召喚師学園の落ちこぼれ、追放されたので隠していた力を解放して更に上の学園で無双する。今更戻れだって?ふざけるな。俺はここで最強に君臨するんだ

夜分長文

文字の大きさ
上 下
3 / 10

幼馴染とひとつ屋根の下

しおりを挟む
「それでは、ご案内いたします」
「よろしくおねがいします」

 顧問がコロシアムの出口を指差して、淡々と進んでいく。
 俺が倒したアレンはと言うと、警備員たちに取り囲まれ、タンカに乗せられてどこかへ運ばれていった。
 彼はきっと治療後、学園から追放されるのだろう。

 少しだけ悪い気がする。
 唐突に現れたやつに自分の席を奪われるのだ。

 決して良い気はしないだろう。

 コロシアムの門をくぐると、眩しい朝日が俺の目を刺激した。
 ああ、俺本当に勝ったんだな。

 改めて実感した。

「あの! その方の案内、私がしてもよろしいでしょうか!」

 タッタッタッと、背後から足音が聞こえる。ハツラツとした少女の声音だった。

 顧みると、そこには白銀の髪と長い耳を持ったエルフの女の子がいた。
 身長から鑑みるに、俺と同い年か一つ年下くらいだろうか。

「そうですね。私も仕事がありますし、そうしていただけると助かります。それではレイスくん。アンナさんとこの学園を周ってください」
「分かりました」

 俺は顧問に一礼し、アンナの方へ振り返った。
 それにしても……アンナだと?

 妙に聞き覚えのある名前だな。昔、彼女のような名前の少女と遊んでいた記憶がある。
 だがあんな髪色をしていたっけな。

「あの! 改めましてアンナ・リレイです! 久しぶりですね!」
「えっと……もしかして俺の幼なじみのアンナか?」
「はい! そうです! 覚えていてくれたのですね!」

 やはりそうだったか!
 しかし知らなかったな。彼女が貴族であり召喚師を目指していたってことは知っていたが、まさかこの学園に在籍していたとは。

「それにしてもアンナ。お前そんな髪色してたか?」

 言うと、アンナは少しもじもじとしながら、

「染めたのですよ。あれですあれ、学園デビューと言うやつです……!」

 胸の前でこぶしをぎゅっと握ってにこやかに笑っている。
 ……学園デビューってやつなのか。はは、まあ確かに気持ちは分からなくもないな。

「いやーでも嬉しいです! まさかあなたと一緒に学園生活を送れる日が来るとは!」
「ああ。俺も嬉しいよ。アンナがいてくれたおかげでぼっちも回避できそうだしな」

 俺は正直話し上手とは言えない。だから本当に助かっている。
 聞くと、彼女は横に首をぶんぶんと振って否定してくる。

「そんなことありません! だって私の幼なじみですよ! それにあなたは最強なんですから! サイツヨですよ! コミュ力だってサイツヨなはずです!」
「俺にそこまで期待するなよ……」

 ともあれ、俺たちは学園内を散策することにした。
 やはり召喚師学園のトップということもあってか、設備も新しく、どこを見てもきらびやかであった。

 俺みたいな平民上がりが生活していい場所じゃあ、到底ないように思える。

「それで……なんですがね」

 寮の前にやってきた時、アンナは申し訳無さそうに口を開いた。

「いきなりだったもので、多分あなたのお部屋が用意できていなくて。だから、その」
「ああ、確かここ全寮制だったな。忘れてたよ。でもそれがどうかしたってのか?」

 すぅ、っと息を大きく吸い込むアンナ。

「私としばらくの間相部屋することになるかと……」
「…………」

 おいおい嘘だろ。男同士ならまだしも、女の子と相部屋だと!?
 何それ。どんなラブコメだよ。

「俺が倒したやつの部屋はどうなんだ。空いているはずだろ」
「いやー、あの子はですね。素行の問題で部屋が用意されていなかったんですよ。つまり野宿していたわけでして」

 ……なるほど。
 だが、ここで断ってしまえば俺も野宿をするはめになってしまうわけだ。

 ええいままよ。

 俺は幼なじみと一つ屋根の下で暮らすことにするぞっ!
 あああ、なんか緊張してきた。

「分かった。それじゃあ、しばらくの間お世話になることにするよ。でも荷物とか置いてきちまったんだけど、取りに行ったりしてもいいのかな」

 彼女は少し考えて、

「別に取りに行かなくてもいいと思いますよ。ちゃんと戸締まりしていますよね。ここの学園は生活に必要なものは全部用意してくれているので、その点気にしなくて大丈夫なはずです」

 ほう。何かと面倒を見てくれるんだな。

 俺は彼女に促されるまま、寮の中へと入る。
 彼女の部屋前まできて、少し入るのを躊躇していたら彼女が背中を無理やり押してきた。

「遠慮することないですよ!」

 扉を開けた瞬間、鼻孔をくすぐるのは女の子の香り。
 うっわ、俺ついに入っちゃったよ。

 力は持っているのにコミュ力がないから、こんな体験したことないんだよな。

「とりあえず、今日は同じベッドで寝てもらいますからね」
「ああ……」

 もう何も言わん。

「まあ、今日のところは私の部屋でゆっくり休んでください。授業は明日からですので」
「了解だ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

死の執行人〜無力な少年、最強の死の能力を手に入れ死神界で無双する〜

ともも
ファンタジー
舞台は日本。 だが、この世界には死にまつわる異能が存在する。 本来なら入る事もなかった死の世界に、 主人公死崎伯人は最強の異能を持って迷い込んでいく。 死は人に何をもたらすのか......。 死はきっといつもすぐそばにいる。 死×異能の新感覚ファンタジー!!!

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

処理中です...