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第2章 地球活動編
第143話 ギルド臨時会議と事件の終息 二節 聖者襲撃編
しおりを挟む緊急幹部会議はギルドハウスの第一会議室で開かれた。
仕事で手を離せない人達以外はほぼ全幹部が集まってくれた。雨女河村からは大婆様、村長の盤井伍策さん、壬に真白だった。
最初に雨女河村の《妖精の森》への正式な編入の許諾とその移住をどうするかが議論された。
議論といってもギルドへの正式な編入につき問題なのは《妖精の森》の幹部達の許諾ではなく、雨女河村の村民の加入の意思にあった。この点は村長さんがギルドハウスに集められた全村民から同意書をもらい、それらが提出されることでクリアできた。そして幹部達の許諾をもって彼らは僕らの家族となった。
次がその移住の問題だ。
彼らは闇帝国の場合と異なり、地球で暮らしていく住居がある。しかし、考えにくいが和泉家が再度、攻め込んで来る可能性も零ではない。審議会の和泉家への圧力が完了するまで、異世界アリウスで生活してもらうことになった。
もっとも、今のギルドハウスの収容人数は500人。とても千人は住むことはできないい。ギルドメンバーのための新たな社宅等の生活場所である現在グラムで建造中の巨大建築物の完成ももう少しかかりそうらしくまだ住むことはできない。
そこで、新住居ができるまで、《三日月》の使用していない居住区の一角を無料で貸し出すことになった。
最後が彼らのギルド内で担う役割だ。
彼らは今まで村内で自給自足をしてきた。愛着のある仕事をギルドメンバーから奪う趣味は僕にはない。だから、村民達全員で今後のことを話し合うように求めて本会議は終了となった。
壬と真白は会議が終了するとすぐに僕の傍までやってくる。
「マスター、蛍は?」
よほど、心配なのだろう。顔中、焦燥一杯にして訪ねてくる。
ついさっき、思金神から蛍にかけられていた呪いの解呪と、治療が完了したとの報告を受けた。今は地球の屋敷でステラ達と夕食をとっている最中らしい。
「僕の手に触れて」
口で説明するより、現に引き会わせた方が早い。
壬と真白も【神帝の指輪】はまだ支給されていない。転移はできないのだ。
壬は即座に僕の右手を握ってくる。対して真白はなぜか顔を赤らめて戸惑っているのでその手を握り屋敷のリビングへ転移した。
リビングには沙耶、ステラ、アリス、そして信じられないほど美しい黒髪の少女が座り、ガールズトークに熱中していた。
天井からの蛍光灯の光に反射しキラキラと輝く腰まで届く長く艶やかな黒髪、大きくパッチリした瞳、全ての顔のパーツが完璧な位置で整っている奇跡の造形美。透き通るような白い肌に、豊満な胸部にくびれた細いウエスト、スレンダーな手足。全てが絶妙なバランスで成立していた。
あれは誰だろう。信じられないほど綺麗だが、よく見ると顔にまだ幼さが伺える。多分、沙耶やアリスと同じくらいの年だと思われる。
「「蛍!!」」
壬と真白は裏返った声を上げると黒髪の女性に近づき抱きしめる。
「……兄さん、真白お姉ちゃん」
抱きしめられた黒髪の女性は壬と真白を暫し見つめていた。ボソっと綺麗な清んだ声で呟くとその瞳からぽろぽろ涙がこぼれる。遂に幼児のように声を上げて泣き出してしまう。
(蛍?)
言われて見れば、蛍の面影がある。良かった。僕も沙耶という妹を持つ身だ。だからこの光景は僕の心の芯をポッカポカに温めてくれる。
不覚にも感情移入してしまい、うん、うん、頷いていたら、蛍が視界の片隅にいる僕の存在に気が付いた。
「恭弥さん!」
壬と真白から離れると僕にジャンピングして僕の胸に顔を埋める。両腕は僕の背中にしっかりとホールドしている。
「やあ、蛍。治ってよかったよ」
そっと抱きしめその後頭部を優しくなでると、顔が忽ち熟したトマトのように真っ赤になっていく。
なぜか僕を見る皆の視線かメッチャ痛いんだが……。
アリスなど半眼だし、ステラは大きなため息を吐くと呆れたような瞳を向けてくる。壬は生温かな視線だし、真白は細い眼をさらに細めてくる。
そして――。
「お兄ちゃん!」
ツインテールの悪魔がゆらりと席を立ちあがり、僕の眼前までくると、両手を腰に当てる。
(ああ、また始まる……)
沙耶が口を開き、お説教のゴングは鳴り響く。
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