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15. 彼と私の話題で持ちきりです
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午後の診療も、午後に負けず劣らず大変だった。私は薬草を鍋にかけながら、患者に鍼治療をしたり、薬の飲ませたり、まさしく一人三役のように忙しく駆け回っていた。だが、こうやって忙しくしていたほうが、心が楽だった。何しろ、ジョーのことばかり考えてしまうから。
今日、本当にジョーは私の様子を見に来てくれた。騎士団の仕事だってあるだろうに。そして、周りからまた変な目で見られるだろうに。だけどそこまでして、私に会いに来てくれたことに心を打たれる。
しかも今日のジョー、すごくかっこよかったなぁ。騎士団の隊服、すごく似合っていた。あれではモテるはずだろう。
気を許すとジョーのことばかり考えてしまう私は、確実に心をジョーに奪われ始めている。
「アン様、ありがとうございました!アン様の鍼治療のおかげで、見ての通り手が動くようになりました」
「それは良かったです」
嬉しそうに、手を握ったり開いたりする患者を見て、私まで嬉しくなる。だけどこの患者も二言目には言うのだ。
「ジョセフ様も素晴らしい女性を選びましたね。
最強の騎士様と、最高の薬師様、この国も平和になりますよ」
「そ、そんな、最高だなんて。
……それに、私とジョセフ様は、恋仲ではありません」
必死に弁明しながらも、心がずきんと痛んだ。こうやって私の腕を認められ、どういうわけかジョーの恋人としても認められている。これほどまでに嬉しいことはないのだろうが……
実際、私とジョーはそんな関係でもないし、何しろ身分が違う。期待すればするほど、その結末は悲しいものとなると分かっているのだ。
「またまたぁ。アン様、顔が真っ赤ですよ」
患者に言われてようやく、酷くデレた顔をしていることに気付いた。ジョーのことは、期待しないと言い聞かせているはずなのに。
「私、この近くでケーキ屋をしているんです。手も動くようになったから、またケーキが焼けます。
ジョセフ様とアン様のご結婚を祝って、紅白ケーキでも作りましょう!」
「ちょ、ちょっと待ってください!
け、結婚だなんて!!」
私は大層取り乱して、この患者の前で大慌てをしている。慌て過ぎて、手に持っていた薬草を床全面にばら撒いていた。こんな私を見て、おもしろそうに笑う彼女。私はきっと、この女性に遊ばれているのだろう。
「アン様、今日はありがとうございました。紅白ケーキ、買いにきてくださいね!」
そう言い残して、最後の患者であるこの女性は治療院から出て行った。そんな女性を見送りながら、散らばった薬草をかき集める私。必死でジョーのことを考えないようにしていたのに、いつでもどこでもジョーの話題だ。私の頭の中は、こうしてジョーで埋め尽くされていくのだった。
ジョーのことで取り乱しすぎの私に、さらに追い打ちをかける人物がいた。
「アンちゃん」
ソフィアさんはにこにこと笑いながら、私の散らかした薬草を拾うのを手伝ってくれる。真っ赤な顔の私は、ソフィアさんと目を合わさないように下を向くが……
「診療も終わったし、ゆっくり話しましょう」
ソフィアさんは満面の笑みで告げる。そう、もちろんジョーの話を聞きたいのだろう。
今日、本当にジョーは私の様子を見に来てくれた。騎士団の仕事だってあるだろうに。そして、周りからまた変な目で見られるだろうに。だけどそこまでして、私に会いに来てくれたことに心を打たれる。
しかも今日のジョー、すごくかっこよかったなぁ。騎士団の隊服、すごく似合っていた。あれではモテるはずだろう。
気を許すとジョーのことばかり考えてしまう私は、確実に心をジョーに奪われ始めている。
「アン様、ありがとうございました!アン様の鍼治療のおかげで、見ての通り手が動くようになりました」
「それは良かったです」
嬉しそうに、手を握ったり開いたりする患者を見て、私まで嬉しくなる。だけどこの患者も二言目には言うのだ。
「ジョセフ様も素晴らしい女性を選びましたね。
最強の騎士様と、最高の薬師様、この国も平和になりますよ」
「そ、そんな、最高だなんて。
……それに、私とジョセフ様は、恋仲ではありません」
必死に弁明しながらも、心がずきんと痛んだ。こうやって私の腕を認められ、どういうわけかジョーの恋人としても認められている。これほどまでに嬉しいことはないのだろうが……
実際、私とジョーはそんな関係でもないし、何しろ身分が違う。期待すればするほど、その結末は悲しいものとなると分かっているのだ。
「またまたぁ。アン様、顔が真っ赤ですよ」
患者に言われてようやく、酷くデレた顔をしていることに気付いた。ジョーのことは、期待しないと言い聞かせているはずなのに。
「私、この近くでケーキ屋をしているんです。手も動くようになったから、またケーキが焼けます。
ジョセフ様とアン様のご結婚を祝って、紅白ケーキでも作りましょう!」
「ちょ、ちょっと待ってください!
け、結婚だなんて!!」
私は大層取り乱して、この患者の前で大慌てをしている。慌て過ぎて、手に持っていた薬草を床全面にばら撒いていた。こんな私を見て、おもしろそうに笑う彼女。私はきっと、この女性に遊ばれているのだろう。
「アン様、今日はありがとうございました。紅白ケーキ、買いにきてくださいね!」
そう言い残して、最後の患者であるこの女性は治療院から出て行った。そんな女性を見送りながら、散らばった薬草をかき集める私。必死でジョーのことを考えないようにしていたのに、いつでもどこでもジョーの話題だ。私の頭の中は、こうしてジョーで埋め尽くされていくのだった。
ジョーのことで取り乱しすぎの私に、さらに追い打ちをかける人物がいた。
「アンちゃん」
ソフィアさんはにこにこと笑いながら、私の散らかした薬草を拾うのを手伝ってくれる。真っ赤な顔の私は、ソフィアさんと目を合わさないように下を向くが……
「診療も終わったし、ゆっくり話しましょう」
ソフィアさんは満面の笑みで告げる。そう、もちろんジョーの話を聞きたいのだろう。
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