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第二章 奇妙で穏やかな生活
第十四話 『魔法界と人間界』
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ヴァートがじっと夜空を眺めていた。瞬間、夜空の中に「とんでもないことをしてしまった」という思考と同時に、冷や汗が背中を伝ったのが分かった。
「す、すみません……! その、決して、怪しいことをしていたわけではなくって、その、どんな本なのか、中身が気になってしまって……!」
夜空は深く頭を下げて、ヴァートに謝罪する。
ひどく浮わついていたと思う。元いた世界であれば絶対にしていないこと。やっていることは明らかな仕事さぼり。同時に、怪しまれてしまったのではないか、という恐れが走る。
ヴァートからの返事は返ってこない。夜空はほんの少しだけ、顔を上げて、ヴァートの様子を伺う。表情が分からない。どういう感情になっているのか分からなかった。怒りを隠しているだけかもしれない。
「その、本当に、怪しいことをしていたわけではないんです……。ただ、本がたくさんあって、気になってしまって……」
夜空は言い訳のように口にしてしまう。もちろんヴァートを殺すために何か策を練ろうとしていた、というわけでもない。ただ、子どものような気持ちになってしまっただけなのだ。
はあ、とヴァートは溜息をついた。ヴァートからは、怒りでも呆れでもない。不思議な雰囲気が漂っている。まるで、小さい子どもが遊んでいるのを眺めていたかのような雰囲気。
「見ていたら分かる。この距離まで私が近づいて眺めていても、お前は私に全く気がついていなかったくらいに隙だらけだった。それに……」
それに、と言いかけた後、彼は、いや、なんでもない。と言って言葉を止めた。
「ともかく、今は仕事中だ。手伝う、と言ったのだからそれは完遂しろ」
「す、すみません……」
ヴァートの言う通りだ。こんなことをするなんて。何かに浮かされていたのかもしれない。申し訳なさと、疑われたのかもしれない、という思いが募る。
「まだ仕事はある。その仕事を終えて、昼食を終えたら、自由にしていい」
「え……?」
ヴァートの言葉に、夜空は戸惑いの表情を浮かべた。
「自由に、と言うのは……?」
「文字通りの意味だ。好きに過ごしていい。という意味だ」
「あ、あの、すみません……! これからきちんと仕事はしますので……!」
失望されたり、怪しまれてしまったのだろうか。首を横に振って、夜空は不安になって子どものように言ってしまった。夜空の答えに、ヴァートは溜息をつく。
「終わったら休憩として自由に過ごしていい、という意味だ。別にお前を見限ったわけではない。お前が、随分とこの部屋の本に興味を持っていたから、それらを読む時間を与えようとしただけだ」
「す、すみません……ありがとうございます……」
ヴァートの答えにほっとすると同時に、彼の甘すぎるくらいの優しさを感じた。
そして、ヴァートは指をさした。先ほど夜空が作業をしていた本の場所とは違う場所を。
「えっと……」
「お前が作業をしていたこのあたりには、お前が知りたいような内容の本はない」
「え?」
「読むとしたらあちらだ。お前の知りたそうな人間界に関係する本はあちらに置いてある」
ヴァートは指を指しながら言った。まるで、そちらの本を読むといい、と勧めるように。
「あ、ありがとうございます……!」
「……早く戻ってくるんだ。まだお前の仕事は終わっていない」
「は、はい……! すみません! ありがとうございます……!」
ヴァートの優しさを味わう夜空。同時に、ヴァートに殺される未来を、あまり想像することが出来なかった。
夜空はヴァートと共に、再び書斎へと戻った。先ほど、蔵書庫に積み重ねられていたように、分厚い本が何冊か積み重ねられていた。それが、夜空が運ぶ本なのだろう、と思った。
こちらも、綺麗に、番号ごと積み重ねられている。そこからもヴァートの几帳面さを感じた。夜空は、荷物運びのアルバイトを思い出しながら、丁寧に、本を持ち上げ、蔵書庫の方へと運ぼうとした。ちら、とヴァートの方を伺った。ヴァートは、机に座って、何かを書いていた。昨日の夜と同じように。
「そういえば、ヴァートさんって、お仕事って何を……」
「魔法の研究だ」
ヴァートは、それだけ答えると、早く行くんだ、と紙の上にペンを走らせながら言う。深掘りされたくない、と言わんばかりに。
そして、彼から預かった本を戻し終えたことを報告した、書斎にあった本を片付けた後、夜空はヴァートに一つ仕事を任された。メモに書かれた使いたい本を何冊か探して持ってくる、というものだった。ヴァートのメモの字と、背表紙の文字を照らし合わせて探す。先ほど、空間になっていた本棚のそばにある本が主だったから、あまり時間は掛からなかった。背表紙や表紙から分かるその本の内容としては、魔力の消費に関する本、魔力がどのような仕組みになっているか、といった雰囲気であった。
ヴァートが何を研究しているか夜空は詳しくは知らない。けれども、メモに書かれていた本のタイトルからは、人を殺す、とか誰かを傷つける、といったことは想像が出来ないようなものばかりであった。
仕事を終え、ヴァートの元へと戻ってくる。
「ご苦労だった」
そして、夜空が、ヴァートに任された仕事を完遂すると、ヴァートに「監視」をされながら食事を作った。野菜が入ったコンソメスープのようなものと、パンと、ゆでた卵と温野菜のサラダ。ヴァートが食べやすいように軽めのもの。会話は少なかったけれど、ヴァートも、朝食時よりは少し緊張の解けた様子で食事を食べ進めていた。少し縮こまるようではあったけれど、綺麗な所作で食事をしていた。
食事を終え、ヴァートに「あとは自由にしていい」と言われた後、再びあの空間へと戻った。緊張と期待が走る。
夜空は、わくわくした気持ちを抱いて、背表紙を眺めていた。幼い頃、図書館で、どの本を読もうか、と選んでいた時間に似ている。あの一瞬だけは、寂しさを、現実を忘れられていた。その時抱いた感情によく似ていた。
迷った末、夜空が手に取ったのは『魔法界と人間界』という本だった。魔法の街のような絵が表紙に描かれていた。それを、ゆっくりと読み進める。さすがに、全ての語の意味を完璧に理解出来ているわけではなく、学生時代の英語の長文読解のように単語を飛ばし飛ばしで読み進めている。それでも内容を理解することは出来た。この本に描かれていたのは、題名が示す通り、魔法界に住む魔法使いと、人間界に住む人間の違いや共通点が書かれていた。
人間界に住む人間と、魔法界に住む人間の違いは、ある一定量の魔力を持ち、そして魔法が使えるかどうか、だそうだ。
魔法使いは、魔法を使って身体を強化したりすることは出来るけれど、基本的に寿命は人と変わらず、寝食も必要らしい。この世界の魔法使いは、人間界の人間と身体の組成は変わらないようだ。
そして、人間界は、魔法界から遠く離れたところにあり、簡単に行き来できるような場所ではないらしい。しかし、魔法界にとって、全くの無関係という場所ではなく、人間界の文明や文化を取り入れるためにこっそりと魔法界から人間界に行く魔法使いもいるそうだ。この世界のインフラ周りが夜空が元いた世界――人間界に似ているのはその影響か、と夜空は納得する。
しかし、逆に、人間界から魔法界に行くことが出来る人間はほぼいないそうだ。魔法使いがこちらの世界に呼び出すことが、人間が魔法界に来る唯一の方法らしい。
ヴァートが、「夜空しかいない」と言っていたのは、そういうことだったのか、と思った。
相づちを打つように頷いたり、なるほど、と思わず口にしながら、夜空はその本を読み進めていた。
「ん……?」
読み進めていくにつれて、夜空が気になった部分がある。人間も微弱ではあるが、魔力を持っているそうだ。そして、元から魔法の文字が読める者や、ごくごく弱い魔法ではあるが、魔法を使える者がいるらしい。
そこで、ふと、思い出したのは、「愛の魔法」の呪文のことだった。ヴァートの魔法がないのに、幼い頃の夜空は、なぜか「愛の魔法」というタイトルと、呪文が読めてしまっていた。もしかしたら、自分も、「魔力を持つ人間」に当てはまるのかもしれない。ないとは思うけれど、そんなことを思って、夜空は、あの呪文を唱えてみた。
「 」
予想はついていたけれど、もちろん、何も起こるはずがなかった。
「まあ、そうなるよね……」
もしも、簡単に魔法が使えていたら、ヴァートがわざわざ自身を呼び出して何日も待って殺そうとする……なんて苦労はしていないだろうから。
そして、人間は、魔力を生まれつき持たない代わりに、魔力を外部から受け取ることが出来るそうだ。魔力の器となって、魔法を使われたり、何らかの方法で、他の魔法使いから魔力を与えられて、魔法を使うことが出来た、という例もあるらしい。
この本にはあまり詳しくは書かれていなかったが、ヴァートが目的としてたのは、このあたりの部分だったのかもしれない。
キリのいいところまで読み進めたところで、夜空は読んでいた本を閉じ、本棚に戻した。自由にしていい、とは言われたけれど、あまり長い時間を過ごすのもどうか、と思ったから。
まだ仕事はあるかもしれない。夜空は蔵書庫から出て、再びヴァートの元へと向かった。
「ヴァートさん、ありがとうございました……」
夜空は、口にしながらゆっくりと部屋の中に入った。ヴァートは夜空が戻って来たことに、気がつく様子はない。もう一度「ありがとうございました」と口にしても、視線は、先ほどと同じように、紙の上に向けられているようだ。研究に集中しているようだ。
「あ……」
夜空の口から声が漏れる。
昨日の夜は彼を横から眺めていた。その時は、長めの髪が表情を覆い隠していて、表情は分からなかった。けれども、今、彼の正面に立っている。目元は見えないものの、口元に、少し笑みが見えた。その表情は、昨日は見えなかった柔らかな表情だった。
「す、すみません……! その、決して、怪しいことをしていたわけではなくって、その、どんな本なのか、中身が気になってしまって……!」
夜空は深く頭を下げて、ヴァートに謝罪する。
ひどく浮わついていたと思う。元いた世界であれば絶対にしていないこと。やっていることは明らかな仕事さぼり。同時に、怪しまれてしまったのではないか、という恐れが走る。
ヴァートからの返事は返ってこない。夜空はほんの少しだけ、顔を上げて、ヴァートの様子を伺う。表情が分からない。どういう感情になっているのか分からなかった。怒りを隠しているだけかもしれない。
「その、本当に、怪しいことをしていたわけではないんです……。ただ、本がたくさんあって、気になってしまって……」
夜空は言い訳のように口にしてしまう。もちろんヴァートを殺すために何か策を練ろうとしていた、というわけでもない。ただ、子どものような気持ちになってしまっただけなのだ。
はあ、とヴァートは溜息をついた。ヴァートからは、怒りでも呆れでもない。不思議な雰囲気が漂っている。まるで、小さい子どもが遊んでいるのを眺めていたかのような雰囲気。
「見ていたら分かる。この距離まで私が近づいて眺めていても、お前は私に全く気がついていなかったくらいに隙だらけだった。それに……」
それに、と言いかけた後、彼は、いや、なんでもない。と言って言葉を止めた。
「ともかく、今は仕事中だ。手伝う、と言ったのだからそれは完遂しろ」
「す、すみません……」
ヴァートの言う通りだ。こんなことをするなんて。何かに浮かされていたのかもしれない。申し訳なさと、疑われたのかもしれない、という思いが募る。
「まだ仕事はある。その仕事を終えて、昼食を終えたら、自由にしていい」
「え……?」
ヴァートの言葉に、夜空は戸惑いの表情を浮かべた。
「自由に、と言うのは……?」
「文字通りの意味だ。好きに過ごしていい。という意味だ」
「あ、あの、すみません……! これからきちんと仕事はしますので……!」
失望されたり、怪しまれてしまったのだろうか。首を横に振って、夜空は不安になって子どものように言ってしまった。夜空の答えに、ヴァートは溜息をつく。
「終わったら休憩として自由に過ごしていい、という意味だ。別にお前を見限ったわけではない。お前が、随分とこの部屋の本に興味を持っていたから、それらを読む時間を与えようとしただけだ」
「す、すみません……ありがとうございます……」
ヴァートの答えにほっとすると同時に、彼の甘すぎるくらいの優しさを感じた。
そして、ヴァートは指をさした。先ほど夜空が作業をしていた本の場所とは違う場所を。
「えっと……」
「お前が作業をしていたこのあたりには、お前が知りたいような内容の本はない」
「え?」
「読むとしたらあちらだ。お前の知りたそうな人間界に関係する本はあちらに置いてある」
ヴァートは指を指しながら言った。まるで、そちらの本を読むといい、と勧めるように。
「あ、ありがとうございます……!」
「……早く戻ってくるんだ。まだお前の仕事は終わっていない」
「は、はい……! すみません! ありがとうございます……!」
ヴァートの優しさを味わう夜空。同時に、ヴァートに殺される未来を、あまり想像することが出来なかった。
夜空はヴァートと共に、再び書斎へと戻った。先ほど、蔵書庫に積み重ねられていたように、分厚い本が何冊か積み重ねられていた。それが、夜空が運ぶ本なのだろう、と思った。
こちらも、綺麗に、番号ごと積み重ねられている。そこからもヴァートの几帳面さを感じた。夜空は、荷物運びのアルバイトを思い出しながら、丁寧に、本を持ち上げ、蔵書庫の方へと運ぼうとした。ちら、とヴァートの方を伺った。ヴァートは、机に座って、何かを書いていた。昨日の夜と同じように。
「そういえば、ヴァートさんって、お仕事って何を……」
「魔法の研究だ」
ヴァートは、それだけ答えると、早く行くんだ、と紙の上にペンを走らせながら言う。深掘りされたくない、と言わんばかりに。
そして、彼から預かった本を戻し終えたことを報告した、書斎にあった本を片付けた後、夜空はヴァートに一つ仕事を任された。メモに書かれた使いたい本を何冊か探して持ってくる、というものだった。ヴァートのメモの字と、背表紙の文字を照らし合わせて探す。先ほど、空間になっていた本棚のそばにある本が主だったから、あまり時間は掛からなかった。背表紙や表紙から分かるその本の内容としては、魔力の消費に関する本、魔力がどのような仕組みになっているか、といった雰囲気であった。
ヴァートが何を研究しているか夜空は詳しくは知らない。けれども、メモに書かれていた本のタイトルからは、人を殺す、とか誰かを傷つける、といったことは想像が出来ないようなものばかりであった。
仕事を終え、ヴァートの元へと戻ってくる。
「ご苦労だった」
そして、夜空が、ヴァートに任された仕事を完遂すると、ヴァートに「監視」をされながら食事を作った。野菜が入ったコンソメスープのようなものと、パンと、ゆでた卵と温野菜のサラダ。ヴァートが食べやすいように軽めのもの。会話は少なかったけれど、ヴァートも、朝食時よりは少し緊張の解けた様子で食事を食べ進めていた。少し縮こまるようではあったけれど、綺麗な所作で食事をしていた。
食事を終え、ヴァートに「あとは自由にしていい」と言われた後、再びあの空間へと戻った。緊張と期待が走る。
夜空は、わくわくした気持ちを抱いて、背表紙を眺めていた。幼い頃、図書館で、どの本を読もうか、と選んでいた時間に似ている。あの一瞬だけは、寂しさを、現実を忘れられていた。その時抱いた感情によく似ていた。
迷った末、夜空が手に取ったのは『魔法界と人間界』という本だった。魔法の街のような絵が表紙に描かれていた。それを、ゆっくりと読み進める。さすがに、全ての語の意味を完璧に理解出来ているわけではなく、学生時代の英語の長文読解のように単語を飛ばし飛ばしで読み進めている。それでも内容を理解することは出来た。この本に描かれていたのは、題名が示す通り、魔法界に住む魔法使いと、人間界に住む人間の違いや共通点が書かれていた。
人間界に住む人間と、魔法界に住む人間の違いは、ある一定量の魔力を持ち、そして魔法が使えるかどうか、だそうだ。
魔法使いは、魔法を使って身体を強化したりすることは出来るけれど、基本的に寿命は人と変わらず、寝食も必要らしい。この世界の魔法使いは、人間界の人間と身体の組成は変わらないようだ。
そして、人間界は、魔法界から遠く離れたところにあり、簡単に行き来できるような場所ではないらしい。しかし、魔法界にとって、全くの無関係という場所ではなく、人間界の文明や文化を取り入れるためにこっそりと魔法界から人間界に行く魔法使いもいるそうだ。この世界のインフラ周りが夜空が元いた世界――人間界に似ているのはその影響か、と夜空は納得する。
しかし、逆に、人間界から魔法界に行くことが出来る人間はほぼいないそうだ。魔法使いがこちらの世界に呼び出すことが、人間が魔法界に来る唯一の方法らしい。
ヴァートが、「夜空しかいない」と言っていたのは、そういうことだったのか、と思った。
相づちを打つように頷いたり、なるほど、と思わず口にしながら、夜空はその本を読み進めていた。
「ん……?」
読み進めていくにつれて、夜空が気になった部分がある。人間も微弱ではあるが、魔力を持っているそうだ。そして、元から魔法の文字が読める者や、ごくごく弱い魔法ではあるが、魔法を使える者がいるらしい。
そこで、ふと、思い出したのは、「愛の魔法」の呪文のことだった。ヴァートの魔法がないのに、幼い頃の夜空は、なぜか「愛の魔法」というタイトルと、呪文が読めてしまっていた。もしかしたら、自分も、「魔力を持つ人間」に当てはまるのかもしれない。ないとは思うけれど、そんなことを思って、夜空は、あの呪文を唱えてみた。
「 」
予想はついていたけれど、もちろん、何も起こるはずがなかった。
「まあ、そうなるよね……」
もしも、簡単に魔法が使えていたら、ヴァートがわざわざ自身を呼び出して何日も待って殺そうとする……なんて苦労はしていないだろうから。
そして、人間は、魔力を生まれつき持たない代わりに、魔力を外部から受け取ることが出来るそうだ。魔力の器となって、魔法を使われたり、何らかの方法で、他の魔法使いから魔力を与えられて、魔法を使うことが出来た、という例もあるらしい。
この本にはあまり詳しくは書かれていなかったが、ヴァートが目的としてたのは、このあたりの部分だったのかもしれない。
キリのいいところまで読み進めたところで、夜空は読んでいた本を閉じ、本棚に戻した。自由にしていい、とは言われたけれど、あまり長い時間を過ごすのもどうか、と思ったから。
まだ仕事はあるかもしれない。夜空は蔵書庫から出て、再びヴァートの元へと向かった。
「ヴァートさん、ありがとうございました……」
夜空は、口にしながらゆっくりと部屋の中に入った。ヴァートは夜空が戻って来たことに、気がつく様子はない。もう一度「ありがとうございました」と口にしても、視線は、先ほどと同じように、紙の上に向けられているようだ。研究に集中しているようだ。
「あ……」
夜空の口から声が漏れる。
昨日の夜は彼を横から眺めていた。その時は、長めの髪が表情を覆い隠していて、表情は分からなかった。けれども、今、彼の正面に立っている。目元は見えないものの、口元に、少し笑みが見えた。その表情は、昨日は見えなかった柔らかな表情だった。
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