかったのである。
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