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4. 起きた男が守ってくれました
しおりを挟む次の日……
私は必死で考えた。ここにとどまるのは危険だと。
あのオオカミは、復讐に来るかもしれない。だけど、男性はまだ気を失ったままだ。十メートルほどの距離を運ぶのにも死ぬ思いだったのに、どこか別のところに移動することは不可能だ。
だが、もちろん男性を置いていくわけにはいかない。せっかく元気になってきたのに、ここに置いておくのは人殺しも同然だ。
彼は相変わらずすやすやと眠っている。もう熱はなく、傷も治りかけている。ただ、意識が戻らないのだ。
「ねぇ……そろそろ起きてよ」
私はぼやいていた。
「あなたが起きたらオオカミを退治してくれる……なわけ、ないよね」
オオカミのことはさておき……私も、そろそろ体力的に限界だ。だが、あの恐怖体験の後で、今夜は眠って過ごすなんてこと出来るはずもなかったのだ。
結局、何も状況は解決することもなく夜を迎えた。
男性はすっかり良くなり、気持ちよさそうに眠っている。悪かった顔色も良くなり、まるで笑っているかの寝顔だ。大人の男なのにこんな無邪気な寝顔を見ると、胸がどきんとするのと同時に笑顔になる。彼が元気になるのが待ち遠しいのだが……
暗くなるにつれ、また恐怖が襲う。睡眠不足で血走った目で、洞窟の外をずっと見ていた。
遠くでオオカミの遠吠えがし、体中を恐怖が走った。
分かっているが、この森にはオオカミがいるのだ。その事実が恐ろしい。私は大量に作った松明を手にした。
その瞬間、すぐ近く、この洞窟のすぐ外でおぞましい遠吠えが響き渡った。心臓を掴まれ、恐怖で凍りついてしまうような遠吠えだった。やはり、オオカミは復讐のためにやってきたのだ。
昨夜は運が良かっただけだ。今夜はどうしよう。
「助けて……」
縋る人もいないのに、呟いた私の声はふるえていた。
「お願い……助けて……」
「大丈夫だ」
近くで声が聞こえた。思わず振り向くと、さっきまで眠っていた男性が身を起こしているではないか。しかも目を開いたこの男性、めちゃくちゃかっこいいのだ。
汚れ破れた服に、土まみれの金色の髪。開かれた濃碧の瞳は、しっかりと私を見つめている。その力強い瞳に、不覚にもどきんとしてしまった。
彼は立ち上がり、松明を手に取る。
「ちょっと!まだ完全じゃないんだから!」
止めようとするも、彼は聞いてくれない。松明を剣のように闇に向けながら、私に笑いかけた。
「助けてくれてありがとう。俺のことはジョーと呼んでくれ」
まるで太陽みたいなその笑顔に、不覚にも見惚れてしまった。
「ジョー……」
彼の名を呼ぶと、嬉しそうに目を細める。そんなに薄汚れているのに、その美しさが眩しいのですが!
どぎまぎする私を前に、ジョーは軽く松明を振りながら洞窟の外へと歩み出る。
その瞬間、オオカミたちが襲いかかったが……彼は目にも止まらぬ速さで瞬殺した。手に持った松明と、力強い足蹴りで。
襲いかかったオオカミたちは宙を飛び、どさっと地面に叩きつけられる。そしてそのままキャンキャン鳴いて逃げていってしまった。
あんなに恐ろしかったオオカミを、ジョーは一瞬でやっつけてしまった。ジョーは一体何者なのだろう。
そして振り返った時のその笑顔、犯罪級だ。眩しすぎてくらくらする……
気付いたら私は倒れ、数日ぶりに眠っていた。体力が限界だったのと、ジョーが起きたことでようやく安堵したのだろう。
患者が元気になった時に、薬師で良かったと思う。だけど今回ほど命を削って看病したことは、いまだかつてなかった。
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