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幼馴染とひとつ屋根の下
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「それでは、ご案内いたします」
「よろしくおねがいします」
顧問がコロシアムの出口を指差して、淡々と進んでいく。
俺が倒したアレンはと言うと、警備員たちに取り囲まれ、タンカに乗せられてどこかへ運ばれていった。
彼はきっと治療後、学園から追放されるのだろう。
少しだけ悪い気がする。
唐突に現れたやつに自分の席を奪われるのだ。
決して良い気はしないだろう。
コロシアムの門をくぐると、眩しい朝日が俺の目を刺激した。
ああ、俺本当に勝ったんだな。
改めて実感した。
「あの! その方の案内、私がしてもよろしいでしょうか!」
タッタッタッと、背後から足音が聞こえる。ハツラツとした少女の声音だった。
顧みると、そこには白銀の髪と長い耳を持ったエルフの女の子がいた。
身長から鑑みるに、俺と同い年か一つ年下くらいだろうか。
「そうですね。私も仕事がありますし、そうしていただけると助かります。それではレイスくん。アンナさんとこの学園を周ってください」
「分かりました」
俺は顧問に一礼し、アンナの方へ振り返った。
それにしても……アンナだと?
妙に聞き覚えのある名前だな。昔、彼女のような名前の少女と遊んでいた記憶がある。
だがあんな髪色をしていたっけな。
「あの! 改めましてアンナ・リレイです! 久しぶりですね!」
「えっと……もしかして俺の幼なじみのアンナか?」
「はい! そうです! 覚えていてくれたのですね!」
やはりそうだったか!
しかし知らなかったな。彼女が貴族であり召喚師を目指していたってことは知っていたが、まさかこの学園に在籍していたとは。
「それにしてもアンナ。お前そんな髪色してたか?」
言うと、アンナは少しもじもじとしながら、
「染めたのですよ。あれですあれ、学園デビューと言うやつです……!」
胸の前でこぶしをぎゅっと握ってにこやかに笑っている。
……学園デビューってやつなのか。はは、まあ確かに気持ちは分からなくもないな。
「いやーでも嬉しいです! まさかあなたと一緒に学園生活を送れる日が来るとは!」
「ああ。俺も嬉しいよ。アンナがいてくれたおかげでぼっちも回避できそうだしな」
俺は正直話し上手とは言えない。だから本当に助かっている。
聞くと、彼女は横に首をぶんぶんと振って否定してくる。
「そんなことありません! だって私の幼なじみですよ! それにあなたは最強なんですから! サイツヨですよ! コミュ力だってサイツヨなはずです!」
「俺にそこまで期待するなよ……」
ともあれ、俺たちは学園内を散策することにした。
やはり召喚師学園のトップということもあってか、設備も新しく、どこを見てもきらびやかであった。
俺みたいな平民上がりが生活していい場所じゃあ、到底ないように思える。
「それで……なんですがね」
寮の前にやってきた時、アンナは申し訳無さそうに口を開いた。
「いきなりだったもので、多分あなたのお部屋が用意できていなくて。だから、その」
「ああ、確かここ全寮制だったな。忘れてたよ。でもそれがどうかしたってのか?」
すぅ、っと息を大きく吸い込むアンナ。
「私としばらくの間相部屋することになるかと……」
「…………」
おいおい嘘だろ。男同士ならまだしも、女の子と相部屋だと!?
何それ。どんなラブコメだよ。
「俺が倒したやつの部屋はどうなんだ。空いているはずだろ」
「いやー、あの子はですね。素行の問題で部屋が用意されていなかったんですよ。つまり野宿していたわけでして」
……なるほど。
だが、ここで断ってしまえば俺も野宿をするはめになってしまうわけだ。
ええいままよ。
俺は幼なじみと一つ屋根の下で暮らすことにするぞっ!
あああ、なんか緊張してきた。
「分かった。それじゃあ、しばらくの間お世話になることにするよ。でも荷物とか置いてきちまったんだけど、取りに行ったりしてもいいのかな」
彼女は少し考えて、
「別に取りに行かなくてもいいと思いますよ。ちゃんと戸締まりしていますよね。ここの学園は生活に必要なものは全部用意してくれているので、その点気にしなくて大丈夫なはずです」
ほう。何かと面倒を見てくれるんだな。
俺は彼女に促されるまま、寮の中へと入る。
彼女の部屋前まできて、少し入るのを躊躇していたら彼女が背中を無理やり押してきた。
「遠慮することないですよ!」
扉を開けた瞬間、鼻孔をくすぐるのは女の子の香り。
うっわ、俺ついに入っちゃったよ。
力は持っているのにコミュ力がないから、こんな体験したことないんだよな。
「とりあえず、今日は同じベッドで寝てもらいますからね」
「ああ……」
もう何も言わん。
「まあ、今日のところは私の部屋でゆっくり休んでください。授業は明日からですので」
「了解だ」
「よろしくおねがいします」
顧問がコロシアムの出口を指差して、淡々と進んでいく。
俺が倒したアレンはと言うと、警備員たちに取り囲まれ、タンカに乗せられてどこかへ運ばれていった。
彼はきっと治療後、学園から追放されるのだろう。
少しだけ悪い気がする。
唐突に現れたやつに自分の席を奪われるのだ。
決して良い気はしないだろう。
コロシアムの門をくぐると、眩しい朝日が俺の目を刺激した。
ああ、俺本当に勝ったんだな。
改めて実感した。
「あの! その方の案内、私がしてもよろしいでしょうか!」
タッタッタッと、背後から足音が聞こえる。ハツラツとした少女の声音だった。
顧みると、そこには白銀の髪と長い耳を持ったエルフの女の子がいた。
身長から鑑みるに、俺と同い年か一つ年下くらいだろうか。
「そうですね。私も仕事がありますし、そうしていただけると助かります。それではレイスくん。アンナさんとこの学園を周ってください」
「分かりました」
俺は顧問に一礼し、アンナの方へ振り返った。
それにしても……アンナだと?
妙に聞き覚えのある名前だな。昔、彼女のような名前の少女と遊んでいた記憶がある。
だがあんな髪色をしていたっけな。
「あの! 改めましてアンナ・リレイです! 久しぶりですね!」
「えっと……もしかして俺の幼なじみのアンナか?」
「はい! そうです! 覚えていてくれたのですね!」
やはりそうだったか!
しかし知らなかったな。彼女が貴族であり召喚師を目指していたってことは知っていたが、まさかこの学園に在籍していたとは。
「それにしてもアンナ。お前そんな髪色してたか?」
言うと、アンナは少しもじもじとしながら、
「染めたのですよ。あれですあれ、学園デビューと言うやつです……!」
胸の前でこぶしをぎゅっと握ってにこやかに笑っている。
……学園デビューってやつなのか。はは、まあ確かに気持ちは分からなくもないな。
「いやーでも嬉しいです! まさかあなたと一緒に学園生活を送れる日が来るとは!」
「ああ。俺も嬉しいよ。アンナがいてくれたおかげでぼっちも回避できそうだしな」
俺は正直話し上手とは言えない。だから本当に助かっている。
聞くと、彼女は横に首をぶんぶんと振って否定してくる。
「そんなことありません! だって私の幼なじみですよ! それにあなたは最強なんですから! サイツヨですよ! コミュ力だってサイツヨなはずです!」
「俺にそこまで期待するなよ……」
ともあれ、俺たちは学園内を散策することにした。
やはり召喚師学園のトップということもあってか、設備も新しく、どこを見てもきらびやかであった。
俺みたいな平民上がりが生活していい場所じゃあ、到底ないように思える。
「それで……なんですがね」
寮の前にやってきた時、アンナは申し訳無さそうに口を開いた。
「いきなりだったもので、多分あなたのお部屋が用意できていなくて。だから、その」
「ああ、確かここ全寮制だったな。忘れてたよ。でもそれがどうかしたってのか?」
すぅ、っと息を大きく吸い込むアンナ。
「私としばらくの間相部屋することになるかと……」
「…………」
おいおい嘘だろ。男同士ならまだしも、女の子と相部屋だと!?
何それ。どんなラブコメだよ。
「俺が倒したやつの部屋はどうなんだ。空いているはずだろ」
「いやー、あの子はですね。素行の問題で部屋が用意されていなかったんですよ。つまり野宿していたわけでして」
……なるほど。
だが、ここで断ってしまえば俺も野宿をするはめになってしまうわけだ。
ええいままよ。
俺は幼なじみと一つ屋根の下で暮らすことにするぞっ!
あああ、なんか緊張してきた。
「分かった。それじゃあ、しばらくの間お世話になることにするよ。でも荷物とか置いてきちまったんだけど、取りに行ったりしてもいいのかな」
彼女は少し考えて、
「別に取りに行かなくてもいいと思いますよ。ちゃんと戸締まりしていますよね。ここの学園は生活に必要なものは全部用意してくれているので、その点気にしなくて大丈夫なはずです」
ほう。何かと面倒を見てくれるんだな。
俺は彼女に促されるまま、寮の中へと入る。
彼女の部屋前まできて、少し入るのを躊躇していたら彼女が背中を無理やり押してきた。
「遠慮することないですよ!」
扉を開けた瞬間、鼻孔をくすぐるのは女の子の香り。
うっわ、俺ついに入っちゃったよ。
力は持っているのにコミュ力がないから、こんな体験したことないんだよな。
「とりあえず、今日は同じベッドで寝てもらいますからね」
「ああ……」
もう何も言わん。
「まあ、今日のところは私の部屋でゆっくり休んでください。授業は明日からですので」
「了解だ」
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