[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

SPD

文字の大きさ
上 下
25 / 1,060
ep.0

ep0. 「真夏の夜の爪」 ㉕猫とコルトパイソン

しおりを挟む
暫く沈黙が流れる。

二人は微動だにしないが別の気配はその数を増やしていた。

「なんで自分ばっかりって思うンだよ!お前だって……!」

少年の言葉を遮りマコトが激昂する。

「……ウザいんだけど!みんなウザいしキモい!みんな死ねばいいのに!」

冷静さを失ったマコトが闇雲に引き金に手を掛ける。

あああああああああ!!!という声にならない絶叫が木魂する。

数発の球が発射された音がした。

「おい!やめろ!」

少年の怒号が響くと同時にぎゃっという小さな鳴き声が聞こえた。

マコトが何かを投げた草むらには複数匹の猫が群がっていた。

中身が飛び散った猫用缶詰のラベルが暗がりでチラリと見えた。

 瞬間、少年の左脚がマコトの右手を蹴り上げ銀色のコルトパイソンは宙を舞っていた。

そのモーションのまま少年の頭突きがマコトの顔正面にヒットし仰け反ったその身体に渾身の右ストレートがノータイムで叩き込まれた。

マコトの華奢な身体は比喩表現ではなく確実に3メートル程吹っ飛んだ。

「……てめえ…!!」

少年は吹き飛んだマコトの胸ぐらを掴み額と額がぶつかる距離に顔を近づけて睨みつける。

「……ヤるなら相手になってやんぜ?拳銃チャカでも短刀ドスでも持ってこいや?」

いつもと違う低い声。

マコトが初めて知る少年の表情と声だった。

「……テメェがオモチャで遊んでる間よ、こっちはバイトで鍛えてたンだよ。女みてぇなヒョロガリのテメェがいくら得物持ってこようが痛くも痒くも無ェ。効かねェよ」

マコトが学校や友人や概史から逃げ、違法改造のガスガンを手に入れて強くなったような気でいる間に少年はフーミンのツテでバイトのシフトを増やしていた。

生活費はいくら働いても足りなかった。引っ越し屋の助手。中学生なので主戦力では無いにせよ、夏日の午後にはかなり堪えるバイトだった。元々のフィジカルとメンタルで二人の間には圧倒的な格差があった。

少年が掴んだ胸ぐらを更に引っ張る。

「オラ、立てよ。気が済むまで付き合ってやんぜ!?」

実際、少年はマコトが刃物や別のガスガンを持っている事も想定していた。

全力でやり合えば双方ともに骨の一本や二本、或いは三本ほど折れる事もその瞬間に覚悟していた。

それでも構わなかった。むしろそうなる事を無意識のうちに望んでいた。

マコトは黙ったままピクリとも動かない。

「……俺らンとこに顔出さねェ間、ずっとこうして猫を撃ってたンかよ!?」

少年が語気を荒げ目を見開く。

「弱いものイジメとか一番やっちゃいけねぇ事だろうがよ!?マコト!?」

少年は胸ぐらを掴んだ右手を離し、マコトの身体は地面に叩きつけられる。

「……オラ!黙ってねぇでなんか言えよコラァ!??」

少年が再度マコトを殴ろうとした瞬間、その動きを止めた。

「……ぅ、うううう……」



 小さな嗚咽を漏らし、マコトは静かに泣いていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

処理中です...