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第三章 進む
第十八話 蔵書庫の本
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二人で一緒に食事を作った後、ヴァートに頼まれた仕事を終え、蔵書庫の方に向かおうとしていた。ヴァートはいつものように机の上でペンを走らせている。
「それでは、蔵書庫の方に行ってきますね」
「ああ」
ヴァートは、一度手を止めて、蔵書庫に向かう夜空を見送る。その瞳は、子どもが遊びにいくのを見送るような雰囲気があった。夜空を怪しんでいるような瞳ではなかった。
日が経つにつれて、ヴァートの視線はだんだんと柔らかなものになっていた。夜空に対して、心を開いて、いるわけではないとは思うけれど、少なくとも夜空がヴァートに危害を加えようとしてはいないと思ったのかもしれない。そんな変化が、夜空は少し嬉しかった。
夜空は、蔵書庫の中に入る。紙とインクの香りを感じた。そして、夜空はどの本を読もうか、と蔵書庫の中を歩いてしまっていた。歩いているだけでも楽しかった。
仕事で何度も出入りしているし、休憩時間はよくここで本を読んでいるから、それもあって配置など、だんだんとわかってきていた。同時に、最初の頃に抱いていた疑問が、強まっていく。
「ヴァートさんのやりたいことって、本当に、復讐なのかな……」
一人だけの、像書庫の中を歩きながら、夜空はつい呟いてしまった。
この蔵書庫の本は、ざっと背表紙を眺めたり、興味のある本を読んでみたところ、やはり「魔力の低い者が魔法をどう使うか」「魔法界はどのような世界なのか」というような、穏やかな内容のものが多い。復讐を考えているのであれば所持してそうな「危険な魔法」だったり「他者をないがしろにして強い力を得る」というような内容は一切ない。
むしろ、どうして「人間界から人間を呼び出して殺す」という魔法に行き着いたのかを謎に思ってしまうくらいに穏やかな本ばかりであった。穏やかで、そして、魔法を純粋に使いたい、と願っているような雰囲気が、集められた本からは感じ取れた。
ヴァートに関しても、復讐のために残虐な手段を取る人には思えなかったのだ。殺す、にしてはあまりにも緩いし優しすぎる。こちらの世界に来てから、まだ10日も経っていない。でも、その中で触れた彼は、ひどく優しい人だった。そして、本当の望みが、復讐だとも思えなかったのだ。
「……」
そして、夜空は、思ったことがあった。一つ、彼に訊ねたいことがあったのだ。
彼に、こういう質問をするのは無神経だとは思う。けれども、夜空は思ってしまったのだ。ヴァートが、本当はどうしたいのかを、知りたい、と。
「それでは、蔵書庫の方に行ってきますね」
「ああ」
ヴァートは、一度手を止めて、蔵書庫に向かう夜空を見送る。その瞳は、子どもが遊びにいくのを見送るような雰囲気があった。夜空を怪しんでいるような瞳ではなかった。
日が経つにつれて、ヴァートの視線はだんだんと柔らかなものになっていた。夜空に対して、心を開いて、いるわけではないとは思うけれど、少なくとも夜空がヴァートに危害を加えようとしてはいないと思ったのかもしれない。そんな変化が、夜空は少し嬉しかった。
夜空は、蔵書庫の中に入る。紙とインクの香りを感じた。そして、夜空はどの本を読もうか、と蔵書庫の中を歩いてしまっていた。歩いているだけでも楽しかった。
仕事で何度も出入りしているし、休憩時間はよくここで本を読んでいるから、それもあって配置など、だんだんとわかってきていた。同時に、最初の頃に抱いていた疑問が、強まっていく。
「ヴァートさんのやりたいことって、本当に、復讐なのかな……」
一人だけの、像書庫の中を歩きながら、夜空はつい呟いてしまった。
この蔵書庫の本は、ざっと背表紙を眺めたり、興味のある本を読んでみたところ、やはり「魔力の低い者が魔法をどう使うか」「魔法界はどのような世界なのか」というような、穏やかな内容のものが多い。復讐を考えているのであれば所持してそうな「危険な魔法」だったり「他者をないがしろにして強い力を得る」というような内容は一切ない。
むしろ、どうして「人間界から人間を呼び出して殺す」という魔法に行き着いたのかを謎に思ってしまうくらいに穏やかな本ばかりであった。穏やかで、そして、魔法を純粋に使いたい、と願っているような雰囲気が、集められた本からは感じ取れた。
ヴァートに関しても、復讐のために残虐な手段を取る人には思えなかったのだ。殺す、にしてはあまりにも緩いし優しすぎる。こちらの世界に来てから、まだ10日も経っていない。でも、その中で触れた彼は、ひどく優しい人だった。そして、本当の望みが、復讐だとも思えなかったのだ。
「……」
そして、夜空は、思ったことがあった。一つ、彼に訊ねたいことがあったのだ。
彼に、こういう質問をするのは無神経だとは思う。けれども、夜空は思ってしまったのだ。ヴァートが、本当はどうしたいのかを、知りたい、と。
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