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ep1.
ep1.「呪いの宣告」 女教師からコンドームを手渡される
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これだけは断言できる。絶対に俺ではない。俺はやってない。
「何を根拠にそう思い込めるんだ?この小説の主人公はシチュや設定だけは俺に激似だ。けど、肝心の中身がまるで違うじゃねぇか」
絶対に別人だ、と俺は小泉に念押しした。
「ほう?どう違うんだ?教えてくれないか?」
よほど自信があるのか余裕あり気に小泉が言う。
「そもそも俺は短ランなんか着てねぇ。いくらなんでも今時そんなもん無ぇだろうが。第一、どこに売ってるって言うんだ」
小説の主人公は短ランを着ているとハッキリと書かれていた。90年代のヤンキー漫画じゃあるまいし、そんなもの実際に着てる奴は見かけたことがない。
「じゃあお前は短ランとやらを持ってすらいないと言うんだな?着たことすらないと?」
それは…と思わず俺は言葉を濁した。
実は持っていない訳ではなかった。佑ニーサンからお下がりで貰ったものだ。確かに自宅のタンスの底の方にそれはあった。正直に言えば何回か着てみたこともあるけど、1年の時のハナシだ。2年になってからは一回も着てない。
「いや……ゼンゼン無いってワケじゃあないけどよ……」
やっぱり持ってるんじゃないか、と小泉は少し勝ち誇ったように俺に視線を向ける。
「違ぇし。絶対俺じゃない。俺はこんなに喜怒哀楽とか激しくねぇし」
俺は食い下がるように否定した。
小説の主人公は感情の起伏がとにかく激しいヤツだった。ガチギレしたかと思えばわりと泣いたりもしてるし、マコトを相手に妙に意識してキョドったりもしている。バットでそこら中のガラスを叩き割ったりとか兎に角感情の振れ幅が大きすぎる人物であるように思えた。
「俺はもっとユルめな生活してるしこんなにハードボイルドな要素とかも無ぇよ」
主人公は飲酒もするし事後に煙草を吸ったりもしている。なんかちょっとカッコいい気もするが俺にはそんな雰囲気は到底醸し出せそうにもなかった。俺が非童貞っていうのがもう全く想像つかないし100%別人としか思えなかった。
そもそも、と俺は小泉に強調した。
「さっきの文庫本が見つかったからってタイムリープが実際にあったって証明にはならねぇじゃねぇか」
「だがタイムリープが無かったと言う証明もまた出来ない。そうだろう?」
すかさず小泉がカウンター気味に返してくる。なんなんだよ本当に。
そこでだ、と小泉は何かを俺に投げて寄越した。
投げられたものをキャッチしてみる。
「お前にプレゼントだ」
それは小さな銀色の缶だった。
「なんだよコレ?」
俺は蓋をひねって開ける。中に入っていたのは何個かの個包装の丸くて薄いパッケージだった。
チョコかガムだろうか。それともラムネか?
「何これ?食っていいのか?」
放課後に小説二冊を長時間読まされるハメになった俺は少々空腹気味だった。
パッケージを開けようとした俺はその感触が菓子ではないことに気付いた。
「これって……」
ああ、と小泉が頷いた。
「食うものではない。喰う時に使うものだ」
その正体に気付いた俺は思わず缶を落としてしまった。
銀色の小さな缶は乾いた音を立てて床に跳ね、カラフルな丸いパッケージは辺りに散乱する。
それは缶入りのコンドームだった。
「何を根拠にそう思い込めるんだ?この小説の主人公はシチュや設定だけは俺に激似だ。けど、肝心の中身がまるで違うじゃねぇか」
絶対に別人だ、と俺は小泉に念押しした。
「ほう?どう違うんだ?教えてくれないか?」
よほど自信があるのか余裕あり気に小泉が言う。
「そもそも俺は短ランなんか着てねぇ。いくらなんでも今時そんなもん無ぇだろうが。第一、どこに売ってるって言うんだ」
小説の主人公は短ランを着ているとハッキリと書かれていた。90年代のヤンキー漫画じゃあるまいし、そんなもの実際に着てる奴は見かけたことがない。
「じゃあお前は短ランとやらを持ってすらいないと言うんだな?着たことすらないと?」
それは…と思わず俺は言葉を濁した。
実は持っていない訳ではなかった。佑ニーサンからお下がりで貰ったものだ。確かに自宅のタンスの底の方にそれはあった。正直に言えば何回か着てみたこともあるけど、1年の時のハナシだ。2年になってからは一回も着てない。
「いや……ゼンゼン無いってワケじゃあないけどよ……」
やっぱり持ってるんじゃないか、と小泉は少し勝ち誇ったように俺に視線を向ける。
「違ぇし。絶対俺じゃない。俺はこんなに喜怒哀楽とか激しくねぇし」
俺は食い下がるように否定した。
小説の主人公は感情の起伏がとにかく激しいヤツだった。ガチギレしたかと思えばわりと泣いたりもしてるし、マコトを相手に妙に意識してキョドったりもしている。バットでそこら中のガラスを叩き割ったりとか兎に角感情の振れ幅が大きすぎる人物であるように思えた。
「俺はもっとユルめな生活してるしこんなにハードボイルドな要素とかも無ぇよ」
主人公は飲酒もするし事後に煙草を吸ったりもしている。なんかちょっとカッコいい気もするが俺にはそんな雰囲気は到底醸し出せそうにもなかった。俺が非童貞っていうのがもう全く想像つかないし100%別人としか思えなかった。
そもそも、と俺は小泉に強調した。
「さっきの文庫本が見つかったからってタイムリープが実際にあったって証明にはならねぇじゃねぇか」
「だがタイムリープが無かったと言う証明もまた出来ない。そうだろう?」
すかさず小泉がカウンター気味に返してくる。なんなんだよ本当に。
そこでだ、と小泉は何かを俺に投げて寄越した。
投げられたものをキャッチしてみる。
「お前にプレゼントだ」
それは小さな銀色の缶だった。
「なんだよコレ?」
俺は蓋をひねって開ける。中に入っていたのは何個かの個包装の丸くて薄いパッケージだった。
チョコかガムだろうか。それともラムネか?
「何これ?食っていいのか?」
放課後に小説二冊を長時間読まされるハメになった俺は少々空腹気味だった。
パッケージを開けようとした俺はその感触が菓子ではないことに気付いた。
「これって……」
ああ、と小泉が頷いた。
「食うものではない。喰う時に使うものだ」
その正体に気付いた俺は思わず缶を落としてしまった。
銀色の小さな缶は乾いた音を立てて床に跳ね、カラフルな丸いパッケージは辺りに散乱する。
それは缶入りのコンドームだった。
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