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第2章 地球活動編
第131話 勇気をください 二節 聖者襲撃編
しおりを挟む短いですが、演出的に一話にします。ご了承いただければ幸いです。
……………………………………
遊馬蛍は地下牢の階段を駆けあがり、裏口に待機してもらっていた車のドアを開ける。
「お嬢様?」
キミコさんは呆気にとられたように蛍を凝視してくる。
彼女は遊馬家が雇っている家政婦さんだ。壬と蛍にとって第二の母親のような人でもある。
ライトさんに生きる希望をもらってから、今まで頭を覆っていた霧が晴れ、物事を客観的に考えられるようになっていた。
今ならライトさんの言葉が何となくだが理解できる。蛍のやろうとしていたことは単なる逃げだ。偽善という小奇麗な言葉で死の不安を和らげようとしていただけ。そんな自己満足では誰も救われない。
それにライトさんは神童と言われた兄さんが連れて来た人。その彼が『蛍は死なない』といったのだ。『蛍には使命を為すべき権利と義務がある』と言ったのだ。ならばそれを信じないなんて馬鹿だ。
「キミコさん、村の放送事務所に連れて行って下さい」
「お嬢様……わかりましたわ」
キミコさんは涙ぐみながらも、車の後部座席を開けようとするので、首を左右に振り、助手席ドアを開けて車に素早く乗り込む。
「キミコさん、早く行きましょう」
「はい!」
瞼に涙を滲ませつつも、車に乗り込み、キミコさんは車を走らせる。
村に唯一の放送事務は木製の三階建ての建物だ。事務所の三階が、放送設備が置いてある放送室となる。
この放送室への鍵は神楽の名を継いだあの悪夢の日に貰っている。神楽の巫女は村の統括者。村全体に統括者としての意思を伝える必要性から、放送室の鍵は代々、神楽の巫女に受け継がれて来た。
元々神楽の巫女は和泉家の傀儡。この蛍の放送室の鍵の所持も和泉家の指示による。蛍を通じて和泉家に都合のよい情報を伝えること。それがこの鍵を持つ本来の用途。
でもそれも今日で終わり。
鍵を開けて部屋の中に入り、椅子に座り、スピーカーのスイッチをオンにする。
蛍に許された時間は僅かだ。この雨女河村から近隣の街への街道は既に和泉家の兵隊により、封鎖されているはず。この村から逃げる時間はない。
でも封鎖さえ完了してしまえば、狐である蛍達を直ぐに駆除する必要はない。和泉家の最終確認を取るくらいの時間はあるはず。ならば、村人の説得に失敗さえしなければ籠城による時間稼ぎくらいできる。ライトさんが行動を起こす時間を稼げれば、きっと蛍達は勝利する。
大きく息を吸い込み、口元にマイクを近づける。
(兄さん、真白お姉ちゃん――ライトさん、私に勇気をください)
「こんにちは、遊馬蛍です――」
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