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第三章 進む
第二十話 就寝
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その日の夜、夜空が寝ようとした時だった。ヴァートは、どことなく緩い服装をしていた。夜空が元いた世界で言うハイネックと柔らかなズボンを身に着けたような服装。
「ヴァートさん……?」
「……寝ようと思っている」
「あ、はい……」
10日目にして、初めて彼が就寝するところに遭遇した。そして、ローブを脱いだ服装も
初めてみた。いつも夜空が寝た後に寝ている様子だったし、しっかりと布団をかけてから。こうして同じタイミングで寝る、ということはなかった。
す、と背を向けられる。かけた魔法のために、振動も何も伝わってこない。魔法が使われている。でも、確かに彼の身体がそちらにある、というのが夜空には見えた
「あの、灯り、消しますね」
「ああ」
背中を向けて言われた。けれども、あまり距離は感じなかった。暗くなった部屋。独り事のように、彼は呟いた。
「お前の監視、や寝込みを襲われないために、というのもあったが、そもそもが寝るのが好きではなかった。見る夢の大概が悪夢だったんだ」
「……そうだったんですね」
目の下の隈だったり疲れていた表情だったりがこの世界に来た時は強かったし、椅子に寝ながらうなされているのを目撃した。けれどもそれはだんだんと落ち着いてきて、そして、夜空が寝顔を目撃する時は、随分と穏やかに眠っていたのを見た。
「でも、……こうして、お前が隣にいると、悪夢を見ないんだ。最初は偶然かと思ったけれども、そうではなかった」
「隣に人がいるから、でしょうか?」
「……隣に誰かがいたことは初めてではない。でも、その時も、あまり夢見はよくなかった」
「……そう、なんですね」
「寝入るところを邪魔したな。おやすみ」
「……おやすみなさい。いい夢、見れるといいですね」
おやすみ、をヴァートから言われるのは、初めてだった。少し、嬉しくなる。
「……お前だから、なのかもしれないな」
お前、の部分を強調される。瞬間、夜空の中にぎゅ、と熱くなるような想いが溢れた。
お前だから、なのかもしれないな。
夜空は、その言葉を何度も頭の中で繰り返す。その言葉が、嬉しかった。昼間、ヴァートに質問をした時に、「代わりの効かない存在になりたい」と言ったから、気を遣ってくれたのかもしれないし、本当のことなのかもしれない。
でも、ヴァートのその言葉で、胸が熱くなった。そして、あたたかさ、や柔らかさとはまた別の感情を伴っている。まるで、ときめきのような、とろけるような響きがあった。その日、夜空はなかなか寝付くことができなかった。あたたかさや心地よさとは違う、別の感情が、夜空の中に生まれてきていた。
「ヴァートさん……?」
「……寝ようと思っている」
「あ、はい……」
10日目にして、初めて彼が就寝するところに遭遇した。そして、ローブを脱いだ服装も
初めてみた。いつも夜空が寝た後に寝ている様子だったし、しっかりと布団をかけてから。こうして同じタイミングで寝る、ということはなかった。
す、と背を向けられる。かけた魔法のために、振動も何も伝わってこない。魔法が使われている。でも、確かに彼の身体がそちらにある、というのが夜空には見えた
「あの、灯り、消しますね」
「ああ」
背中を向けて言われた。けれども、あまり距離は感じなかった。暗くなった部屋。独り事のように、彼は呟いた。
「お前の監視、や寝込みを襲われないために、というのもあったが、そもそもが寝るのが好きではなかった。見る夢の大概が悪夢だったんだ」
「……そうだったんですね」
目の下の隈だったり疲れていた表情だったりがこの世界に来た時は強かったし、椅子に寝ながらうなされているのを目撃した。けれどもそれはだんだんと落ち着いてきて、そして、夜空が寝顔を目撃する時は、随分と穏やかに眠っていたのを見た。
「でも、……こうして、お前が隣にいると、悪夢を見ないんだ。最初は偶然かと思ったけれども、そうではなかった」
「隣に人がいるから、でしょうか?」
「……隣に誰かがいたことは初めてではない。でも、その時も、あまり夢見はよくなかった」
「……そう、なんですね」
「寝入るところを邪魔したな。おやすみ」
「……おやすみなさい。いい夢、見れるといいですね」
おやすみ、をヴァートから言われるのは、初めてだった。少し、嬉しくなる。
「……お前だから、なのかもしれないな」
お前、の部分を強調される。瞬間、夜空の中にぎゅ、と熱くなるような想いが溢れた。
お前だから、なのかもしれないな。
夜空は、その言葉を何度も頭の中で繰り返す。その言葉が、嬉しかった。昼間、ヴァートに質問をした時に、「代わりの効かない存在になりたい」と言ったから、気を遣ってくれたのかもしれないし、本当のことなのかもしれない。
でも、ヴァートのその言葉で、胸が熱くなった。そして、あたたかさ、や柔らかさとはまた別の感情を伴っている。まるで、ときめきのような、とろけるような響きがあった。その日、夜空はなかなか寝付くことができなかった。あたたかさや心地よさとは違う、別の感情が、夜空の中に生まれてきていた。
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