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ep0. 「真夏の夜の爪」 ⑭少年少女の生存戦略
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おいおいおい、今日は随分おしゃべりだな。お前糖分取ったら頭が回転すんのか?ブドウ糖は脳のエネルギー源とか言うもんな。
今まで食事制限されてて本来の力が発揮出来ないでいただけなのか?この状態が本来のお前なの?戦闘民族なの?おれは神龍じゃねぇしその願いは叶えられねぇよと概史は食い下がる。
テーブルの上にはチョコパイの空袋が二つある。概史が俺の分も食っとけと撫子に寄越したものだった。
叔母さんはセックスが怖いの。
世界もセックスも怖くて憎んでる。
自分は出来ないって知ってるから。
それを認めるのが怖くて責任転嫁して男を憎んでる。
男に選ばれてセックス出来る女も憎んでる。
結局、男も女も世界も全部憎いのが今の叔母さんなの。
だから、叔母さんに勝つにはその世界ごと私が体内に取り込めばいい。
私がその毒を先に体に取り込んで自分のものにする。
大人の人が何か重大な決意をするときにピアスを開けたりタトゥを入れたりするでしょう?
外国のどこかの部族の人が成人の儀式でバンジージャンプしたりするでしょう?
これは大人になる儀式でしかないの。他に意味なんかない。ただそれだけ。
撫子の叔母は生まれてこの方一度も働いたことが無かった。
友達や彼氏もおらず高齢の親に甘やかされ高校卒業後はずっと実家でゲームをしアニメを見てネットで男叩きをして憂さ晴らしして過ごしていた。
金と若さと時間を浪費だけして今まで生きてきたのだった。
だからセックスしたいって?概史は困惑した。
突然に上がった撫子の現状への解像度。
スカウターでも付けたのか?毒を持って毒を制す?暴を以て暴に易う?血清療法?蠱毒?敵の弱点を自分の体内に取り込む?そのいずれかでもありそうでいずれでもないような概念。
今までこんな事は聞いたことがない。こいつは何を言っている?何の覚悟を決めた?何をするつもりだ?そのロジックは解らないでもない。だが。
おい待てよ、と概史は撫子を制した。
おれの気持ちはどうなる?そもそもセックスは付き合ってるカップルがするもんじゃないのか。
工程すっ飛ばしてセックスしろって言うのか?こういうのって女は大事にしたいんじゃないのか?
おれだってそうだ。おれにだってちゃんと付き合って好きな女とセックスする権利があるだろう、と自らの正当性を主張した。
おれはおれをもう少し大事にしたい。だからお前もお前を大事にしとけ。
二人ともさっきからセックスセックス言いすぎてセックスがゲシュタルト崩壊しそうだった。
わかった、じゃあこうしよう、と撫子はテーブルの上のゲーセンのメダルを拾い上げた。
「コインの裏か表で決めよう」
え、ちょっと待って、話聞いてた?おれは嫌なんだけど、おれはメリットなくない?と概史は必死に抵抗する。
撫子が無言でメダルを概史に投げて寄越す。
え、待って待っていきなり!?え!?と、概史は慌てて投げられたメダルをキャッチする。
開けてみて、と撫子は言う。
いやいやいや、ちょっと待てよ、どっちがどうとか決めてねえだろ?と言いながら概史はメダルを握った掌をそっと開く。
メダルにあったのは”SEGA“の刻印だった。
決まりね、と撫子が呟く。
待て待て待て、勝手に決めるな、それにこれ……と概史はメダルを裏返す。
裏面にあったのは同じく”SEGA“の刻印である。
ふざけんな、これどっち転んでも同じじゃねーか、と概史はテーブルにメダルを叩きつける。
流川君は私のことは別に好きじゃないだろうから嫌なのは仕方ないと思うけど、と撫子は呟く。
いや、そういう訳じゃ、と概史は否定する。
おれはさっきのお前カッコいいと思ったぜ。
世界をぶっ壊したいとか最高にロックじゃん。そういう勢い嫌いじゃないし、そんなこと考えてる女子ってどこにもいねぇよと概史は白状する。
「じゃあ改めてお願いしたい。私と一緒に世界と戦って欲しい。相棒や戦友として」
瞬間、撫子の視線が概史の心臓を射抜いたかのように思えた。
相棒。戦友。一緒に戦う。世界と。小6男子の好きなワードの羅列。ああ、と無意識に頷く概史。
多分さっき完全にイカれてしまった。刺されたのは多分心臓、致命傷だ。少し俯いて考えて頭を掻き、ゲーセンのメダルをポケットにしまいコンドームをテーブルに叩きつける。
「お前のワードセンス、ズルいわ」
小学6年、男子と女子。目に映る世界はどっちにでも転ぶように思えた。
その日、こうして二人は協定を結んだ。
今まで食事制限されてて本来の力が発揮出来ないでいただけなのか?この状態が本来のお前なの?戦闘民族なの?おれは神龍じゃねぇしその願いは叶えられねぇよと概史は食い下がる。
テーブルの上にはチョコパイの空袋が二つある。概史が俺の分も食っとけと撫子に寄越したものだった。
叔母さんはセックスが怖いの。
世界もセックスも怖くて憎んでる。
自分は出来ないって知ってるから。
それを認めるのが怖くて責任転嫁して男を憎んでる。
男に選ばれてセックス出来る女も憎んでる。
結局、男も女も世界も全部憎いのが今の叔母さんなの。
だから、叔母さんに勝つにはその世界ごと私が体内に取り込めばいい。
私がその毒を先に体に取り込んで自分のものにする。
大人の人が何か重大な決意をするときにピアスを開けたりタトゥを入れたりするでしょう?
外国のどこかの部族の人が成人の儀式でバンジージャンプしたりするでしょう?
これは大人になる儀式でしかないの。他に意味なんかない。ただそれだけ。
撫子の叔母は生まれてこの方一度も働いたことが無かった。
友達や彼氏もおらず高齢の親に甘やかされ高校卒業後はずっと実家でゲームをしアニメを見てネットで男叩きをして憂さ晴らしして過ごしていた。
金と若さと時間を浪費だけして今まで生きてきたのだった。
だからセックスしたいって?概史は困惑した。
突然に上がった撫子の現状への解像度。
スカウターでも付けたのか?毒を持って毒を制す?暴を以て暴に易う?血清療法?蠱毒?敵の弱点を自分の体内に取り込む?そのいずれかでもありそうでいずれでもないような概念。
今までこんな事は聞いたことがない。こいつは何を言っている?何の覚悟を決めた?何をするつもりだ?そのロジックは解らないでもない。だが。
おい待てよ、と概史は撫子を制した。
おれの気持ちはどうなる?そもそもセックスは付き合ってるカップルがするもんじゃないのか。
工程すっ飛ばしてセックスしろって言うのか?こういうのって女は大事にしたいんじゃないのか?
おれだってそうだ。おれにだってちゃんと付き合って好きな女とセックスする権利があるだろう、と自らの正当性を主張した。
おれはおれをもう少し大事にしたい。だからお前もお前を大事にしとけ。
二人ともさっきからセックスセックス言いすぎてセックスがゲシュタルト崩壊しそうだった。
わかった、じゃあこうしよう、と撫子はテーブルの上のゲーセンのメダルを拾い上げた。
「コインの裏か表で決めよう」
え、ちょっと待って、話聞いてた?おれは嫌なんだけど、おれはメリットなくない?と概史は必死に抵抗する。
撫子が無言でメダルを概史に投げて寄越す。
え、待って待っていきなり!?え!?と、概史は慌てて投げられたメダルをキャッチする。
開けてみて、と撫子は言う。
いやいやいや、ちょっと待てよ、どっちがどうとか決めてねえだろ?と言いながら概史はメダルを握った掌をそっと開く。
メダルにあったのは”SEGA“の刻印だった。
決まりね、と撫子が呟く。
待て待て待て、勝手に決めるな、それにこれ……と概史はメダルを裏返す。
裏面にあったのは同じく”SEGA“の刻印である。
ふざけんな、これどっち転んでも同じじゃねーか、と概史はテーブルにメダルを叩きつける。
流川君は私のことは別に好きじゃないだろうから嫌なのは仕方ないと思うけど、と撫子は呟く。
いや、そういう訳じゃ、と概史は否定する。
おれはさっきのお前カッコいいと思ったぜ。
世界をぶっ壊したいとか最高にロックじゃん。そういう勢い嫌いじゃないし、そんなこと考えてる女子ってどこにもいねぇよと概史は白状する。
「じゃあ改めてお願いしたい。私と一緒に世界と戦って欲しい。相棒や戦友として」
瞬間、撫子の視線が概史の心臓を射抜いたかのように思えた。
相棒。戦友。一緒に戦う。世界と。小6男子の好きなワードの羅列。ああ、と無意識に頷く概史。
多分さっき完全にイカれてしまった。刺されたのは多分心臓、致命傷だ。少し俯いて考えて頭を掻き、ゲーセンのメダルをポケットにしまいコンドームをテーブルに叩きつける。
「お前のワードセンス、ズルいわ」
小学6年、男子と女子。目に映る世界はどっちにでも転ぶように思えた。
その日、こうして二人は協定を結んだ。
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