上 下
18 / 1,059
ep.0

ep0. 「真夏の夜の爪」 ⑱少年の神は彼を救う

しおりを挟む
「そういやキュウソネコカミの“ビビった”のPVの一つめの硬派なロックバンドってミッシェルリスペクトっスかね?持ってるのが赤いタンバリンなのはブランキージェットシティへのオマージュっぽい気がするし」

だよな!と少年が更に勢いを増す。

「イントロの歌い出しの前にチバさんが“っしゃあああああああ!”みてぇに気合い入れてんのマジかっけーし!チバさんマジ神だし!」

「神っス!」

「Mステを救った英雄だよな!マジかっけぇ!チバさんみてぇになりてぇ!」

「英雄っス!」

「タトゥー!てめえら最大の功績は最後まで楽屋から出なかったことだ!!!」

「日本の音楽史に残るナイスバックレっスね!」

「ありがとうタトゥー!」

「ありがとうタトゥー!」

「タモさんの髪フッサフサじゃねーか!」

「タモさんの髪フッサフサ!!」

"っしゃああああああ!!!”興奮を抑えきれない少年が雄叫びを上げる。

概史も合わせてチバユウスケのタンバリンの動きを真似る。

二人が大声で騒ぎ始めて収拾が付かなくなったので不機嫌さが上限に達したマコトが音を立ててテーブルの椅子を蹴り上げる。

「は?マジ意味わかんないんだけど?うっざ、何それ?知らんし」

少年と概史が動きを止めてマコトを見る。

黒いパーカーのフードから見える不機嫌そうなマコトの眼が苛立ちを隠さずにいた。

は?ミッシェルだが?と少年はマコトを睨みつける。

 あの、ミッシェルガンエレファントっスよ。マコト先輩はこっち系聴かないんっスか?と概史がフォローを入れる。

「は?知らないし。聞いたことないしそんなアーティスト」

「……あ?」

「は?タンバリンとかだっさ」

不機嫌さを全く隠さないマコトが吐き捨てる。

「あぁ!?もう一回言ってみろよこの野郎!?」

少年が立ち上がりパイプ椅子を蹴り倒す。

「ミッシェル侮辱する奴ァテメーでも許せねぇからな?」

普段滅多にキレない少年が珍しくマコトに突っかかる。

「テメーあの世でアベさんに詫びろ!」

マコトの胸元のパーカーを少年が掴む。

「……は?きっしょ。意味わかんないし」

待ってください!ガックン先輩!マコト先輩!と慌てて概史が二人の間に割って入る。

「えっとあの、ガックン先輩はミッシェルをホントにリスペクトしてるんスよ!部屋にミッシェルのポスター貼って朝晩挨拶してしょっちゅう話しかけてるくらいにはガチ勢なんで!神なんで!ほら、マコト先輩にもそういうガチで尊敬するアーティストっているんじゃないんスか?」




概史は注意を逸らすようにマコトに話題を振り発言を引き出そうとする。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【書籍化進行中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,065pt お気に入り:429

図書室の名前

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

下級巫女、行き遅れたら能力上がって聖女並みになりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,243pt お気に入り:5,693

だって愛してませんもの!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:362pt お気に入り:3,086

100のキスをあなたに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,349pt お気に入り:69

キスから始まる恋心

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:3

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1

容疑者たち

ミステリー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:0

巻き込まれたんだけど、お呼びでない?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:1,985

英雄一家の〝出涸らし〟魔技師は、今日も無自覚に奇跡を創る。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:597

処理中です...