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34. 食事会でも色々考えてしまいます
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オストワル辺境伯邸のホールで、会食は始まった。
マナーなんて知らない私はどう振る舞っていいのか分からなかったが……
「アン。肉にするか?それとも、魚か?」
ジョーが始終私に付いて回り、欲しいものを取ってくれる。まるでメイドのようにさせてジョーに申し訳ないが、ジョーのおかげで救われた。ジョーもきっと、私の気持ちを察してくれているのだろう。そして、時折物思いに耽ったような悲しい顔をするのだった。
食べ物を取り終わると、
「アン。ヘンリー様と食事をするか?」
ジョーが聞く。そして私はふとお兄様を見た。
人懐っこくて明るいお兄様の周りにはたくさん人がいて、初対面であろうセドリック様とも打ち解けてしまっているようだった。嬉しくも思ったが、私の出る幕ではないのだろう。
「ううん、私はここでジョーと食べるよ」
なんて言いながらも、ジョーは本心ではお兄様のほうに行きたいのではないのかと思ってしまった。だから、おずおずと付け足した。
「ジョーも……みんなのほうに行ってもいいよ」
だけど、ジョーは顔をくしゃっとさせて笑い、私の髪をそっと撫でる。
「俺はここがいいんだ。アンの隣にいたい」
そういうの、反則だ。私はますますジョーから離れられなくなってしまうから。
でも……ジョーからは離れないといけないのかもしれない。ヘンリーお兄様が、故郷のポーレット領で一緒に暮らそうと言ってくれたから。もちろんジョーが引き止めれば私はここに残るが……ジョーは何も言わない。所詮、そこまでの女なのかもしれない。
「アンとこうやって食事をすると、二人で旅をしたことを思い出すな」
ジョーはぽつりと告げる。
「アンがいたから、毎日が楽しかった」
「私も楽しかったよ。
それに、ジョーが石を投げて鳥を撃ち落とすから、なんて生存能力の高い人なんだろうと思った」
「アンがいるから頑張ったんだ」
ジョーは私の前にあるステーキを、すっと取りやすい大きさに切ってくれる。あの冒険の日々だってそうだった。ジョーはこうやって密かに私をお姫様扱いしてくれる。
そして、フォークに肉を刺して私の口の前に差し出す。
私はそれが見えていないふりをしながら、ジョーに告げる。
「すごいよね、ジョーって。
こうやって貴族の生活にも慣れているのに、山に一人で放り出されても生きていける。剣の腕だって、国内一番かもしれない」
こんなジョーと私が釣り合うはずがないだろう。なぜかジョーは私を好いていてくれるが。
ジョーは私の前に肉を差し出したまま、甘い声で話しかける。
「それでも、俺は不安で不安で仕方がないんだ」
「……え?」
悲しくて、泣いてしまうのではないかという顔で私を見るジョー。その顔を見るのが辛くて、私は差し出された肉をぱくりと口に入れていた。
「おいしい?」
頬を緩ませながらも、切なげに聞くジョーに、
「美味しい」
私は答えた。
「でも、山でジョーが私に焼いてくれたウサギや鳥の肉のほうが、もっと美味しかった」
「そうだな……」
私たちは身を寄せ合って、楽しそうに騒いでいるお兄様たちを見ていた。お兄様も大切だが……私はジョーといたい。ジョーとこのオストワルでのんびり暮らしたいのだ。
マナーなんて知らない私はどう振る舞っていいのか分からなかったが……
「アン。肉にするか?それとも、魚か?」
ジョーが始終私に付いて回り、欲しいものを取ってくれる。まるでメイドのようにさせてジョーに申し訳ないが、ジョーのおかげで救われた。ジョーもきっと、私の気持ちを察してくれているのだろう。そして、時折物思いに耽ったような悲しい顔をするのだった。
食べ物を取り終わると、
「アン。ヘンリー様と食事をするか?」
ジョーが聞く。そして私はふとお兄様を見た。
人懐っこくて明るいお兄様の周りにはたくさん人がいて、初対面であろうセドリック様とも打ち解けてしまっているようだった。嬉しくも思ったが、私の出る幕ではないのだろう。
「ううん、私はここでジョーと食べるよ」
なんて言いながらも、ジョーは本心ではお兄様のほうに行きたいのではないのかと思ってしまった。だから、おずおずと付け足した。
「ジョーも……みんなのほうに行ってもいいよ」
だけど、ジョーは顔をくしゃっとさせて笑い、私の髪をそっと撫でる。
「俺はここがいいんだ。アンの隣にいたい」
そういうの、反則だ。私はますますジョーから離れられなくなってしまうから。
でも……ジョーからは離れないといけないのかもしれない。ヘンリーお兄様が、故郷のポーレット領で一緒に暮らそうと言ってくれたから。もちろんジョーが引き止めれば私はここに残るが……ジョーは何も言わない。所詮、そこまでの女なのかもしれない。
「アンとこうやって食事をすると、二人で旅をしたことを思い出すな」
ジョーはぽつりと告げる。
「アンがいたから、毎日が楽しかった」
「私も楽しかったよ。
それに、ジョーが石を投げて鳥を撃ち落とすから、なんて生存能力の高い人なんだろうと思った」
「アンがいるから頑張ったんだ」
ジョーは私の前にあるステーキを、すっと取りやすい大きさに切ってくれる。あの冒険の日々だってそうだった。ジョーはこうやって密かに私をお姫様扱いしてくれる。
そして、フォークに肉を刺して私の口の前に差し出す。
私はそれが見えていないふりをしながら、ジョーに告げる。
「すごいよね、ジョーって。
こうやって貴族の生活にも慣れているのに、山に一人で放り出されても生きていける。剣の腕だって、国内一番かもしれない」
こんなジョーと私が釣り合うはずがないだろう。なぜかジョーは私を好いていてくれるが。
ジョーは私の前に肉を差し出したまま、甘い声で話しかける。
「それでも、俺は不安で不安で仕方がないんだ」
「……え?」
悲しくて、泣いてしまうのではないかという顔で私を見るジョー。その顔を見るのが辛くて、私は差し出された肉をぱくりと口に入れていた。
「おいしい?」
頬を緩ませながらも、切なげに聞くジョーに、
「美味しい」
私は答えた。
「でも、山でジョーが私に焼いてくれたウサギや鳥の肉のほうが、もっと美味しかった」
「そうだな……」
私たちは身を寄せ合って、楽しそうに騒いでいるお兄様たちを見ていた。お兄様も大切だが……私はジョーといたい。ジョーとこのオストワルでのんびり暮らしたいのだ。
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