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第2章 地球活動編
第149話 学年別統一実技補充試験(2) 二節 聖者襲撃編
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僕の計画を進めるためにも、予選の突破は必須だ。
僕の《鳳凱祭》出場は学校側が決定した事項であり、たとえ全学年統一実技試験を欠席しても、代表選手から外されることはない。もっとも、そうなれば後々確実に因縁をつけられる。元々、全学年統一実技試験ではそれなりの成績を収めるつもりだった。だからやることは当初の計画とあまり変わらない。
まずは《魔撃》からだ。
(にしたって……)
どう考えても気合入り過ぎだ。生徒達の目つきが先ほどとはまるで違う。というか怖すぎる。
『時雨先生、絶対僕が貴方を……』などとキモ台詞を恍惚の表情で繰り返すイケメン男子生徒。
『お姉さまとキス、お姉さまとキス』と呪詛のように呟き、薄気味悪い顔で笑いながら、心象世界で夢想する一部(と信じたい)の女子生徒達。
そんなこんなで、周囲はおそらく明神高校創設以来の混沌の場と化していた。
さて、肝心の予選の方だ。
まずは魔弾を全力で測定器の的に当てると、その魔力の強さが数値としてモニターに算出される。最高が1000。
ちなみにこの魔力測定器は魔術審議会が国連と共同開発したものであり、全世界で共通の基準を用いている。
もっとも、基準には学生用、一般用の二種類があり、学生用の測定最高値は低く設定されているが、その分より微細な数値まで図ることができる仕様になっている。
《鳳凱祭》も審議会指定の学生用の機種の測定器が用いられており、ほぼ、《鳳凱祭》での自身の《魔撃》の数値を再現することができる。
今、選手たちは色とりどりの魔弾を的にぶつけている。
九割終わったところで結果は次のようになった。
最高得点がセリアさんの890で断トツの一位だ。
次が瑠璃の700で、二位。
藤丸が、380。纏が310。月彦が400。
小栗行兵が100。
他の生徒は、20~30。
ここまでみれば、僕にも大体基準がつかめて来た。最高得点が僕らの基準での魔力一万。その魔力を十分の一した数。若干のずれではあるが、大まかにはこう理解してよいと思われる。
たった今、壬と真白が終了したところだ。壬は290。真白は270だった。二人とも迷宮攻略は今日からであり、まだ壬がレベル59、真白が57だ。無理もない事と言える。
そのはずなのだが、二人に昨日僕の現状を簡単に説明し協力を願ったせいか、やけにやる気になっており、無念が顔に滲み出ていた。
《超越進化》の《全能力値2.5倍》があれば結果はかなり変わっていたのであるが、生憎《終焉進化》により、《全能力値2.5倍》は消失している。《終焉進化》が退化したというよりは、まだレベルが低いだけだと思われる。仮に、《全能力値2.5倍》が失われても、所詮レベル400に相当する能力値以上上昇しない初心者向けの欠陥能力だ。そこまでマイナスにはならない。
ようやく僕の番だ。アリーナの所定の位置につく。
円柱状の円武台の端にはパンチングマシーンの的を巨大化したような機械がデンと設置されている。丁度機械の真上に天上から吊るされる電光掲示板。
《魔撃》の僕の立ち位置は丁度機械の対面に位置する円武台の端。
その円武台の端にある天井まで伸びる円柱状の青色の被膜。その青色被膜のサークル内に入ると若干の浮遊感を覚える。このサークル内では魔力等のステータスを増幅するスキル・魔術・魔術道具は全てその効力を失う。
打てるのは三発。無論的を外れれば零点となるが、あの巨大な的を外れるようなら論外もいいところだ。少なくとも戦闘では役に立たない。
右手の人差し指を突き出し、的に固定する。魔弾の放出場所は身体のどこからでも可能だ。掌の者もいれば、拳の先からの者もいる。要は、個人の好みの問題だ。僕はいつもルインの先から打つせいか、このポーズが一番しっくりくる。
敵の京覇高校には怪物がいる。ならば手加減をし過ぎれば、それこそ、悪影響を与えかねない。世界序列1000位程度の魔力で撃つことにする。世界序列1000番が凡そレベル240~250。平均ステータスは5万。
今ならなぜ、世界序列1000番以内が他とは一線を画していると言われるのかが理解できる。高位人間、高位長耳族、高位吸血種のステータス限界は5万。つまり、5万の壁を超えるためには、高位人間や高位長耳族を越えて進化しなければならない。これは同化でもしなければ通常不可能な奇跡だ。
故に序列1000番以内はほとんどが同化者という現象が起きる。残りは僕や刈谷さんのような限界がそもそもない奇想天外面白人物しか残っちゃいない。
「お、おい、《空月》!」
壬の語勢を強めた言葉に思考の世界から強制帰還するが、僕の全身程に成長した魔弾が放たれた後だった。
巨大な赤黒色の魔弾は高速で爆走し、真っ赤な《魔撃》の的にぶち当たり、粉々の破片まで吹き飛ばす。
(流石に、いくら何でも貧弱過ぎないか?)
確かに考えに没頭し過ぎて制御に失敗してしまったが、今の僕の魔弾は精々魔力値7万程度。即ちレベル300程度の魔力に過ぎない。序列888の狂獣を屠ったのが京覇高校の怪物ならばこの程度は確実にやるはず。
(これ多分、測定機械自体変わるな……)
京覇高校でも今頃同様の状況に陥っているだろう。京都三家は嬉々として基準となる機械の変更を主張するだろう。その方がより大きな差がつくし、僕なら断然そうする。そして事情は僕がいる明神高校でも右に同じ。
「壊れ……た?」
静まり返った修練場に妙に裏返った声が反響する。
「あ、ありえねぇ~、どんだけだよ……」
「私、測定器が壊れるの初めて見た……」
「当たり前だ、《世界魔術大会》じゃねぇんだぞ!」
騒めきが騒めきを呼び、瞬く間の内に伝播していく。
イザナミにより、騒然とした場に静寂が訪れたのはそれから約五分後だった。
それからまさにテンプレのような展開になった。
《魔的》は一分間という制限時間内に数十メートル先の的に黒魔術レベル1の攻撃基礎魔術を着弾させる競技。
魔術の発動が最も早いセリアさんでも一分間に火球を40発が限度だった。
二位の瑠璃が37発。三位が壬と真白が30発。
他は、藤丸の28発、月彦と纏の26発。小栗行兵が10発。
それでは肝心の僕であるが、コンマ一秒で火球を数十発ぶちかましたので10秒ほどで機械自体が不具合を起し、エラーが表示されてしまう。というより、機械の的自体が焼け焦げてしまっていたのかもしれない。
お次の《魔演》はより高レベルでかつ難易度の高い魔術を発動できるのかを見る競技。
流石に、周囲の目がそろそろチクチク痛くなってきた。これ以上、悪目立ちしても意味はない。だから、レベル4の黒魔術――地獄の灼炎を発動したわけだが……。
地獄の灼炎と火球の性質の違いにもっと気を配るべきだった。火球は込めた魔力により大きくもなれば小さくもなる。ぶっちゃけ、今の僕なら豆粒上の大きさで、数値として1の魔力を籠めることも可能だ。
対して地獄の灼炎の範囲はどうやっても半径5メートルより低く抑えることはできず、魔力を籠める量にも一定の制限がある。その魔力量は凡そ、30%から100%の調節しかできない。この30%は9万の魔力だ。いわば、世界序列200番~300番台のフルパワー。それで地獄の灼炎をぶっぱなしたわけだから、さあ大変。空に生じた半径5メートルの巨大な黒色の太陽が落下し、一瞬で円武台は火の海となる。
僕が毎回、機械を破壊するというお茶目な行為を連発するせいか、巻き添えを恐れてだろう。生徒達は当然、イザナミを初めとする教師達も見学席へと退避していたことが幸いし、死傷者はでなかった。いくらこの修練所では死んでも復活できるとはいえ、無意味に命を奪う趣味は僕にはない。運がよかったと言えよう。
この地獄の灼炎の暴虐の力で円武台はすり鉢状に綺麗に蒸発してしまう。終始、悪質な笑みを絶やさなかったイザナミさえも頬を痙攣させていた。
《裁きの塔》や《海底都市》、先日の《雨女河村》でレベル600台や700台がポンポン出るので、かなり感覚が麻痺してしまっていたが、僕のステータスも存外危険極まりないのかもしれない。
このままでは基礎魔術でさえも危なくて到底使えない。今回のことで理論を単に頭で理解していることと実際がかなり乖離していることは身に染みて理解した。確かに僕にとって基礎魔術はフェイクに過ぎないが、地球で最も使用する魔術といっても過言ではない。今後、基礎魔術をより細かく研究していく必要があるのかもしれない。
イザナミ達教師陣は十数分間話し合っていたが、修練所が破損したため場所を第一修練所に変える。さらに現時点をもって《空月》の学年別選抜試験通過を宣言した。
おそらくだが僕がやらかした結果を目にして本日の学年別の選抜試験《魔闘》の倖月本家から派遣された魔術師が臆病風にでも吹かれたのだろう。今日は学年別の選抜試験。いくら僕がいるといっても、倖月家の主力戦力を送り込んでくることはあるまい。五千番以上一万番内がせいぜいだ。
それに《魔撃》、《魔的》、《魔演》の三種目ならいざ知らず、《魔闘》と《闘技実技》はガチバトルであり、僕がでる意義が極めて薄い。何せ以前一学年生は軒並み僕にのされているわけだし、僕が《闘技実技》でトップをとるのは確実。ならば、《魔撃》、《魔的》、《魔演》で満点(多分)、《闘技実技》で450点を採ると予想される僕は間違いなく10位以内に入る。なら、もはや僕を入れても生徒達からやる気を奪うだけで意味はない。そう判断したのだと思われる。
生徒達も、一人以外教師達の決定に異を唱えなかった。というより、早くいなくなって欲しいというのが本心だったらしく、学校側の決定を聞いた途端、歓声すら上がっていた。また前回のように時雨先生がバトルロイヤル法式を採用し、僕に殺されてはたまらない。そんな切実な気持ちだったのだろう。
この中で唯一烈火のごとく反対したのが小栗行兵だ。当然に教員、学生共に黙殺されたわけだが、どうも奴の空月への敵愾心は単に前回敗北したことにはないような気がする。
そんなこんなで僕は追い出されるかのように第二修練所を後にした。
…………………………………………
学年別の予選はこの程度にしました。ここで述べすぎると、くどくなるので、月曜日の全学年統一試験でがっちり書かせていただきます。
僕の《鳳凱祭》出場は学校側が決定した事項であり、たとえ全学年統一実技試験を欠席しても、代表選手から外されることはない。もっとも、そうなれば後々確実に因縁をつけられる。元々、全学年統一実技試験ではそれなりの成績を収めるつもりだった。だからやることは当初の計画とあまり変わらない。
まずは《魔撃》からだ。
(にしたって……)
どう考えても気合入り過ぎだ。生徒達の目つきが先ほどとはまるで違う。というか怖すぎる。
『時雨先生、絶対僕が貴方を……』などとキモ台詞を恍惚の表情で繰り返すイケメン男子生徒。
『お姉さまとキス、お姉さまとキス』と呪詛のように呟き、薄気味悪い顔で笑いながら、心象世界で夢想する一部(と信じたい)の女子生徒達。
そんなこんなで、周囲はおそらく明神高校創設以来の混沌の場と化していた。
さて、肝心の予選の方だ。
まずは魔弾を全力で測定器の的に当てると、その魔力の強さが数値としてモニターに算出される。最高が1000。
ちなみにこの魔力測定器は魔術審議会が国連と共同開発したものであり、全世界で共通の基準を用いている。
もっとも、基準には学生用、一般用の二種類があり、学生用の測定最高値は低く設定されているが、その分より微細な数値まで図ることができる仕様になっている。
《鳳凱祭》も審議会指定の学生用の機種の測定器が用いられており、ほぼ、《鳳凱祭》での自身の《魔撃》の数値を再現することができる。
今、選手たちは色とりどりの魔弾を的にぶつけている。
九割終わったところで結果は次のようになった。
最高得点がセリアさんの890で断トツの一位だ。
次が瑠璃の700で、二位。
藤丸が、380。纏が310。月彦が400。
小栗行兵が100。
他の生徒は、20~30。
ここまでみれば、僕にも大体基準がつかめて来た。最高得点が僕らの基準での魔力一万。その魔力を十分の一した数。若干のずれではあるが、大まかにはこう理解してよいと思われる。
たった今、壬と真白が終了したところだ。壬は290。真白は270だった。二人とも迷宮攻略は今日からであり、まだ壬がレベル59、真白が57だ。無理もない事と言える。
そのはずなのだが、二人に昨日僕の現状を簡単に説明し協力を願ったせいか、やけにやる気になっており、無念が顔に滲み出ていた。
《超越進化》の《全能力値2.5倍》があれば結果はかなり変わっていたのであるが、生憎《終焉進化》により、《全能力値2.5倍》は消失している。《終焉進化》が退化したというよりは、まだレベルが低いだけだと思われる。仮に、《全能力値2.5倍》が失われても、所詮レベル400に相当する能力値以上上昇しない初心者向けの欠陥能力だ。そこまでマイナスにはならない。
ようやく僕の番だ。アリーナの所定の位置につく。
円柱状の円武台の端にはパンチングマシーンの的を巨大化したような機械がデンと設置されている。丁度機械の真上に天上から吊るされる電光掲示板。
《魔撃》の僕の立ち位置は丁度機械の対面に位置する円武台の端。
その円武台の端にある天井まで伸びる円柱状の青色の被膜。その青色被膜のサークル内に入ると若干の浮遊感を覚える。このサークル内では魔力等のステータスを増幅するスキル・魔術・魔術道具は全てその効力を失う。
打てるのは三発。無論的を外れれば零点となるが、あの巨大な的を外れるようなら論外もいいところだ。少なくとも戦闘では役に立たない。
右手の人差し指を突き出し、的に固定する。魔弾の放出場所は身体のどこからでも可能だ。掌の者もいれば、拳の先からの者もいる。要は、個人の好みの問題だ。僕はいつもルインの先から打つせいか、このポーズが一番しっくりくる。
敵の京覇高校には怪物がいる。ならば手加減をし過ぎれば、それこそ、悪影響を与えかねない。世界序列1000位程度の魔力で撃つことにする。世界序列1000番が凡そレベル240~250。平均ステータスは5万。
今ならなぜ、世界序列1000番以内が他とは一線を画していると言われるのかが理解できる。高位人間、高位長耳族、高位吸血種のステータス限界は5万。つまり、5万の壁を超えるためには、高位人間や高位長耳族を越えて進化しなければならない。これは同化でもしなければ通常不可能な奇跡だ。
故に序列1000番以内はほとんどが同化者という現象が起きる。残りは僕や刈谷さんのような限界がそもそもない奇想天外面白人物しか残っちゃいない。
「お、おい、《空月》!」
壬の語勢を強めた言葉に思考の世界から強制帰還するが、僕の全身程に成長した魔弾が放たれた後だった。
巨大な赤黒色の魔弾は高速で爆走し、真っ赤な《魔撃》の的にぶち当たり、粉々の破片まで吹き飛ばす。
(流石に、いくら何でも貧弱過ぎないか?)
確かに考えに没頭し過ぎて制御に失敗してしまったが、今の僕の魔弾は精々魔力値7万程度。即ちレベル300程度の魔力に過ぎない。序列888の狂獣を屠ったのが京覇高校の怪物ならばこの程度は確実にやるはず。
(これ多分、測定機械自体変わるな……)
京覇高校でも今頃同様の状況に陥っているだろう。京都三家は嬉々として基準となる機械の変更を主張するだろう。その方がより大きな差がつくし、僕なら断然そうする。そして事情は僕がいる明神高校でも右に同じ。
「壊れ……た?」
静まり返った修練場に妙に裏返った声が反響する。
「あ、ありえねぇ~、どんだけだよ……」
「私、測定器が壊れるの初めて見た……」
「当たり前だ、《世界魔術大会》じゃねぇんだぞ!」
騒めきが騒めきを呼び、瞬く間の内に伝播していく。
イザナミにより、騒然とした場に静寂が訪れたのはそれから約五分後だった。
それからまさにテンプレのような展開になった。
《魔的》は一分間という制限時間内に数十メートル先の的に黒魔術レベル1の攻撃基礎魔術を着弾させる競技。
魔術の発動が最も早いセリアさんでも一分間に火球を40発が限度だった。
二位の瑠璃が37発。三位が壬と真白が30発。
他は、藤丸の28発、月彦と纏の26発。小栗行兵が10発。
それでは肝心の僕であるが、コンマ一秒で火球を数十発ぶちかましたので10秒ほどで機械自体が不具合を起し、エラーが表示されてしまう。というより、機械の的自体が焼け焦げてしまっていたのかもしれない。
お次の《魔演》はより高レベルでかつ難易度の高い魔術を発動できるのかを見る競技。
流石に、周囲の目がそろそろチクチク痛くなってきた。これ以上、悪目立ちしても意味はない。だから、レベル4の黒魔術――地獄の灼炎を発動したわけだが……。
地獄の灼炎と火球の性質の違いにもっと気を配るべきだった。火球は込めた魔力により大きくもなれば小さくもなる。ぶっちゃけ、今の僕なら豆粒上の大きさで、数値として1の魔力を籠めることも可能だ。
対して地獄の灼炎の範囲はどうやっても半径5メートルより低く抑えることはできず、魔力を籠める量にも一定の制限がある。その魔力量は凡そ、30%から100%の調節しかできない。この30%は9万の魔力だ。いわば、世界序列200番~300番台のフルパワー。それで地獄の灼炎をぶっぱなしたわけだから、さあ大変。空に生じた半径5メートルの巨大な黒色の太陽が落下し、一瞬で円武台は火の海となる。
僕が毎回、機械を破壊するというお茶目な行為を連発するせいか、巻き添えを恐れてだろう。生徒達は当然、イザナミを初めとする教師達も見学席へと退避していたことが幸いし、死傷者はでなかった。いくらこの修練所では死んでも復活できるとはいえ、無意味に命を奪う趣味は僕にはない。運がよかったと言えよう。
この地獄の灼炎の暴虐の力で円武台はすり鉢状に綺麗に蒸発してしまう。終始、悪質な笑みを絶やさなかったイザナミさえも頬を痙攣させていた。
《裁きの塔》や《海底都市》、先日の《雨女河村》でレベル600台や700台がポンポン出るので、かなり感覚が麻痺してしまっていたが、僕のステータスも存外危険極まりないのかもしれない。
このままでは基礎魔術でさえも危なくて到底使えない。今回のことで理論を単に頭で理解していることと実際がかなり乖離していることは身に染みて理解した。確かに僕にとって基礎魔術はフェイクに過ぎないが、地球で最も使用する魔術といっても過言ではない。今後、基礎魔術をより細かく研究していく必要があるのかもしれない。
イザナミ達教師陣は十数分間話し合っていたが、修練所が破損したため場所を第一修練所に変える。さらに現時点をもって《空月》の学年別選抜試験通過を宣言した。
おそらくだが僕がやらかした結果を目にして本日の学年別の選抜試験《魔闘》の倖月本家から派遣された魔術師が臆病風にでも吹かれたのだろう。今日は学年別の選抜試験。いくら僕がいるといっても、倖月家の主力戦力を送り込んでくることはあるまい。五千番以上一万番内がせいぜいだ。
それに《魔撃》、《魔的》、《魔演》の三種目ならいざ知らず、《魔闘》と《闘技実技》はガチバトルであり、僕がでる意義が極めて薄い。何せ以前一学年生は軒並み僕にのされているわけだし、僕が《闘技実技》でトップをとるのは確実。ならば、《魔撃》、《魔的》、《魔演》で満点(多分)、《闘技実技》で450点を採ると予想される僕は間違いなく10位以内に入る。なら、もはや僕を入れても生徒達からやる気を奪うだけで意味はない。そう判断したのだと思われる。
生徒達も、一人以外教師達の決定に異を唱えなかった。というより、早くいなくなって欲しいというのが本心だったらしく、学校側の決定を聞いた途端、歓声すら上がっていた。また前回のように時雨先生がバトルロイヤル法式を採用し、僕に殺されてはたまらない。そんな切実な気持ちだったのだろう。
この中で唯一烈火のごとく反対したのが小栗行兵だ。当然に教員、学生共に黙殺されたわけだが、どうも奴の空月への敵愾心は単に前回敗北したことにはないような気がする。
そんなこんなで僕は追い出されるかのように第二修練所を後にした。
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