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ep0. 「真夏の夜の爪」 ㉕猫とコルトパイソン
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暫く沈黙が流れる。
二人は微動だにしないが別の気配はその数を増やしていた。
「なんで自分ばっかりって思うンだよ!お前だって……!」
少年の言葉を遮りマコトが激昂する。
「……ウザいんだけど!みんなウザいしキモい!みんな死ねばいいのに!」
冷静さを失ったマコトが闇雲に引き金に手を掛ける。
あああああああああ!!!という声にならない絶叫が木魂する。
数発の球が発射された音がした。
「おい!やめろ!」
少年の怒号が響くと同時にぎゃっという小さな鳴き声が聞こえた。
マコトが何かを投げた草むらには複数匹の猫が群がっていた。
中身が飛び散った猫用缶詰のラベルが暗がりでチラリと見えた。
瞬間、少年の左脚がマコトの右手を蹴り上げ銀色のコルトパイソンは宙を舞っていた。
そのモーションのまま少年の頭突きがマコトの顔正面にヒットし仰け反ったその身体に渾身の右ストレートがノータイムで叩き込まれた。
マコトの華奢な身体は比喩表現ではなく確実に3メートル程吹っ飛んだ。
「……てめえ…!!」
少年は吹き飛んだマコトの胸ぐらを掴み額と額がぶつかる距離に顔を近づけて睨みつける。
「……ヤるなら相手になってやんぜ?拳銃でも短刀でも持ってこいや?」
いつもと違う低い声。
マコトが初めて知る少年の表情と声だった。
「……テメェがオモチャで遊んでる間よ、こっちはバイトで鍛えてたンだよ。女みてぇなヒョロガリのテメェがいくら得物持ってこようが痛くも痒くも無ェ。効かねェよ」
マコトが学校や友人や概史から逃げ、違法改造のガスガンを手に入れて強くなったような気でいる間に少年はフーミンのツテでバイトのシフトを増やしていた。
生活費はいくら働いても足りなかった。引っ越し屋の助手。中学生なので主戦力では無いにせよ、夏日の午後にはかなり堪えるバイトだった。元々のフィジカルとメンタルで二人の間には圧倒的な格差があった。
少年が掴んだ胸ぐらを更に引っ張る。
「オラ、立てよ。気が済むまで付き合ってやんぜ!?」
実際、少年はマコトが刃物や別のガスガンを持っている事も想定していた。
全力でやり合えば双方ともに骨の一本や二本、或いは三本ほど折れる事もその瞬間に覚悟していた。
それでも構わなかった。むしろそうなる事を無意識のうちに望んでいた。
マコトは黙ったままピクリとも動かない。
「……俺らンとこに顔出さねェ間、ずっとこうして猫を撃ってたンかよ!?」
少年が語気を荒げ目を見開く。
「弱いものイジメとか一番やっちゃいけねぇ事だろうがよ!?マコト!?」
少年は胸ぐらを掴んだ右手を離し、マコトの身体は地面に叩きつけられる。
「……オラ!黙ってねぇでなんか言えよコラァ!??」
少年が再度マコトを殴ろうとした瞬間、その動きを止めた。
「……ぅ、うううう……」
小さな嗚咽を漏らし、マコトは静かに泣いていた。
二人は微動だにしないが別の気配はその数を増やしていた。
「なんで自分ばっかりって思うンだよ!お前だって……!」
少年の言葉を遮りマコトが激昂する。
「……ウザいんだけど!みんなウザいしキモい!みんな死ねばいいのに!」
冷静さを失ったマコトが闇雲に引き金に手を掛ける。
あああああああああ!!!という声にならない絶叫が木魂する。
数発の球が発射された音がした。
「おい!やめろ!」
少年の怒号が響くと同時にぎゃっという小さな鳴き声が聞こえた。
マコトが何かを投げた草むらには複数匹の猫が群がっていた。
中身が飛び散った猫用缶詰のラベルが暗がりでチラリと見えた。
瞬間、少年の左脚がマコトの右手を蹴り上げ銀色のコルトパイソンは宙を舞っていた。
そのモーションのまま少年の頭突きがマコトの顔正面にヒットし仰け反ったその身体に渾身の右ストレートがノータイムで叩き込まれた。
マコトの華奢な身体は比喩表現ではなく確実に3メートル程吹っ飛んだ。
「……てめえ…!!」
少年は吹き飛んだマコトの胸ぐらを掴み額と額がぶつかる距離に顔を近づけて睨みつける。
「……ヤるなら相手になってやんぜ?拳銃でも短刀でも持ってこいや?」
いつもと違う低い声。
マコトが初めて知る少年の表情と声だった。
「……テメェがオモチャで遊んでる間よ、こっちはバイトで鍛えてたンだよ。女みてぇなヒョロガリのテメェがいくら得物持ってこようが痛くも痒くも無ェ。効かねェよ」
マコトが学校や友人や概史から逃げ、違法改造のガスガンを手に入れて強くなったような気でいる間に少年はフーミンのツテでバイトのシフトを増やしていた。
生活費はいくら働いても足りなかった。引っ越し屋の助手。中学生なので主戦力では無いにせよ、夏日の午後にはかなり堪えるバイトだった。元々のフィジカルとメンタルで二人の間には圧倒的な格差があった。
少年が掴んだ胸ぐらを更に引っ張る。
「オラ、立てよ。気が済むまで付き合ってやんぜ!?」
実際、少年はマコトが刃物や別のガスガンを持っている事も想定していた。
全力でやり合えば双方ともに骨の一本や二本、或いは三本ほど折れる事もその瞬間に覚悟していた。
それでも構わなかった。むしろそうなる事を無意識のうちに望んでいた。
マコトは黙ったままピクリとも動かない。
「……俺らンとこに顔出さねェ間、ずっとこうして猫を撃ってたンかよ!?」
少年が語気を荒げ目を見開く。
「弱いものイジメとか一番やっちゃいけねぇ事だろうがよ!?マコト!?」
少年は胸ぐらを掴んだ右手を離し、マコトの身体は地面に叩きつけられる。
「……オラ!黙ってねぇでなんか言えよコラァ!??」
少年が再度マコトを殴ろうとした瞬間、その動きを止めた。
「……ぅ、うううう……」
小さな嗚咽を漏らし、マコトは静かに泣いていた。
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