12 / 29
第二章 奇妙で穏やかな生活
第十一話「いただきます」
しおりを挟む
昨日と同じような距離で、二人、向かい合いながら座った。昨日と違うのは、ヴァートの前にも食事があったこと。
ヴァートは少し戸惑いながら夜空の作ったパン粥を眺めている。ふわふわと湯気が立っているそれを、じっと見つめている。
一応、彼を安心させるように言うも、ヴァートが夜空の食事を見る目線は、警戒とは違うものだった。食べたくない、ともまた違った視線。
「大丈夫です。怪しいものは何も入っていませんから」
ヴァートは一度夜空に視線を向ける。その視線からは、冷ややかさも圧も感じられない。
「……それは、分かっている」
そして、ヴァートは、少し戸惑った動きで、手を合わせた。
「……いただき、ます」
そして、緊張した面持ちで、木製のスプーンを手に持ち、少し、手を震わせながら、夜空の作ったパン粥を口に入れる。その手つきは、随分と緊張している。
「……どうですか?」
少し、首をかしげる。けれども、その表情は柔らかだった。
「美味しい、と思う……」
「本当ですか?」
「……ああ」
そして、もうひとすくい、先ほどよりも滑らかな動きで、スプーンで中の液体をすくって口に入れる。そのまま、ゆっくりと食べ始めた。どこか緊張した雰囲気が見える。ゆっくりと食べ進めてくれていた。
ヴァートの雰囲気が少しだけ緩まったような気がした。
「いただきます」
夜空も手を合わせて、いただきます、と言い、自身の作ったパン粥を食べ始める。ふわりと柔らかく、優しい味がした。
「どうされましたか?」
「……誰かに、自分のために、食事を作ってもらう、なんて、ほとんどなかったから」
「そうですか。俺もなんです」
だから、昨日、ご飯作っていただけたりして、嬉しかったんです。と夜空はヴァートに告げる。
「……そうか」
ヴァートは答える。冷ややかさの中に見えたのは、やはり、どこか子どものような雰囲気だった。
殺される相手と食事をしている。というのに、今まで味わったことのないような温かさと、穏やかさが夜空の中に広がっていた。
やがて、二人の皿が空になる。
「ごちそうさまでした」
「……ごちそう、さま、でした」
ヴァートもどこかたどたどしく、ごちそうさま、と口にする。そして、食事の片づけを終える。
「ヴァートさん」
「……なんだ」
「他に、何か手伝うこと、ありますか?」
少しだけ、纏う空気が柔らかくなった。
「……それでは、仕事の手伝いをしてもらおうか」
ヴァートは家の中を歩いていく。そして、ある一室にたどり着いた。その扉は、随分と大きな扉であった。
ヴァートは少し戸惑いながら夜空の作ったパン粥を眺めている。ふわふわと湯気が立っているそれを、じっと見つめている。
一応、彼を安心させるように言うも、ヴァートが夜空の食事を見る目線は、警戒とは違うものだった。食べたくない、ともまた違った視線。
「大丈夫です。怪しいものは何も入っていませんから」
ヴァートは一度夜空に視線を向ける。その視線からは、冷ややかさも圧も感じられない。
「……それは、分かっている」
そして、ヴァートは、少し戸惑った動きで、手を合わせた。
「……いただき、ます」
そして、緊張した面持ちで、木製のスプーンを手に持ち、少し、手を震わせながら、夜空の作ったパン粥を口に入れる。その手つきは、随分と緊張している。
「……どうですか?」
少し、首をかしげる。けれども、その表情は柔らかだった。
「美味しい、と思う……」
「本当ですか?」
「……ああ」
そして、もうひとすくい、先ほどよりも滑らかな動きで、スプーンで中の液体をすくって口に入れる。そのまま、ゆっくりと食べ始めた。どこか緊張した雰囲気が見える。ゆっくりと食べ進めてくれていた。
ヴァートの雰囲気が少しだけ緩まったような気がした。
「いただきます」
夜空も手を合わせて、いただきます、と言い、自身の作ったパン粥を食べ始める。ふわりと柔らかく、優しい味がした。
「どうされましたか?」
「……誰かに、自分のために、食事を作ってもらう、なんて、ほとんどなかったから」
「そうですか。俺もなんです」
だから、昨日、ご飯作っていただけたりして、嬉しかったんです。と夜空はヴァートに告げる。
「……そうか」
ヴァートは答える。冷ややかさの中に見えたのは、やはり、どこか子どものような雰囲気だった。
殺される相手と食事をしている。というのに、今まで味わったことのないような温かさと、穏やかさが夜空の中に広がっていた。
やがて、二人の皿が空になる。
「ごちそうさまでした」
「……ごちそう、さま、でした」
ヴァートもどこかたどたどしく、ごちそうさま、と口にする。そして、食事の片づけを終える。
「ヴァートさん」
「……なんだ」
「他に、何か手伝うこと、ありますか?」
少しだけ、纏う空気が柔らかくなった。
「……それでは、仕事の手伝いをしてもらおうか」
ヴァートは家の中を歩いていく。そして、ある一室にたどり着いた。その扉は、随分と大きな扉であった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
【R18】執着ドS彼氏のお仕置がトラウマ級
海林檎
BL
※嫌われていると思ったら歪すぎる愛情だったのスピンオフ的なショート小話です。
ただただ分からせドS調教のエロがギッチリ腸に詰めすぎて嘔吐するくらいには収まっているかと多分。
背格好が似ている男性を見つけて「こう言う格好も似合いそう」だと思っていた受けを見て「何他の男を見てんだ」と、キレた攻めがお仕置するお話www
#濁点喘ぎ#電気責め#拘束#M字開脚#監禁#調教#アク目#飲ザー#小スカ#連続絶頂#アヘ顔#ドS彼氏#執着彼氏#舌っ足らず言葉#結腸責め#尿道・膀胱責め#快楽堕ち#愛はあります
EDEN ―孕ませ―
豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。
平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。
【ご注意】
※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。
※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。
※前半はほとんどがエロシーンです。
小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる
海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる