19 / 58
19. 相変わらずお好きなようです
しおりを挟む
その声を聞いた瞬間、びくっと飛び上がってしまった。今日はどんなサプライズが待っているのだろうか。
ジョーの声を聞くなり、
「じゃあ、私はそろそろおいとましますね」
ケーキ屋の奥さんは帰ってしまうし、
「アンちゃん。私、消毒薬作ってくるね!」
ソフィアさんは奥へと引っ込もうとする。
そういう気遣いはいらないし……ジョーと二人きりになると、またときめいてしまう。私は確実に、ジョーへと引き込まれているのだ。
だけどジョーは、
「ソフィアさん」
意外にも、消えてしまいそうなソフィアさんに声をかけたのだ。その、手に持っている小包をぐっと前に出しながら。
「アンとケーキを食べようと買ってきた。もちろん、あなたの分も。
もしよければ、少し休憩とかどうか?」
「じょ、ジョセフ様……どうもありがとうございます……」
ソフィアさんはびっくりして苦笑いなんてしている。それに、ケーキってまさか……
「どうやら、俺はアンと結婚する運命のようだ」
そう言ってジョーが包みを開けると、さきほどケーキ屋の奥さんからいただいたものと全く同じケーキが、三つ入っている。……三つなのだ。ジョーも居座る気満々なのだ。
「あの……それならちょうど同じものがあって……」
いただいたケーキを指差すと、ジョーは嬉しそうに目を輝かせた。
「そうなのか。君ももうすでに買っていたのか……」
甘い声で嬉しそうに言われ、そっと手に触れられる。そしてお決まりのように、手にチュッと口付けされる。いちいちドキドキしてしまう私は、いつまで経ってもジョーの甘さに慣れない。
実際、ジョーと私が結婚なんて出来るはずもないのに。
こんな甘い態度で接せらると、私もますますはまってしまうから、必死で抵抗する私。
「あっ!私、お皿とフォークを取ってきます!」
ぱたぱたと二階へ食器を取りに上がる私は、真っ赤で少し震えている。叶わぬ恋なのに、思わせぶりな態度はやめて欲しい。私は、どんどんジョーにはまっていくから。
私が二階に上がっている間、ジョーとソフィアさんは話をしていた。ソフィアさんによると、以前のジョーはこんなにも親しげに話をしなかったらしいのだが。
「相変わらず、お好きですね」
「あぁ。何としてもアンは手に入れたいから」
「でも……とても言い辛いのですが……アンちゃんは、ジョセフ様が冗談を言っていらっしゃると勘違いしています」
「それなら、もっとアンに迫らないといけないようだな」
こんな話の内容を、私が知るはずもなかった。こうやって、ジョーの求愛はどんどんエスカレートしていくのだった。
ジョーの声を聞くなり、
「じゃあ、私はそろそろおいとましますね」
ケーキ屋の奥さんは帰ってしまうし、
「アンちゃん。私、消毒薬作ってくるね!」
ソフィアさんは奥へと引っ込もうとする。
そういう気遣いはいらないし……ジョーと二人きりになると、またときめいてしまう。私は確実に、ジョーへと引き込まれているのだ。
だけどジョーは、
「ソフィアさん」
意外にも、消えてしまいそうなソフィアさんに声をかけたのだ。その、手に持っている小包をぐっと前に出しながら。
「アンとケーキを食べようと買ってきた。もちろん、あなたの分も。
もしよければ、少し休憩とかどうか?」
「じょ、ジョセフ様……どうもありがとうございます……」
ソフィアさんはびっくりして苦笑いなんてしている。それに、ケーキってまさか……
「どうやら、俺はアンと結婚する運命のようだ」
そう言ってジョーが包みを開けると、さきほどケーキ屋の奥さんからいただいたものと全く同じケーキが、三つ入っている。……三つなのだ。ジョーも居座る気満々なのだ。
「あの……それならちょうど同じものがあって……」
いただいたケーキを指差すと、ジョーは嬉しそうに目を輝かせた。
「そうなのか。君ももうすでに買っていたのか……」
甘い声で嬉しそうに言われ、そっと手に触れられる。そしてお決まりのように、手にチュッと口付けされる。いちいちドキドキしてしまう私は、いつまで経ってもジョーの甘さに慣れない。
実際、ジョーと私が結婚なんて出来るはずもないのに。
こんな甘い態度で接せらると、私もますますはまってしまうから、必死で抵抗する私。
「あっ!私、お皿とフォークを取ってきます!」
ぱたぱたと二階へ食器を取りに上がる私は、真っ赤で少し震えている。叶わぬ恋なのに、思わせぶりな態度はやめて欲しい。私は、どんどんジョーにはまっていくから。
私が二階に上がっている間、ジョーとソフィアさんは話をしていた。ソフィアさんによると、以前のジョーはこんなにも親しげに話をしなかったらしいのだが。
「相変わらず、お好きですね」
「あぁ。何としてもアンは手に入れたいから」
「でも……とても言い辛いのですが……アンちゃんは、ジョセフ様が冗談を言っていらっしゃると勘違いしています」
「それなら、もっとアンに迫らないといけないようだな」
こんな話の内容を、私が知るはずもなかった。こうやって、ジョーの求愛はどんどんエスカレートしていくのだった。
492
お気に入りに追加
1,601
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる