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33. 貴族の食事会に呼ばれました
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一緒にポーレット侯爵領に帰ろうって言われても……どうすればいいの?
思い浮かぶのは、ジョーの笑顔。
結局、お兄様には何も返事が出来なかった。このままオストワル辺境伯領でジョーと暮らすと思っていたのに、思わぬタイミングで家族の登場だ。
ずっと孤独で生きてきた私にとって、ヘンリーお兄様は初めての家族だ。家族という当たり前のことに憧れがあったのも事実、それがようやく叶うのだ。
「おっ、お兄様!その件は考えておきます!」
慌てて告げると、お兄様は驚いた顔をする。
「えっ、なんで?」
もちろん、お兄様と一緒に行きたい。でも、ジョーといたい。私の心は真っ二つに割れてしまいそうだ。
そして……
「アン。お願いがあるんだけど……」
お兄様は私に告げた。
「僕、権力争いのなかで足を負傷してしまって、足が上手に動かせないんだ。
アンの治療の腕はすごいって、この街のみんなが言っていた。僕の足を治療してくれない?」
こういうわけで、お兄様はしばらくこの地にとどまり、私はお兄様の足を治療することになったのだ。
お兄様はポーレット侯爵領の領主。さすがに侯爵を治療院に泊めてはいけないだろうということになり、お兄様と側近はオストワル辺境伯邸に泊まることとなった。私はそこに治療のために通うのだ。
そしてお兄様が来られた日の晩、オストワル辺境伯邸では盛大な宴が行われることになった。もちろん私も参加だ。貴族の社交の場は初めてで、どう振る舞っていいのかも分からない私。一応侯爵の妹なのだが……
だが、ジョーが私のためにドレスを用意してくれて、グランヴォル家の側近に頼んで支度までしてもらった。ジョーにはお世話になりっきりだ。
ピンク色のドレスに着替えた私は、目の前の鏡を見て驚いた。そこに映るのは、見慣れたうす汚れた薬師の私ではなく、まるでお姫様だ。
「アン様、とてもお綺麗です」
側近が頬を染めて言う。お世辞だとは分かるが、その言葉が素直に嬉しかった。これで、少しはジョーに近付けるかな……なんて思ったが……
「アン!」
迎えに来たジョーは、くらくらするほどかっこいい。黒いスーツを着て前髪を少し分けたジョーは、いつもよりもさらに大人っぽくてフェロモンさえ感じる。かっこ良すぎてジョーを見ることが出来ず、真っ赤になって俯く私を見て、
「……可愛い、アン」
ジョーは甘い声で言う。そういうの、反則だ。
ジョーは私の前に跪き、手をそっと握る。真っ赤な顔の私は、口元をきゅっと結んで必死に感情を押し殺そうている。だがきっと、きゅんきゅんがだだ漏れだ。
「行きますよ、お嬢様」
侯爵家の人間だったが、今までお嬢様扱いなんて皆無だった。だから、こうやって甘い甘いお嬢様扱いをされると、ぼっと火がつくほど恥ずかしい。
ジョーは私の手を握ったまま、そっと口付けをした。それでますます紅くなってしまう私は、ジョーに完全に弄ばれているのだろう。
思い浮かぶのは、ジョーの笑顔。
結局、お兄様には何も返事が出来なかった。このままオストワル辺境伯領でジョーと暮らすと思っていたのに、思わぬタイミングで家族の登場だ。
ずっと孤独で生きてきた私にとって、ヘンリーお兄様は初めての家族だ。家族という当たり前のことに憧れがあったのも事実、それがようやく叶うのだ。
「おっ、お兄様!その件は考えておきます!」
慌てて告げると、お兄様は驚いた顔をする。
「えっ、なんで?」
もちろん、お兄様と一緒に行きたい。でも、ジョーといたい。私の心は真っ二つに割れてしまいそうだ。
そして……
「アン。お願いがあるんだけど……」
お兄様は私に告げた。
「僕、権力争いのなかで足を負傷してしまって、足が上手に動かせないんだ。
アンの治療の腕はすごいって、この街のみんなが言っていた。僕の足を治療してくれない?」
こういうわけで、お兄様はしばらくこの地にとどまり、私はお兄様の足を治療することになったのだ。
お兄様はポーレット侯爵領の領主。さすがに侯爵を治療院に泊めてはいけないだろうということになり、お兄様と側近はオストワル辺境伯邸に泊まることとなった。私はそこに治療のために通うのだ。
そしてお兄様が来られた日の晩、オストワル辺境伯邸では盛大な宴が行われることになった。もちろん私も参加だ。貴族の社交の場は初めてで、どう振る舞っていいのかも分からない私。一応侯爵の妹なのだが……
だが、ジョーが私のためにドレスを用意してくれて、グランヴォル家の側近に頼んで支度までしてもらった。ジョーにはお世話になりっきりだ。
ピンク色のドレスに着替えた私は、目の前の鏡を見て驚いた。そこに映るのは、見慣れたうす汚れた薬師の私ではなく、まるでお姫様だ。
「アン様、とてもお綺麗です」
側近が頬を染めて言う。お世辞だとは分かるが、その言葉が素直に嬉しかった。これで、少しはジョーに近付けるかな……なんて思ったが……
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迎えに来たジョーは、くらくらするほどかっこいい。黒いスーツを着て前髪を少し分けたジョーは、いつもよりもさらに大人っぽくてフェロモンさえ感じる。かっこ良すぎてジョーを見ることが出来ず、真っ赤になって俯く私を見て、
「……可愛い、アン」
ジョーは甘い声で言う。そういうの、反則だ。
ジョーは私の前に跪き、手をそっと握る。真っ赤な顔の私は、口元をきゅっと結んで必死に感情を押し殺そうている。だがきっと、きゅんきゅんがだだ漏れだ。
「行きますよ、お嬢様」
侯爵家の人間だったが、今までお嬢様扱いなんて皆無だった。だから、こうやって甘い甘いお嬢様扱いをされると、ぼっと火がつくほど恥ずかしい。
ジョーは私の手を握ったまま、そっと口付けをした。それでますます紅くなってしまう私は、ジョーに完全に弄ばれているのだろう。
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