追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

Mee.

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24. 話す決意をしました

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 掃除道具箱ががちゃりと開かれる。眩しい光が一斉に差し込み、その先には眩しい笑顔で手を伸ばすジョー。その腕の中に飛び込めたら、どれだけ嬉しいかと思う。
 私はジョーが手を伸ばしているのに気付かないふりをして、彼に聞く。

「どうして、私を庇ってくれるの? 
 ……もしかしたら、私は悪人かもしれないのに」

 ジョーは手を伸ばしたまま、静かに告げた。

「アンを渡したくないから」

「……え?」

「アンは俺を助けてくれた。この街の人々も助けてくれた。
 悪人であるはずがない」

 ジョーの言葉に、目の先まで涙が出かかった。だけど、必死で涙をこらえる。

 ジョーに嫌われるのが怖くて、過去の話が出来なかった。だけど、ジョーにはこれ以上黙っていてはいけないと思う。こんなにも迷惑をかけているのに、無条件で私を守ってくれているのだから。それでジョーが離れてしまうなら……悔しいけど、それまでの運命なのだろう。

「あのね、ジョー……私の話、聞いてくれる?」

 その事実を告げようとすると、ドキドキする。もちろん、好きとかそういったドキドキではない。
 ジョーに嫌われないかとか、この地を追放されるかとか、そういった不吉なドキドキだ。

 ジョーは静かに告げる。

「話して欲しい。でも、それがアンの負担になるのなら、話さなくていい」

 ここまで追っ手が来ているのに、ジョーはどうしてこんなに私のことばかり考えてくれているのだろうか。こんなジョーの善意を、裏切るわけにはいかない。

「俺のは今日、アンの紹介された男との待ち合わせ場所に行っていた。
 アンに気がある奴がどんな奴なのか気になったし、ひと泡吹かせてやろうと思って」

 そ……そうなんだ。あそこにジョーがいたのは、偶然ではなかったのだ。

「知ってる」

 思わず答えると、

「それじゃあ、俺とあの男たちの話も聞いていたのか」

 ジョーは呟く。そして私は頷いていた。

「もちろん俺はアンを渡したくなかったから知らないふりをしたが、あの男たちも怪しさが半端なかった。
 とある男の私兵と言うが、その男の名前は絶対に言わない。兜で顔も隠している。鎧には、紋章も何もない」

「確かに……」

「俺はアンが狙われているのではないかと思っている」

 ジョーの真剣な顔を見ると、今さらながらに怖くなってくる。冤罪で王宮を追放されて、この辺境の地まで追い詰めてくるなんて……

「俺は、アンの助けになりたい。
 命の恩人だからではなく、一人の騎士として。……一人の男として」

 いつもは騎士団長だとか強いだとか言うと、言って欲しく無さそうにする。だけどこんな時だけ、騎士を全面に押してくる。調子がいいのだから。

「アンちゃん。……私も、出来ることがあったらするわ」

 ソフィアさんも心配そうに言ってくれる。ジョーだけでなく、ソフィアさんにも迷惑をかけていることに気付く。
 でも、こうしてみんな力になってくれると言ってくれる。私の味方をしてくれる。私はこんなにも優しい人たちに囲まれて、本当に幸せだ。

 私は二人を見て、深呼吸した。そして、今までの出来事を話し始めた。二人とも神妙な面持ちで、私の話を聞いてくれた。

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