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第2章 地球活動編
第151話 二王との会談(1) 二節 聖者襲撃編
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明神高校から下校し、屋敷へ行くと思金神が玄関口で頭を下げて来る。この仰々しい姿は、アルスと引き会わせられた時以来だ。その理由も、屋敷のリビングで待つ面子から直ぐに予想はついた。
清十狼さん、イジドアさんに、ゲオルクさん、ブラドさん、そして黒髪の美しい女性が席につき、お茶を飲んでいた。
僕が姿を見せると、弾かれたようにセミロングの黒髪の女性が立ち上がる。その顔はお面のように固くなっていた。
「マスター、お初にお目にかかります。私は――」
散々ニュースで目にした人物だ。無論知っている。
「ルイズ・ヴァンピールさんですね? 僕は《妖精の森》のギルドマスター楠恭弥、宜しく」
「は、はひ。宜しくお願いしましゅ」
極度の緊張故か、舌を噛むルイズさん。
他のメンバーも立ち上がると僕に一礼してくる。
「この面子、今から会談?」
思金神に視線だけを向けると、ニィと白い歯を見せる。相変わらず、凶悪な顔だ。幼い児童が見たらトラウマになって、当分夜一人でトイレに起きれなくなることだろう。
「イエス、ご案内いたします」
思金神がパチンと指を鳴らすと、場所は一瞬で白兎の操作室へ移動する。
向かう場所は予想通りだった。即ち――。
「南アメリカ――ブラジル・インバゾーン。
目的地――鮮血姫の都市――首都《ブロードシティ》上空。
発進!」
吸血種と思しき職員の妙に気合の入った掛け声で白兎は発進する。
白兎が止まる。画面一杯に広大な街並みが広がっていた。その街並みの特徴を一言で表現すれば――。
(赤っ!)
全てが赤かった。レンガ造りの古風の建物から、橋や道路のガードレール、植木、街中の噴水の水の色までご丁寧に紅に染まっていた。
赤好きは国民の趣味なのだろうか? だとすると、あまり良い趣味だとは言えない。特にあの噴水の水、血にしか見えないし。少なくとも、僕には理解不可能だ。
それとなくこの場にいる吸血種の中で最も常識がありそうなルイズさんに、僕の率直な感想を述べると、複雑な顔をしつつも僕に同意していた。どうやら、吸血種全てに共通の感覚というわけでもなさそうである。
今日は訪問であり、闇帝国のときのように攻め入るわけではない。甲板から飛び降りるのは体裁が悪すぎる。それにまだルイズさんは少し強い人間にすぎず、危険極まりない。
そこで久々に白兎に搭載されているボーディング・ブリッジから降りる事にした。
自動エスカレーターで降りる際に、高所恐怖症なせいか、ルイズさんがブラドさんの服の袖を握っていた。その姿が仲の良い姉妹のようで、思わず笑みを浮かべていると――。
(マスター、ルイズちゃんとブラド、すっかり仲良くなったみたいだぜ)
清十狼さんからの有り難い報告に頷きつつも、地上へ降り立つ。
僕らを出迎える二柱の人物に視線を向ける。
一柱は真っ赤なゴスロリの衣装を着た紅の瞳の少女。透き通るような白い肌に、血の様に赤い長い髪、頭には赤いリボンがちょこんとのっている。アリスや沙耶、蛍と同年齢くらいの外見と言えばよいだろうか。もっとも、実際は遥かに僕より年上だろうが。
もう一柱が白色のスーツを着た紫色の髪の初老の男性。イジドアさんと、ゲオルクさんを視界に入れて若干眉がピクリと動いたことからも、知り合いなのかもしれない。
「《妖精の森》のギルドマスター、キョウヤ・クスノキです。どうぞよろしく」
僕が右手を差し出すが二柱とも俯くのみ。特に赤色ゴスロリ娘に関しては全身小刻みに震えている
困惑していると、白色スーツの男が頭を下げつつも、僕にまるで進言するかのように言葉を発する。
「恐れながら、手を交わすのは対等な者同士が為すべきもの。我らは貴方にお願いする身、その手を取るわけには参りませぬ」
(ああ、そういうことか)
この白服の柱は勘違いしている。僕が欲しいのは、配下でもなければ部下でもない。僕が欲しいのは――。
「よろしく」
二人に手を伸ばしその手を握る。赤色ゴスロリ娘が軽い悲鳴を上げ、白色スーツの男はようやく顔を上げる。その顔は喜色に溢れていた。
(この人、僕がこうすること知ってた?)
白色スーツの男は、僕から離れると右手を胸に当て頭を下げて来る。慌てふためき僕から飛びのき赤色ゴスロリ娘も、震える手でフリルの付いた長い真っ赤なスカートの端を持ち、お辞儀をしてくる。
「申し遅れました。私が死国の王――ウピル・ローズ、このちっこいのが、鮮血姫の都市の女王――カーミュラ・ピーニャ。
御見知り置きを」
「こちらこそ」
どうも、話がすんなりいきすぎているように思える。これなら多忙な思金神が態々ついてくる理由にはならない。それにルイズさん達の存在も必ずしも必要とまでは言えまい。
ウピルさんに促されカーミュラさんが僕らを先導する。
……………………
明日も投稿します。
清十狼さん、イジドアさんに、ゲオルクさん、ブラドさん、そして黒髪の美しい女性が席につき、お茶を飲んでいた。
僕が姿を見せると、弾かれたようにセミロングの黒髪の女性が立ち上がる。その顔はお面のように固くなっていた。
「マスター、お初にお目にかかります。私は――」
散々ニュースで目にした人物だ。無論知っている。
「ルイズ・ヴァンピールさんですね? 僕は《妖精の森》のギルドマスター楠恭弥、宜しく」
「は、はひ。宜しくお願いしましゅ」
極度の緊張故か、舌を噛むルイズさん。
他のメンバーも立ち上がると僕に一礼してくる。
「この面子、今から会談?」
思金神に視線だけを向けると、ニィと白い歯を見せる。相変わらず、凶悪な顔だ。幼い児童が見たらトラウマになって、当分夜一人でトイレに起きれなくなることだろう。
「イエス、ご案内いたします」
思金神がパチンと指を鳴らすと、場所は一瞬で白兎の操作室へ移動する。
向かう場所は予想通りだった。即ち――。
「南アメリカ――ブラジル・インバゾーン。
目的地――鮮血姫の都市――首都《ブロードシティ》上空。
発進!」
吸血種と思しき職員の妙に気合の入った掛け声で白兎は発進する。
白兎が止まる。画面一杯に広大な街並みが広がっていた。その街並みの特徴を一言で表現すれば――。
(赤っ!)
全てが赤かった。レンガ造りの古風の建物から、橋や道路のガードレール、植木、街中の噴水の水の色までご丁寧に紅に染まっていた。
赤好きは国民の趣味なのだろうか? だとすると、あまり良い趣味だとは言えない。特にあの噴水の水、血にしか見えないし。少なくとも、僕には理解不可能だ。
それとなくこの場にいる吸血種の中で最も常識がありそうなルイズさんに、僕の率直な感想を述べると、複雑な顔をしつつも僕に同意していた。どうやら、吸血種全てに共通の感覚というわけでもなさそうである。
今日は訪問であり、闇帝国のときのように攻め入るわけではない。甲板から飛び降りるのは体裁が悪すぎる。それにまだルイズさんは少し強い人間にすぎず、危険極まりない。
そこで久々に白兎に搭載されているボーディング・ブリッジから降りる事にした。
自動エスカレーターで降りる際に、高所恐怖症なせいか、ルイズさんがブラドさんの服の袖を握っていた。その姿が仲の良い姉妹のようで、思わず笑みを浮かべていると――。
(マスター、ルイズちゃんとブラド、すっかり仲良くなったみたいだぜ)
清十狼さんからの有り難い報告に頷きつつも、地上へ降り立つ。
僕らを出迎える二柱の人物に視線を向ける。
一柱は真っ赤なゴスロリの衣装を着た紅の瞳の少女。透き通るような白い肌に、血の様に赤い長い髪、頭には赤いリボンがちょこんとのっている。アリスや沙耶、蛍と同年齢くらいの外見と言えばよいだろうか。もっとも、実際は遥かに僕より年上だろうが。
もう一柱が白色のスーツを着た紫色の髪の初老の男性。イジドアさんと、ゲオルクさんを視界に入れて若干眉がピクリと動いたことからも、知り合いなのかもしれない。
「《妖精の森》のギルドマスター、キョウヤ・クスノキです。どうぞよろしく」
僕が右手を差し出すが二柱とも俯くのみ。特に赤色ゴスロリ娘に関しては全身小刻みに震えている
困惑していると、白色スーツの男が頭を下げつつも、僕にまるで進言するかのように言葉を発する。
「恐れながら、手を交わすのは対等な者同士が為すべきもの。我らは貴方にお願いする身、その手を取るわけには参りませぬ」
(ああ、そういうことか)
この白服の柱は勘違いしている。僕が欲しいのは、配下でもなければ部下でもない。僕が欲しいのは――。
「よろしく」
二人に手を伸ばしその手を握る。赤色ゴスロリ娘が軽い悲鳴を上げ、白色スーツの男はようやく顔を上げる。その顔は喜色に溢れていた。
(この人、僕がこうすること知ってた?)
白色スーツの男は、僕から離れると右手を胸に当て頭を下げて来る。慌てふためき僕から飛びのき赤色ゴスロリ娘も、震える手でフリルの付いた長い真っ赤なスカートの端を持ち、お辞儀をしてくる。
「申し遅れました。私が死国の王――ウピル・ローズ、このちっこいのが、鮮血姫の都市の女王――カーミュラ・ピーニャ。
御見知り置きを」
「こちらこそ」
どうも、話がすんなりいきすぎているように思える。これなら多忙な思金神が態々ついてくる理由にはならない。それにルイズさん達の存在も必ずしも必要とまでは言えまい。
ウピルさんに促されカーミュラさんが僕らを先導する。
……………………
明日も投稿します。
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