召喚師学園の落ちこぼれ、追放されたので隠していた力を解放して更に上の学園で無双する。今更戻れだって?ふざけるな。俺はここで最強に君臨するんだ

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エフェクト

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「改めまして、レイスくん! 入学おめでとう!」

 ――パーンっと破裂音が響き、俺は金銀の装飾にまみれることになった。
 一難を乗り越え、アンナが「せっかくだしレイスくんの入学祝いをしましょう!」と宣言したことから始まったパーティー。

 開催場所はアンナの部屋である。そして、自分の部屋でもある。
 しかしだ。俺はそんなことで悶々としたりはしない。

 そうじゃないのだ。俺が言いたいのは。

「どうしてガイルがいなくて、見知らぬ女の子がここにいるんだ?」

 丸机を挟んだ正面には茶色のショートカットの女の子が座っている。休日だと言うのに制服に身を包んでいる姿はなかなかに不思議だ。
 これが不思議ちゃんというやつなのだろうか。

「見知らぬって失礼だな! 我はヤツギ・エフェクトであるぞ!」

 腕を組んで、ふんっと鼻を鳴らす。
 いや、であるぞと言われても知らないものは知らないのであるぞ!

 俺が困っているのを察したのか、アンナが苦笑しながら俺の肩に触れる。
 顔を耳に近づけて、囁いた。

「えっと、私の友達。ガイルくんが来られないから代わりに呼んだの。それに――レイスくんにとっては丁度いい機会かもです」

 訝しげにアンナの顔を覗き込むと、やけににやにやとしていた。

「どういうことだ?」
「つまり生徒会の一人ってことです」

 ああ、生徒会ね。学園のトップというわけか。せっかくの機会だし挨拶でも――。

「って生徒会!?」
「ちょっとうるさいです!」

 思わず叫んでしまう。
 ハッとなって、すぐに口を覆うがもう時既に遅し。

 エフェクトがくつくつと笑い始めたのだ。
 片足を丸机の上に勢いよく下ろし、ちょこんと座っている俺のことを見下ろす。

「地を司る召喚師であり、生徒会書紀! 我こそがエフェクトである!」

 ――パーンっと、背後に回ったアンナがクラッカーを弾けさせた。

 一応……拍手しておこうかな。
 思い、俺は苦虫を噛んだ顔になりつつも盛大に拍手をした。

 まさか……こんなところで会うことになるとは。
 アンナのやつ、狙ってやったな。

「アンナから聞いておる! お主、我をぶっ倒そうとしているんだってな!」

 やっぱアンナじゃん! 別に良いけれど勝手に言うのは良くないよね!
 じろりとアンナのことを睨むと、えへへと笑い始めた。

 ……可愛いから許す!

「ああ……俺はこの学園のトップを狙っている。だからまあ、つまりだ。あなたを倒そうとすることにはなるだろうな」
「ほう……面白い」

 口角を上げて、彼女は丸机から跳躍した。
 かなりの運動神経の持ち主らしい。

 俺の隣に見事に着地したエフェクトは――何を思ったのか俺に抱きついてきたのだ。

「ちょっ、ちょっと!」

 腕を首に回して、これでもかと接近してくる。
 やめ、やめて! 色々と当たってますから!

「君のような面白い男、好きだよ……。そうだね、決戦はいつ頃にしようか」

 今度は俺の膝に足を絡ませてきた。
 さながら捕食される前のネズミと蛇である。

「ええと……体育祭なんてどうですか? 三日後に行う予定ですし」

 どうも居づらそうにしているアンナが、頬を人差し指でかきながら提案してくる。
 ああ、なるほど。確か体育祭には召喚師同士の決闘も行われるはずだ。

「いいねぇ、よし。それなら我が絶対に当たるようセッティングしておくよ」

 やっと俺を開放し、自分の胸をバンっと叩いた。
 それにしても、早速生徒会の一人と接点が持てるとは。コレに関してはアンナに感謝しないとな。

「アンナ、ありがとうな」

 言うと、アンナは赤面し首を横にブンブンと振った。

「そんなことありましゅん!」
「あるのかよ!」

 行動と言動が釣り合っていないぞ。
 ともあれ、地を司る召喚師エフェクトとの戦いに備えないとな。

 ……でもまあ、絶対に勝つだろうから早寝早起きを心がけるだけでいいか。

「それにしてもだ。君たち、付き合っているのか?」

 考えていると、エフェクトが唐突にそんなことを言い始めた。
 再度赤面するアンナ。必死で首を横に振る俺。

「え! レイスくん! なんで首を横に振るのですか!?」
「縦に振ってほしかったのか!?」

 言うと、今度は頭から湯気がでてきた。
 その光景を見ながら、エフェクトはガハハと男らしく笑う。

「いいなあ! お前ら初々しくて!」

 あなたと年齢変わりませんからね。なんならあなたの方こそ、こう、乙女らしく振る舞ったらどうでしょう?

「いやー! 君たちを見ているとお菓子とジュースがすすむよ!」

 あたかもお酒を飲んでいるオッサンのように言うエフェクト。
 おいおい。実は中身女の子じゃなくて中年のオッサンじゃないのか?

 俺の女の子の概念が音を立てて崩れていった、そんな休日である。
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