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第四章 近づく
第二十四話 答え
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日々は流れていく。
一緒に食事をして、仕事をして、隣同士で眠って、二人の生活が続いた。つなぎ止めているものが、「魔力を得る魔法のため」そして、最終的な結末が「殺される」だとしても、それでも、この生活は、夜空にとって、幸せだった。この生活がずっと続いてほしい、と思うくらいに、
その日も夜空は蔵書庫の中で本を読んでいた。本のページをめくると、足音が聞こえてきたことに気がつく。視線を向ける、そこにいたのはヴァートだった。穏やかな表情を浮かべている。
「ヴァートさん。どうされたんですか?」
「……君の様子を見に来ただけだ」
夜空に近づいてきて、彼の姿を眺めている。少し心が跳ねる。ページをめくる手が少し鈍った。
「君は相変わらず楽しそうに本を読むんだな」
「そ、そうでしょうか……」
じっと見つめられて、少し声がうわずった。少し恥ずかしくなって、そっと視線を動かす。
「緊急の話題ではないが、少し、話してもいいか?」
私の、個人的な話だ。と彼は言う。夜空ははい、と返事をして頷いた。
「前に、もし、魔法が使えたら、という話をしただろう?」
「そう、ですね……」
魔法が使えたらどうしたいか、という話をしたことがある。その時にヴァートは「全てを復讐に使う、と答えていた。
「……それで、あの日の後、しばらく考えていたんだ。そして、昔、使いたい魔法があった、ということを思い出したんだ。復讐以外に使いたい魔法だということを」
その表情は、どこか、子どものころを思い出すような柔らかな表情をしていた。
「それって、どんな魔法だったんですか?」
「……どんな、魔法だったんだろうな。使いたい、というだけで、呪文も、忘れてしまった」
どこか嘘をついているように見えた。忘れた、と言い聞かせているようにも見えた。 けれども、どうにもならない想いを、打ち明けたい、という風な雰囲気を夜空は感じ取ってしまった。まるで、手に入らないものを追憶するような、そんな雰囲気だった。そして、そこから、復讐、のようなまがまがしさや尖った雰囲気は見えなかった。
「すまない、一方的に、中身のない話をしてしまって」
「いえ……」
その表情を見て、夜空は、やはり、ヴァートに魔力を得て欲しい、と思ってしまった。
「……もし、あの魔法が、成功して、たくさんの魔力を手に入れることが出来たら、その、魔法も、思い出して、使えるといいですね」
「…………そう、だな」
ヴァートは答える。その表情は夜空には見えなかった。夜空に、その表情を隠そうとしているかのようだった。
そして、24日目を迎えようとしていた。
一緒に食事をして、仕事をして、隣同士で眠って、二人の生活が続いた。つなぎ止めているものが、「魔力を得る魔法のため」そして、最終的な結末が「殺される」だとしても、それでも、この生活は、夜空にとって、幸せだった。この生活がずっと続いてほしい、と思うくらいに、
その日も夜空は蔵書庫の中で本を読んでいた。本のページをめくると、足音が聞こえてきたことに気がつく。視線を向ける、そこにいたのはヴァートだった。穏やかな表情を浮かべている。
「ヴァートさん。どうされたんですか?」
「……君の様子を見に来ただけだ」
夜空に近づいてきて、彼の姿を眺めている。少し心が跳ねる。ページをめくる手が少し鈍った。
「君は相変わらず楽しそうに本を読むんだな」
「そ、そうでしょうか……」
じっと見つめられて、少し声がうわずった。少し恥ずかしくなって、そっと視線を動かす。
「緊急の話題ではないが、少し、話してもいいか?」
私の、個人的な話だ。と彼は言う。夜空ははい、と返事をして頷いた。
「前に、もし、魔法が使えたら、という話をしただろう?」
「そう、ですね……」
魔法が使えたらどうしたいか、という話をしたことがある。その時にヴァートは「全てを復讐に使う、と答えていた。
「……それで、あの日の後、しばらく考えていたんだ。そして、昔、使いたい魔法があった、ということを思い出したんだ。復讐以外に使いたい魔法だということを」
その表情は、どこか、子どものころを思い出すような柔らかな表情をしていた。
「それって、どんな魔法だったんですか?」
「……どんな、魔法だったんだろうな。使いたい、というだけで、呪文も、忘れてしまった」
どこか嘘をついているように見えた。忘れた、と言い聞かせているようにも見えた。 けれども、どうにもならない想いを、打ち明けたい、という風な雰囲気を夜空は感じ取ってしまった。まるで、手に入らないものを追憶するような、そんな雰囲気だった。そして、そこから、復讐、のようなまがまがしさや尖った雰囲気は見えなかった。
「すまない、一方的に、中身のない話をしてしまって」
「いえ……」
その表情を見て、夜空は、やはり、ヴァートに魔力を得て欲しい、と思ってしまった。
「……もし、あの魔法が、成功して、たくさんの魔力を手に入れることが出来たら、その、魔法も、思い出して、使えるといいですね」
「…………そう、だな」
ヴァートは答える。その表情は夜空には見えなかった。夜空に、その表情を隠そうとしているかのようだった。
そして、24日目を迎えようとしていた。
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