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第十七話 恋敵が去って遂に義尚を我が物にする彦次郎

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 典医は予後を絶望視しているようであったが、それを嘲うかのように義尚は回復の兆しを見せた。自らの足で立ち上がり、床を払ってみせたのである。
 だが床を払った義尚がまずやったことといえば酒宴であった。
 人々の眼前で一気に酒盃を乾かしてみせ、本復をアピールする義尚。飲めや歌えの大騒ぎのあとには、例の如く彦次郎を傍らに侍らせておきながら七郎と激しい情事に及ぶ。

「早く……早く欲しい……!」
 相変わらず呂律の回らない義尚。
「これが欲しゅうございましたか」
 七郎は充血してガチガチに固めた逸物を義尚の眼前にこれ見よがしに晒しながら、義尚の長い黒髪を引っ掴んで引っ張り上げている。義尚はといえば、そのような扱いを受けながらももう少しで七郎の業物ごうものを口に含むことが出来るという寸前のところで七郎に掴まれた髪のために動きを封じられて、勃起した先端から物欲しそうな透明汁を垂らすばかりだ。
 そして彦次郎は、その両名の痴態を間近にながら誰にも慰めてもらうことが出来ず、皮の余る小さな逸物を、例によってひとり擦り上げるより他に身の置き所を知らない。
 七郎が、時折その彦次郎に視線をやっては勝ち誇ったようににやりと笑う。
「ひぃぐうぅぅぅ……ッ!」
 七郎と目が合うたびに、射精する彦次郎。

 病床を払ってみせ、本復をアピールしたとはいうものの、義尚の身体は不健康そのものであった。
 聞けば義尚は、病床でも食を受け付けず、酒と水ばかりを飲んでいたという。
 彦次郎は義尚の治療の経過を知らなかったが、そういった噂を裏付けるように義尚はめっきり痩せ、逞しかったうなじは細り、あばらがくっきりと浮かんでいた。豊かだった尻もいまは明らかに肉が削げ落ちている。豊かなのは餓鬼のように膨れ上がった下っ腹だけであり、どう見ても病魔が義尚の身体を去ったとは思われなかった。本復にほど遠いことは、全身真っ黄色に黄濁した黄疸の症状からも明らかであった。

 七郎は、いつもそうするように義尚の喉奥に業物を突き立てた。たまらず吐き戻す義尚。
 そして義尚の吐瀉物で汚れた業物を、当の本人の菊門に押し当ててこじ入れ、これでもかと突き上げる七郎。
「ふぐぁ! はッぐうぅぅ……ッ!」
 俯せになりながら、後背からのしかかる七郎の業物に突かれてくぐもったような喘ぎ声を上げる義尚。
 間断なく突き立てる七郎の下腹部の肉と、すっかり痩せた義尚の尻たぶとがぶつかり合って肉弾相打つ音に、義尚の嬌声が混ざり合う。
「もっと……もっ……もっとぉぉぉッ!」
 義尚は俯せになりながらも尻を上げ、尻穴を七郎の逸物に押し当てた。七郎の肉棒で突かれることによりいっそう快楽を得られる位置を、自分自身で探しているようである。
 これに呼応するかのように、七郎のピストン運動が俄然激しさを増す。絶頂が近いのか。
「さぁ参りますぞ義尚様!」
 七郎が合図するように吼えた。
 ひとり逸物を慰める彦次郎の手も、動きの激しさを増していく。

 しかしなんとしたことか。

 それまで七郎の責めを受けていた義尚の尻が不意に下がり、ために七郎の業物が義尚の尻穴からすっぽりと抜けてしまったのである。
「ちッ! 気絶しちまいやがった!」
 射精の機会を逸したためか、忌々しそうに罵る七郎。
 
 七郎は失神した義尚の緑髪を無造作に引っ掴み、まるで馬でも調教するものの如く
「へばっておられる場合ではございませんぞ。この程度の責め苦で正気を失うなど武家の棟梁にあるまじき失態……」
 と更なる雑言を浴びせたが、義尚はピクリとも動かない。
 ことここに至り異変を察知したのか、七郎は焦ったような表情を隠さずすっかり脱力した義尚の顔を覗き込んだ。
 しばし義尚の様子を窺う七郎。

「し……死んでる……!」

 七郎の口から放たれた言葉は信じがたいものであった。
 耳を疑う彦次郎。
 
「ひぃぃぃッ……!」
 悲鳴を上げながら七郎は着の身着のまま寝所を飛び出していった。
 独り残された彦次郎が義尚の顔を恐る恐る覗き込むと、その瞳は虚ろに濁り、目尻に一条ひとすじの涙。
 ぐったりと身を横たえたまま動かぬところを見ると、やはり死んでいるのか。
 
 だが彦次郎は七郎のように義尚をほったらかしにしてその場から逃げ出すようなことはしなかった。それに逸物も萎えてはいなかった。七郎は何事か決心したものの如く、たったいま死んだ義尚の肛門に己が逸物の先端を押し当てた。
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