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追放処分
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俺はこの学園のクラスカースト最下位に属する、底辺召喚師である。
いわゆる落ちこぼれだ。
いくら召喚獣を召喚しようたって、 魔術書からは拒絶され、魔法陣のみを使用したって謎の爆発により失敗してしまう。
そう考えてみると、俺はそもそも召喚師ですらないのかもしれない。
「うちの学園には君のような落ちこぼれは必要ないのですよ。分かりますよね?」
そしてついに――担任教師から退学処分を言い渡されてしまった。
下級モンスターすら従えないのだ。そう言われて当然のことだろう。
「あの……お願いします! 雑用なり何でもするので、どうか、どうか……!」
認めてしまえば、俺はまた違う学園へと転学しなければならなくなる。時期が時期なこともあり、本気で探さなければ一年は留年するはめになってしまうから、いささか面倒くさい。
「だめに決まっているでしょう。愚かですね。これだから平民上がりは……」
教師は眉間をつねって大きくため息を吐いた。
……確かに俺は平民上がりだ。
基本、ここガレンスト学園では在校生のほとんどが貴族で構成されている。
いや、まあ召喚師学園となるとどこも貴族様で構成されているのだがな。ともかく俺は異端なのだ。
こんな俺が入学できた理由も異端で、たまたま親が学園長と酒の席で意気投合した結果と言うもの。
普通はありえないことなので、悪い意味でだが学園中が一時期俺の話題でいっぱいだったのを覚えている。
そして俺は召喚魔法が使えない落ちこぼれときた。話題にするのには丁度いい人物だったのだろう。
だが――正直に白状すると俺は召喚魔法が使える。
今まであえて使ってこなかっただけなのだ。
「本当に……俺を追放するのですか?」
「そうですね。あなたのような人間は必要ないですから。あ、それと私が君に対してこんなことを言っていたのは学園長には秘密ですよ。クビにされたくはありませんから」
人差し指を口元に当てたって、可愛くなんかねえぞ中年教師。
ともかく、俺は実際召喚魔法を使うことができる。なんならそれ以外だって余裕で使いこなせる。剣だったり弓だったり。平民だと言うのに、だ。
しかし俺は目立ちたくなかった。理由は単純で面倒くさいから。それだけである。
いくら強力な魔力を保持していたところで、結局は平民。こんな腐りきった学園でいくら見せつけたって評価なんてされないはずだ。
「それでは、早く出ていってください。あなたにこうやって敬語を使うだけでも虫唾が走るのですから。これ以上迷惑はかけないでください。ずる賢いあなたなら分かりますよね?」
「……はい」
担任教師は裏口から入学したような俺に対して嫌悪感を抱いている。だから彼は俺に対して『ずる賢い』と評価したのだ。
でもまあ、『ずる賢い』ってのはあながち間違ってはいない表現だと思う。
こうやって自身の能力を隠して暮らしてきたのだから。
「それでは……失礼しました。今までお世話になりました」
頭を深々と下げる。これでこの担任と会うのも最後なのだ。
散々な目に合わされてきたが礼くらいはしようと思う。
頭を上げ、踵を返す。そして俺は夕暮れに染まった教室を後にする。
廊下を闊歩しながら考える。
もう少し抵抗とやらをしてみても良かったのだろうか。不自然ではなかっただろうか。
あまり演技とやらは得意ではないからいささか不安だ。
ともあれ、退学は退学だ。
「……次の学園では常に本気を出して挑むとするか」
今回のことで俺は大きなことを一つ学んだ。
適当に暮らしていたら普通に退学になるということだ。
目立ちたくないからと魔術を一切使わなかったのだから、当然と言われれば当然なのだろうが。
ため息を吐きながら、俺はステータスを確認する。
――――――――――――――
氏名 レイス・アレキサンダー
種族 人間
◆
物攻 9999
物防 9999
魔攻 9999
魔防 9999
速度 9999
運 9999
――――――――――――――
「変わりはないな」
全てカンストまでは行かないが、圧倒的な戦闘能力を保持している。
しばらく戦っていないから、多少なりとも誤差はあるだろうが、所詮誤差止まりだろう。
さて、今日のところは家にでも帰って、明日の早朝にでも別の学園の入学試験でも受けに行こうかな。
本来は毎年春に入学希望者を募っている学園がほとんどらしいのだが、一つだけ常時受け付けているところがある。
アルストレン召喚師学園。
在校生のほとんどがA級以上の召喚獣を呼び出すことがが可能で、世間からはエリート集団と呼ばれている。
そこは在校生と戦い、勝利を収めることができれば入学可能と言った場所だ。
まあ、もちろん負けたやつは退学になるのだが。
「久しぶりに本気で戦えそうだな」
俺は平然を装いつつも、内心では心が踊りまくっていた。
平民上がりということもあってか、俺は喧嘩というものが大好きらしい。
いわゆる落ちこぼれだ。
いくら召喚獣を召喚しようたって、 魔術書からは拒絶され、魔法陣のみを使用したって謎の爆発により失敗してしまう。
そう考えてみると、俺はそもそも召喚師ですらないのかもしれない。
「うちの学園には君のような落ちこぼれは必要ないのですよ。分かりますよね?」
そしてついに――担任教師から退学処分を言い渡されてしまった。
下級モンスターすら従えないのだ。そう言われて当然のことだろう。
「あの……お願いします! 雑用なり何でもするので、どうか、どうか……!」
認めてしまえば、俺はまた違う学園へと転学しなければならなくなる。時期が時期なこともあり、本気で探さなければ一年は留年するはめになってしまうから、いささか面倒くさい。
「だめに決まっているでしょう。愚かですね。これだから平民上がりは……」
教師は眉間をつねって大きくため息を吐いた。
……確かに俺は平民上がりだ。
基本、ここガレンスト学園では在校生のほとんどが貴族で構成されている。
いや、まあ召喚師学園となるとどこも貴族様で構成されているのだがな。ともかく俺は異端なのだ。
こんな俺が入学できた理由も異端で、たまたま親が学園長と酒の席で意気投合した結果と言うもの。
普通はありえないことなので、悪い意味でだが学園中が一時期俺の話題でいっぱいだったのを覚えている。
そして俺は召喚魔法が使えない落ちこぼれときた。話題にするのには丁度いい人物だったのだろう。
だが――正直に白状すると俺は召喚魔法が使える。
今まであえて使ってこなかっただけなのだ。
「本当に……俺を追放するのですか?」
「そうですね。あなたのような人間は必要ないですから。あ、それと私が君に対してこんなことを言っていたのは学園長には秘密ですよ。クビにされたくはありませんから」
人差し指を口元に当てたって、可愛くなんかねえぞ中年教師。
ともかく、俺は実際召喚魔法を使うことができる。なんならそれ以外だって余裕で使いこなせる。剣だったり弓だったり。平民だと言うのに、だ。
しかし俺は目立ちたくなかった。理由は単純で面倒くさいから。それだけである。
いくら強力な魔力を保持していたところで、結局は平民。こんな腐りきった学園でいくら見せつけたって評価なんてされないはずだ。
「それでは、早く出ていってください。あなたにこうやって敬語を使うだけでも虫唾が走るのですから。これ以上迷惑はかけないでください。ずる賢いあなたなら分かりますよね?」
「……はい」
担任教師は裏口から入学したような俺に対して嫌悪感を抱いている。だから彼は俺に対して『ずる賢い』と評価したのだ。
でもまあ、『ずる賢い』ってのはあながち間違ってはいない表現だと思う。
こうやって自身の能力を隠して暮らしてきたのだから。
「それでは……失礼しました。今までお世話になりました」
頭を深々と下げる。これでこの担任と会うのも最後なのだ。
散々な目に合わされてきたが礼くらいはしようと思う。
頭を上げ、踵を返す。そして俺は夕暮れに染まった教室を後にする。
廊下を闊歩しながら考える。
もう少し抵抗とやらをしてみても良かったのだろうか。不自然ではなかっただろうか。
あまり演技とやらは得意ではないからいささか不安だ。
ともあれ、退学は退学だ。
「……次の学園では常に本気を出して挑むとするか」
今回のことで俺は大きなことを一つ学んだ。
適当に暮らしていたら普通に退学になるということだ。
目立ちたくないからと魔術を一切使わなかったのだから、当然と言われれば当然なのだろうが。
ため息を吐きながら、俺はステータスを確認する。
――――――――――――――
氏名 レイス・アレキサンダー
種族 人間
◆
物攻 9999
物防 9999
魔攻 9999
魔防 9999
速度 9999
運 9999
――――――――――――――
「変わりはないな」
全てカンストまでは行かないが、圧倒的な戦闘能力を保持している。
しばらく戦っていないから、多少なりとも誤差はあるだろうが、所詮誤差止まりだろう。
さて、今日のところは家にでも帰って、明日の早朝にでも別の学園の入学試験でも受けに行こうかな。
本来は毎年春に入学希望者を募っている学園がほとんどらしいのだが、一つだけ常時受け付けているところがある。
アルストレン召喚師学園。
在校生のほとんどがA級以上の召喚獣を呼び出すことがが可能で、世間からはエリート集団と呼ばれている。
そこは在校生と戦い、勝利を収めることができれば入学可能と言った場所だ。
まあ、もちろん負けたやつは退学になるのだが。
「久しぶりに本気で戦えそうだな」
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