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第7話 我が家へようこそ

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ルシアンが変装魔法を安定して使えるようになったある日、プラムは彼を集落に招待した。黒髪と茶色い瞳に変装したルシアンは、まるでどこにでもいる普通の少年のようだった。
「すごいね、本当に別人みたい!」
プラムはルシアンの変装を見て目を輝かせた。この姿なら、森で一緒に魔法を練習していることを誰にも知られることなく、集落に連れて行ける。ルシアンも満足げに頷いた。
「君のおかげでいいアイデアが浮かんだよ。今日、君の集落や家族に会えるのが楽しみだ」
「でも、森で魔法の練習をしていることは絶対秘密だからね。誰かに知られると面倒なことになりそうだし……」
プラムは念を押すように言った。ルシアンは真剣な顔で頷き返した。
「分かってる。僕の素性を隠すためにも、魔法のことは内緒だね」

プラムの家に到着すると、父親のエイドリアンが庭仕事の手を止めて笑顔で迎えてくれた。
「プラムのお友達か!ようこそ!」
母親のセシリアも玄関先に出てきて、優しい微笑みを浮かべていた。
「君がルシアン君ね。プラムから話は聞いているわ。さあ、どうぞ中へ」
「ありがとうございます!」
ルシアンは緊張しながらも礼儀正しく挨拶をした。エイドリアンはその様子を見て、陽気に笑いながら果樹園へ案内した。
「プラムの友達なら、この果樹園を見てもらわないとな!」
果樹園には青々としたリンゴの木と、まだ試行錯誤中の桃の木が広がっていた。ルシアンはその景色を目にして感嘆の声を上げた。
「すごい……本当にたくさんの木があるんですね!」
「リンゴの栽培は成功しているけど、桃の方はまだまだ課題が多くてな。まあ、それも楽しみの一つさ!」
エイドリアンは誇らしげに話した。プラムも嬉しそうに頷く。
「お父さんとお母さんが本当に頑張ってるの。私も早く手伝いたいんだけど、まだ力不足で……」
プラムが少し恥ずかしそうに言うと、ルシアンは彼女に向かって微笑んだ。
「君の魔法の力で、きっと大きな助けになれるよ。桃の木だって、きっと元気になるさ」
その言葉に、プラムは思わず目を輝かせた。

昼食では、セシリアが作ったリンゴパイと桃ジャムがテーブルに並んだ。ルシアンは一口食べるたびに感嘆の声を上げた。
「これ、本当においしいです!初めて食べる味ですよ!」
「そう言ってもらえると作りがいがあるわ。また遊びに来たら、もっといろいろ作ってあげる」
セシリアがそう言うと、ルシアンは素直に喜びを表情に浮かべた。エイドリアンも陽気に笑いながら追加のおかわりを勧めていた。
プラムは家族がルシアンを歓迎してくれることが嬉しくてたまらなかった。ただ、その一方で、ルシアンと秘密裏に練習をしている魔法のことが頭をよぎり、少しだけ緊張していた。

午後、集落の中を散策する時間になった。プラムはルシアンを案内しながら、村人たちに紹介した。
「この子は森で出会ったお友達。最近、この村に用事があって来るようになったんだって」
村人たちはルシアンを温かく迎え入れ、特に怪しむ様子はなかった。ルシアンも礼儀正しく挨拶を返し、村の人たちとの交流を楽しんだ。
「ここは本当に平和でいいところだね」
ルシアンがそう呟くと、プラムは誇らしげに頷いた。
「でしょ!私の自慢の村なんだ」

その日の帰り道、森に差し掛かったところでルシアンがふと立ち止まり、真剣な顔で言った。
「今日、招待してくれてありがとう。君の家族にも会えたし、君がどんな場所で育っているか知ることができて、本当にうれしかったよ」
プラムも立ち止まり、彼に微笑み返した。
「私もルシアンが来てくれてうれしかった。これからも魔法の練習、一緒に頑張ろうね!」
二人はにこやかに笑い合いながら、森を抜けていった。二人だけの秘密の練習場所へと戻るその背中には、まるで新しい冒険が始まる予感が漂っていた。
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